ミリアの日々 夏は、パイナップル。― 8月17日「パイナップルの日」―
「これ、買おうよ!」
スーパーの果物売り場で、陽菜が立ち止まった。
「ミリア、見て!」
指差した先にあったのは、大きなパイナップル。
「……大きいね」
「夏って感じしない?」
「するかな?」
「するよ!」
陽菜は迷うことなく、パイナップルを手に取った。
8月17日は「パイナップルの日」。
せっかくの夏なのだから、今日はこれにしよう。
二人で食べれば、きっと大丈夫
「でも、これ二人で食べきれる?」
ミリアが聞く。
「大丈夫!」
陽菜は自信満々だった。
その言葉を信じて、二人はパイナップルを買った。
家に帰ると、さっそく包丁を取り出す。
「結構、硬いね」
「ミリア、気をつけて」
「陽菜が買おうって言ったんだから、手伝ってよ」
「応援する!」
「それ、手伝ってないよ」
二人で笑いながら、どうにか切り分けていく。
ようやく完成。
「いただきます!」
一口食べる。
甘い。
そして、少し酸っぱい。
「おいしい!」
陽菜の顔がぱっと明るくなった。
ミリアも笑う。
夏の味がする
冷やしたパイナップルを食べながら、二人は窓の外を眺めていた。
蝉の声。
青い空。
強い日差し。
少しだけ涼しい風。
「ねえ、ミリア」
「なに?」
「夏って、味があると思わない?」
「味?」
「うん。スイカとか、かき氷とか、アイスとか」
陽菜はパイナップルを一切れ持ち上げる。
「これも夏の味」
ミリアは少し考えた。
「……確かに」
夏には、夏にしか食べないものがある。
夏にしか聞かない音がある。
夏にしか見ない景色がある。
だから季節が過ぎてしまうと、少し寂しくなる。
大きなことじゃなくていい
8月も、もう半分を過ぎた。
気がつけば、夏は少しずつ終わりへ向かっている。
海へ行った。
プールで泳いだ。
送り火も見た。
そして今日は、二人でパイナップルを食べている。
振り返ってみれば、特別なことばかりではない。
でも、こういう小さな出来事こそ、後になって思い出すのかもしれない。
「今年の夏、何してた?」
そんなふうに聞かれたとき、
「二人で大きなパイナップル買ったよね」
と笑える。
それだけで、十分な思い出になる。
「まだ残ってるよ」
陽菜がパイナップルの皿を見る。
「……まだこんなにある」
「だから言ったでしょう」
「大丈夫だと思ったんだけどなあ」
「どうするの?」
陽菜は少し考える。
「明日も食べよう」
「明日も?」
「うん。明日も夏だから」
ミリアは笑った。
「それなら、明日も楽しみだね」
窓の外では、蝉がまだ鳴いている。
夏は、もう少しだけ続いている。
夏は、パイナップル。
大きな旅をしなくてもいい。
特別なイベントがなくてもいい。
スーパーで見つけた果物を、
「これ、買ってみよう」
と言って買う。
二人で切って。
一緒に食べて。
「おいしいね」と笑う。
そんな一日が、いつか思い出になる。
8月17日。
パイナップルの日。
甘くて、少し酸っぱくて。
暑い夏にぴったりの味。
陽菜が最後の一切れを手に取った。
「ミリア、これ食べる?」
「陽菜が食べれば?」
「じゃあ、半分こ」
二人で一切れを分ける。
窓から入ってきた風が、カーテンを揺らした。
夏は、まだ終わらない。
今日もまた、小さな思い出がひとつ増えた。
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