ミリアの日々8月3日「ひとさじの甘さ」
はちみつの日
「ミリア、知ってる?」
夏の午後、陽菜がスマートフォンを見ながら声をかけた。
「何を?」
「今日は、はちみつの日なんだって」
「8(はち)・3(みつ)?」
「そう!」
陽菜は嬉しそうに笑った。
小さなはちみつ専門店
二人が商店街を歩いていると、小さなはちみつ専門店を見つけた。
店内には、レンゲ、アカシア、みかんなど、いろいろな種類のはちみつが並んでいる。
「こんなに種類があるんだ……」
ミリアが瓶を眺める。
試食してみると、同じはちみつでも、花によって味が違う。
「こっちは爽やか!」
「本当だね」
二人は顔を見合わせて笑った。
結局、気に入ったはちみつを一瓶ずつ買うことにした。
いつもの朝が、少し特別になる
翌朝。
ミリアはトーストを焼いた。
こんがり焼けたパンに、はちみつをひとさじ。
とろりと黄金色の甘さが広がっていく。
「……きれい」
一口食べる。
「おいしい」
いつものトースト。
いつもの朝。
それなのに、ほんの少しだけ特別に感じる。
そのとき、陽菜から写真が届いた。
そこには、同じようにはちみつをかけたトースト。
『おいしい!』
ミリアは笑って返信する。
『私も今食べてる』
すぐに返事が来た。
『おそろいだね!』
友情も、ひとさじの甘さ
はちみつは、ほんのひとさじ。
たくさん入れなくても、いつもの食事を少し嬉しくしてくれる。
ミリアはふと思った。
友情も、少し似ているのかもしれない。
特別なことを毎日する必要はない。
一緒に笑ったり。
くだらない話をしたり。
「元気?」とメッセージを送ったり。
そんな小さな出来事の積み重ねが、毎日を少しずつ明るくしてくれる。
「……陽菜がいると、退屈しないな」
ミリアが呟く。
すると、すぐにスマートフォンが鳴った。
『今度は、はちみつアイス食べに行こう!』
「やっぱり、食べることなんだ……」
ミリアは笑った。
でも、そんな陽菜との時間が嫌いではない。
むしろ――好きだった。
小さな幸せを大切に
8月3日、はちみつの日。
甘いものを食べるだけの、何気ない一日。
けれど、ほんのひとさじの甘さが、いつもの朝を少し特別にしてくれる。
友達との何気ない会話も、それと同じなのかもしれない。
大きな幸せじゃなくていい。
笑顔になれる小さな出来事が、一日にひとつあればいい。
ミリアはトーストをもう一口食べた。
「……明日も、ちょっと甘い朝にしようかな」
夏の朝。
窓から差し込む光の中で、はちみつが静かに輝いていた。
今日も、ひとさじの幸せを。
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