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ミリアの日々 夏の風を追いかけて。― 8月19日「バイクの日」―



「実は、私も乗れるんだよ」

昼下がり。

ミリアと陽菜は、駅から少し離れた道を歩いていた。

夏の強い日差しの下を、一台のバイクが走り抜けていく。

ブォン、と低いエンジン音。

風を切って走る姿を、陽菜が目で追った。

「いいなあ」

「バイク?」

「うん」

陽菜は少し笑って、ミリアを見る。

「実は私、免許持ってるんだよ」

「え?」

ミリアが立ち止まった。

「陽菜が?」

「なに、その反応」

「いや……意外だったから」

「ちゃんと乗れるよ?」

少しむっとした陽菜に、ミリアは笑った。

「そういうミリアは?」

「私も持ってるよ」

今度は陽菜が立ち止まった。

「えっ?」

「なに、その反応」

「ミリアが?」

「同じこと言ってる」

二人は顔を見合わせて、笑った。

どうやら、お互い知らなかったらしい。


「じゃあ、乗ってみる?」

8月19日。

今日は「バイクの日」。

せっかくだからということで、二人は少しだけ遠回りをして帰ることにした。

ミリアは落ち着いた雰囲気のバイク。

陽菜は少し軽快で、取り回しのよさそうなバイク。

ヘルメットを被ると、いつもの二人とは少し違って見える。

「似合う?」

陽菜が聞いた。

「うん。思ったより」

「思ったよりって何?」

「陽菜は、もっと……」

「もっと?」

「自転車のイメージだった」

「それ、褒めてる?」

「たぶん」

「たぶん!?」

笑いながら、二人はエンジンをかけた。

静かな住宅街に、小さくエンジン音が響く。


夏の風は、思っていたより強い

走り出す。

最初の信号を抜けて、少し広い道へ出る。

すると、風が変わった。

歩いているときには感じなかった風が、一気に身体を包んでいく。

「気持ちいい!」

信号待ちで、陽菜が叫んだ。

「前、見て」

「見てるよ!」

「叫ぶ余裕あるんだ」

ミリアが笑う。

夏の空。

遠くまで続く道。

道路脇の木々。

そして、ヘルメットの隙間から聞こえる風の音。

目的地は、まだ決めていなかった。

今日はどこかへ行くためではなく、

ただ、走ってみたかった。


「次、どっち行く?」

大きな交差点に差しかかる。

赤信号。

二台のバイクが並んだ。

陽菜が横を見る。

「ねえ、次どっち行く?」

「どっちでもいいよ」

「じゃあ、右?」

「いいよ」

「本当に?」

「陽菜が行きたい方で」

青信号になる。

二人は右へ曲がった。

その先に何があるのかは知らない。

でも、それでよかった。

人生にも、ときどきこういう時間が必要なのかもしれない。

目的地を決めない。

効率も考えない。

ただ、

今日はこっちへ行ってみよう。

それだけで、少しだけ世界が広がる。


小さな休憩

しばらく走ると、小さな公園の近くでバイクを止めた。

自動販売機で冷たい飲み物を買う。

ヘルメットを外した陽菜が、大きく息を吐いた。

「暑い!」

「走ってるときは気持ちよかったのにね」

「止まった瞬間に夏が戻ってきた」

「わかる」

二人は日陰のベンチに座った。

目の前には、さっきまで走ってきた道。

知らない街。

知らない景色。

でも、不思議と遠くまで来たような気がする。

陽菜が言った。

「ねえ、ミリア」

「うん?」

「また走ろうね」

ミリアは少し驚いて、それから笑った。

「うん」

「今度は、ちゃんと目的地決めて」

「今日は決めなかったのに?」

「今日は練習」

「何の?」

「二人で出かける練習」

「それなら、合格かな」

「もちろん!」


風を追いかけるように

帰り道。

太陽は少しずつ傾き始めていた。

夕方の光の中を、二人のバイクが走っていく。

来た道とは違う道。

けれど、もう迷っても大丈夫な気がした。

隣には、同じように走っている人がいる。

信号で止まれば、顔を見て笑える。

次の道を決めることもできる。

そしてまた、走り出せる。

人生は、いつも目的地が決まっているわけではない。

どこへ行けばいいのかわからない日もある。

右か左か、迷うこともある。

そんなときは、少しだけ立ち止まって。

一緒に走る人がいるなら、聞いてみればいい。

「次、どっち行く?」

答えが、

「どっちでもいいよ」

でも、きっと大丈夫。

大切なのは、どちらへ行くかよりも。

誰と、その道を走っていくか。


夏の風を追いかけて。

8月19日。

バイクの日。

ミリアと陽菜は、特別な目的地を決めずに走った。

遠くへ行ったわけでもない。

有名な場所を見に行ったわけでもない。

ただ、夏の風の中を走った。

知らない道を曲がり。

信号で止まり。

冷たい飲み物を飲んで。

また走り出す。

そんな何でもない一日。

けれど、ヘルメットを脱いだとき。

陽菜が笑って、

「また行こうね」

と言った。

ミリアも答えた。

「うん。次は、もう少し遠くまで」

その約束があれば、

今日の道も、明日の道も。

少しだけ楽しみになる。

夏の風を追いかけるように。

二人は、夕暮れの道を走っていった。

次は、どこへ行こうか。

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こっちを選択したんですが
こっちの方をチャッピーは気に入ってたようで
漫画と
設定はこちらで作ってくれました。

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