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ミリアの日々 水の中では、少しだけ自由。― 8月14日「水泳の日」―



「今日は、本気で泳ぐからね」

「ミリア!」

朝から陽菜が元気いっぱいだった。

「今日は水泳の日だよ!」

「うん」

「だから、今日は泳ぐ!」

昨日までの陽菜とは、少し様子が違う。

いつもの遊びではなく、今日はどうやら本気らしい。

「ミリアもちゃんと泳いでよ?」

「泳ぐよ」

「競争もしよう」

「……また?」

陽菜は笑った。

「もちろん!」

ミリアも笑う。

どうやら今日は、静かな一日にはなりそうになかった。


夏のプールは、それだけで特別

市民プールに着くと、夏休みらしい光景が広がっていた。

子どもたちの声。

水しぶき。

プールサイドを走らないように注意する係員の声。

照りつける太陽。

水面に反射する光。

二人は準備を済ませると、ゆっくり水の中へ入った。

「冷たーい!」

陽菜が声を上げる。

「気持ちいいね」

ミリアも笑う。

外は暑いのに、水の中に入ると身体が軽くなる。

それだけで、少しだけ日常から離れたような気がした。


「よーい、スタート!」

「じゃあ、競争ね」

陽菜が言った。

「本当にやるの?」

「もちろん!」

二人はスタート地点に並んだ。

「よーい……」

一瞬の静寂。

「スタート!」

水しぶきが上がる。

陽菜は一生懸命に泳ぐ。

ミリアも負けない。

そして――。

「ミリア、速い!」

「陽菜が勝負って言ったんでしょう?」

「次は負けないから!」

プールサイドに上がった二人は、息を切らしながら笑った。

勝った、負けた。

そんなことは、もうどうでもよかった。

ただ、夢中になって泳いだ。

それが楽しかった。


水の中では、少しだけ自由

水の中では、不思議な感覚になる。

身体が軽くなる。

重力から少し解放される。

普段なら当たり前に感じている身体の重ささえ、少し忘れられる。

ミリアはプールの中で仰向けになった。

身体を水に預ける。

空が見える。

青い空。

流れていく白い雲。

「ミリア?」

陽菜の声がする。

「なに?」

「何してるの?」

「浮いてる」

「それだけ?」

「うん。それだけ」

陽菜も隣に浮かんだ。

二人とも何も話さない。

ただ、水に身体を預けている。

泳がなくてもいい。

競争しなくてもいい。

ただ浮かんでいるだけでも、気持ちいい。


前へ進むことだけが、泳ぐことじゃない

私たちは普段、いつも前へ進もうとする。

仕事をする。

予定をこなす。

目標を立てる。

昨日より今日。

今日より明日。

少しでも前へ。

でも、水の中では違う。

泳いで前へ進むこともできる。

けれど、力を抜いて浮かぶこともできる。

流れに身を任せることだってできる。

陽菜が言った。

「ねえ、ミリア」

「うん?」

「ずっと頑張って泳がなくてもいいんだね」

ミリアは空を見上げた。

「そうだね」

「たまには浮かんでるだけでもいい?」

「もちろん」

それは、プールの話だけではないのかもしれない。


休むことも、大切なこと

頑張ることは大切。

前へ進むことも大切。

でも、ずっと力を入れていたら疲れてしまう。

そんなときは、少し休めばいい。

水の上で身体の力を抜くように。

何もしない時間を作る。

空を眺める。

誰かと話す。

好きなものを食べる。

それだけで、また少し元気になれることがある。

陽菜がプールサイドで冷たい飲み物を飲みながら言った。

「今日、来てよかったね」

「うん」

「泳ぐのも楽しいけど……」

陽菜は少し考えてから続けた。

「こうやって何もせずに浮かぶのも、いいね」

ミリアは笑った。

「それ、最初から言ってくれればよかったのに」

「だって、競争もしたかったんだもん」

「やっぱり陽菜らしいね」


夏は、まだ終わらない

夕方。

二人はプールを出た。

少し疲れている。

でも、嫌な疲れではない。

身体を動かしたあとの、心地よい疲れ。

空はまだ明るい。

夏の夕暮れは長い。

陽菜が言った。

「また来ようね」

「うん」

「今度はもっと速く泳ぐから」

「じゃあ、私も練習しておこうかな」

「負けないよ!」

また競争が始まりそうだった。

ミリアは笑った。


水の中では、少しだけ自由。

泳ぐことは、前へ進むこと。

でも、それだけではない。

疲れたら、立ち止まっていい。

力を抜いて、浮かんでもいい。

空を見上げてもいい。

誰かと笑ってもいい。

そして、元気になったら、また泳ぎ出せばいい。

8月14日。

水泳の日。

ミリアと陽菜は、夏の水の中で思い切り遊んだ。

遠くへ行ったわけではない。

特別なことをしたわけでもない。

それでも、今日という一日は、ちゃんと二人の思い出になった。

人生も、泳ぐことに少し似ているのかもしれない。

いつも全力で泳ぐ必要はない。

たまには力を抜いて、水に身を任せる。

そうすれば、また前へ進む力が戻ってくる。

夕暮れの空を見上げながら、ミリアは思った。

今日は、いい夏の日だった。

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何コマか、描き分けがおかしいのがありますねぇ

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