[本の紹介]『韓国大統領列伝 権力者の栄華と転落 (中公新書)』池東旭 (著)
本書は、長年にわたり日韓の言論界で活躍したジャーナリストである著者が、李承晩から李明博に至る歴代大統領の人間像と、その権力の内幕をリアルに描き出した人物中心の現代史である。
最大の見どころは、最高権力者たちの「栄華」の絶頂から、亡命、暗殺、逮捕、自殺といった悲劇的な「転落」へ至るドラマを生々しく追っている点にある。著者は、彼らがなぜ例外なく過酷な運命をたどるのかという問いに対し、韓国特有の「恨(ハン)」の文化や情の論理、血縁・地縁を重視する過剰な身内びいき、そして前政権を徹底的に糾弾する勝者総取りの政治風土を指摘する。長年メディアの最前線で取材を重ねてきた著者ならではの視点で、公的な記録だけでは見えてこない、大統領たちの執念や孤独、側近たちの思惑といった人間臭いディテールが活写されている。
激動の半島情勢の中で、国家を牽引したカリスマたちの功罪をバランスよく検証しており、単なる悲劇の列伝にとどまらない深みがある。日本人の著者には真似できない、韓国人ならではの自国大統領に対する極めて峻烈な批判も盛り込まれている。韓国政治の底流にある精神構造や、現代社会が抱える根深い病理を人間ドラマを通して構造的に理解させてくれる読み応えのある一冊である。(了)
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