「なんでやらないの?」が止まらない中学受験のけんかが減る“子どものタイプ別”関わり方(児童精神科医)
毎日、「やりなさい」と言ってしまう。
そして夜になると、「言いすぎたかもしれない」と落ち込む。
中学受験のご家庭で、この繰り返しに悩んでいる親御さんは少なくありません。
私はそんな悪い関わりしていないのに、うちはよくやっている方なのに、なんで?
そんな場合は、
「やる気」や「性格」の問題ではなく、「子どもの特性」「脳の特徴」で起きているということを疑ってもいいかもしれません。
今回は、児童精神科医の立場から、
やる気がなかなかわかない脳・きりかえが苦手な脳・不安になりやすい脳に分けて、
けんかが起きる理由と、すぐにできる関わり方をお伝えします。
■本文
■① ADHDタイプ:「やる気が出るまでが遅い」
「早くやりなさい」
「なんで始めないの?」
このやりとりでぶつかりやすいのが、ADHD(注意欠如多動症)タイプの子どもです。
このタイプの特徴は、「やる気がない」のではなく、やる気が立ち上がるまでに時間がかかることです。
頭では「やらなきゃ」と思っていても、行動に移すスイッチが入りにくいのです。
親から見ると「ダラダラしている」「サボっている」と見えやすいのですが、本人の中ではむしろ「やりたいのに動けない」状態です。
ここで叱られると、「やっぱり自分はできない」という感覚が強まり、さらに動けなくなるという悪循環に入ります。
関わり方のポイント
「やる気を待たないこと」です。
「1問だけやろう」
「5分だけでいいよ」
「最初だけ一緒にやろうか」
このように、行動を小さく切り出すことで、動き出しやすくなります。
やる気は“あとからついてくるもの”と捉えると、けんかは減っていきます。
■② ASDタイプ:「切り替えが遅い」
「今すぐやめて勉強して」
「何回言ったらわかるの?」
こうした衝突が多いのが、ASD(自閉スペクトラム症)タイプです。
このタイプは、何かに集中しているとき、次の行動への切り替えに時間がかかる特徴があります。
本人は無視しているわけではなく、まだ頭の中が前の活動にある状態です。
親は「言うことを聞かない」と感じ、子どもは「急に変えさせられる」と感じる。このズレがけんかになります。
関わり方のポイント
「急に変えないこと」です。
「あと10分で終わりにしよう」
「このページまでやったら切り替えよう」
スケジュールを見える形にする
こうした予告と見通しがあるだけで、行動はぐっとスムーズになります。
切り替えは努力ではなく“特性”です。この理解があると、親の声かけは自然と変わります。また、親がある程度は合わせてあげる必要があります。
■③ 不安タイプ:「テストの日に具合が悪くなる」
「なんで今日なの?」
「逃げているんじゃないの?」
模試や試験当日に体調を崩す子どもに対して、こう感じてしまうこともあると思います。
しかしこのタイプは、強いプレッシャーがかかると、腹痛や吐き気などの身体症状として不安が出ることがあります。
これは気持ちの弱さではなく、自律神経の反応です。
本人も「行きたいのに行けない」状態であり、そこに否定的な言葉が重なると、自己否定感が強まります。
関わり方のポイント
まず「体調は本物」と受け止めることです。
「緊張するとお腹痛くなるよね」
「大事な日だからこそ不安になるよね」
と受け止めたうえで、
会場の下見
当日の流れのシミュレーション
呼吸などのリラックス練習
といった「準備」を一緒にしていくことが大切です。
■自分を責めるのではなく脳のタイプを考慮していみて
中学受験の親子げんかは、
ADHD:始めるのが難しい
ASD:切り替えるのが難しい
不安:感じすぎてしまう
という、それぞれの脳のタイプ(発達の特性)から生まれる“ズレ”で起きている場合があります。
「なぜこの子はこうなるのか」という視点を持つと、関わり方は大きく変わります。お子さんが発達の特性が強い場合には、「関わり方にはコツ」があります。
現在は、発達特性はあるかないかではなくて、発達の特徴がどの程度あるかや、サポートが必要なのかといった視点で関わることが重要とされています。身体的な特徴があるように、どの方にも脳の特徴があります。脳の特徴を知ることで、関わり方の工夫が見えてくることがあります。
著者はあじさいクリニックの院長をしています。また、花まる学習会の顧問をしていて、教育的なアドバイスに関しても関心が高いです。
