「学校に行く」という行動をとりやすくなるために大切な3つの視点― 不安や発達特性がある子どもたちを見ている精神科医が感じること ―
子どもが学校に行けなくなったとき、
親としては、
「どうしたらまた行けるようになるのだろう」
と悩まれることが多いと思います。
もちろん、「学校に戻ること」だけが正解ではありません。
転校やフリースクール、家庭での学びなど、別の選択肢が合う場合もあります。
そのうえで、臨床の中で、
「結果として、また外に向かえるようになっていく子」
には、共通する変化があるように感じます。
今回は、短期的な対応というよりも、
「長い目で見たときに、どんな力が育つと動きやすくなるのか」
という視点で書いてみたいと思います。
大きく分けると、3つの変化があります
① 完璧でなくてもよいと思える
② 「自分にもできる」が増える
③ 困った場面への対処法を身につける
この3つのうち、どれか一つでも少し育つと、
結果として「学校に向かいやすくなる」ことがあります。
でこぼこ道の運転にたとえると
“でこぼこ道”にでくわしたとき
ドライバーとしてできることは以下の3つかなと思います。
① 多少揺れてもしかたないと思う
「少しくらいうまくいかなくてもいい」
「疲れる日があってもいい」
と思えること。
② 鼻歌うたいながら、石をけちらして、道を進む
好きなことや得意なことが増えると、
「多少イヤなことがあっても大丈夫」
と思いやすくなります。
③ 運転技術でどうにかする
つまり、
困ったときにどう言うか
どう距離をとるか
どう助けを求めるか
という“対処法”を知っていることです。
① 「完璧でない自分」を少し受け入れられる
学校に行きづらい子の中には、
ちゃんとしていないとダメ
勉強ができないとダメ
嫌われたら終わり
迷惑をかけてはいけない
という思いが強い子がいます。
特に不安が強い子や、発達特性のある子は、
「失敗」や「ズレ」をとても敏感に感じることがあります。
だからこそ、
まあまあでもいい
調子が悪い日もある
人には得意不得意がある
助けてもらってもいい
と思えることが、
実は大きな回復につながることがあります。
これは「諦める」というより、
“自分との付き合い方が柔らかくなる、完璧ではない自分を受け入れる”
イメージに近いかもしれません。
② 「自分にもできる」が増える
学校とは関係ない場所でも、
ゲーム
絵
スポーツ
推し活
動画編集
料理
人との会話
など、何か一つでも
「これなら自分は大丈夫」
と思えるものがあると、人は少し強くなれます。
自己肯定感というより、
「自分なりの安心感」が増えるイメージです。
すると、以前ほど周囲の言葉に傷つきにくくなったり、
細かなことを気にしすぎなくなったりすることがあります。
③ 難しい場面への“対処法”を知る
学校では、
「なんで休んでたの?」
「一緒に悪口言おう」
「もう友達じゃない」
など、難しいコミュニケーション場面が起こることがあります。
そのときに、
話題を変える
軽く流す
距離をとる
先生に相談する
自分の気持ちを短く伝える
などの“コーピングスキル(対処法)”を持っていると、
学校生活の負担が減ることがあります。
これは、
「気にしない性格になる」
というより、
「困ったときに、自分を守る方法を知っている」
ということに近いです。
「学校に行く」がゴールではない
ここはとても大切ですが、
必ずしも“元の学校に戻ること”だけが正解ではありません。
環境を変えたほうがよい場合もありますし、
休むことが必要な時期もあります。
ただ、
人と少し関わる
日中に過ごす場所がある
安心できる居場所がある
ということは、
子どもの回復にとって大切なことが多いように感じます。
最後に
「学校に行けるようになる」という変化は、
ある日突然起こるというより、
少し力が抜けたり
自信が戻ったり
対処法を覚えたり
そんな小さな変化の積み重ねの中で起こることが多いです。
今、悩んでいるご本人やご家族にとって、
何かヒントになる部分があれば嬉しく思います。
