「なんとなくつらい」は、怠けではない五月病に認知行動療法(CBT)ができること
4月から新しい環境になり、気づけば5月。
「なんだかやる気が出ない」
「朝がつらい」
「学校や会社に行きたくない」
そんな状態になっていませんか。
この時期は、いわゆる“五月病”の相談が増える時期です。
もちろん正式な病名ではありませんが、環境変化によるストレスや疲労によって、心や身体にさまざまな不調が出ることがあります。
特に、真面目で頑張り屋の人ほど、4月に無理をしてしまい、5月になってから“心の電池切れ”のような状態になることがあります。
今回は、五月病に対して認知行動療法(CBT)がどのような視点で関わるのかをお話しします。
① 「環境変化による疲労」を見える化する
4月は、多くの人が無意識に頑張っています。
新しい人間関係
空気を読む
緊張する
期待に応えようとする
失敗しないようにする
こうしたことは、一見「普通のこと」に見えますが、実はかなりエネルギーを使っています。
特に、
気を遣いやすい
完璧主義
真面目
周囲を優先しやすい
タイプの人は、外から見える以上に疲労がたまりやすい傾向があります。
しかし本人は、「みんな同じなんだから頑張らなきゃ」と考え、自分の疲れに気づけないことも少なくありません。
認知行動療法ではまず、
「怠けではなく、“疲労反応”かもしれない」
という整理を大切にします。
“心が弱い”のではなく、“環境変化に適応するためにエネルギーを使っていた”という視点を持つだけでも、自分を責める気持ちが少し和らぐことがあります。
② “自分を責める思考”を整理する
五月病では、自責的な考えが強くなることがあります。
「自分だけ適応できていない」
「もっと頑張らなきゃ」
「社会人失格かも」
「学校に行けない自分はダメ」
こうした思考が続くと、不安や落ち込みがさらに強くなります。
認知行動療法では、
本当に100%そうなのか
他の見方はあるか
“疲れているだけ”ではないか
を一緒に整理していきます。
たとえば、「みんな普通にできている」と思っていても、実際には周囲もかなり無理をしていることがあります。
また、「頑張れていない」のではなく、“頑張りすぎて電池切れになっている”ケースも少なくありません。
考え方を無理やりポジティブに変えるというより、「少し現実的に見る」ことを目指していきます。
③ 「やる気が出てから動く」を修正する
落ち込むと、人は自然と、
家にこもる
寝続ける
人を避ける
ようになります。
すると、一時的には楽になります。
しかしその一方で、
生活リズムが崩れる
外に出づらくなる
「何もできていない」という自己否定が強まる
という悪循環が起きやすくなります。
認知行動療法では、「やる気が出てから動く」のではなく、
“少し動くことで、気分や脳が後からついてくる”
という考え方を重視します。
たとえば、
朝カーテンを開ける
5分だけ散歩する
学校に“途中まで”行ってみる
メールだけ返す
など、小さな行動から回復の流れを作っていきます。
「全部できる」ではなく、“少しだけやる”が大切です。
④ 「完璧適応」を目指しすぎない
新生活では、多くの人が無意識に、
友達をすぐ作らなきゃ
ミスしちゃいけない
良い印象を与えなきゃ
と頑張りすぎています。
特にSNS時代では、周囲がうまくやっているように見えやすく、「自分だけ遅れている」と感じやすい面もあります。
しかし実際には、新しい環境に慣れるには時間がかかるものです。
認知行動療法では、
「最初は疲れるもの」
「慣れるまで時間がかかる」
「70点でいい」
という、“現実的な適応”を大切にします。
100点を目指し続けると、心が先に消耗してしまいます。
“続けられる頑張り方”を見つけることのほうが、長い目では大切です。
⑤ 生活リズムを整える
五月病では、
夜更かし
朝起きられない
スマホ時間の増加
なども悪循環になりやすいです。
特に、落ち込んでいるときは、夜にスマホを見続けてしまい、さらに睡眠が乱れることがあります。
認知行動療法では、
朝日を浴びる
起床時間を固定する
「眠らなきゃ」という焦りを減らす
活動量を少し増やす
など、生活面の調整も大切にします。
心と身体はつながっているため、生活リズムを整えることが、気分の安定にもつながります。
「頑張れない」のではなく、「頑張りすぎていた」のかもしれない
五月病の時期は、「もっと頑張らなきゃ」と自分を追い込んでしまう人が少なくありません。
でも、本当に必要なのは、“さらに無理をすること”ではなく、
自分の疲れに気づくこと
少しペースを落とすこと
完璧を目指しすぎないこと
小さく回復していくこと
だったりします。
もし今、「なんとなくつらい」「気力が出ない」と感じているなら、それは怠けではなく、“環境変化に頑張って適応してきたサイン”かもしれません。
*著者(蟹江絢子)は西荻窪駅であじさいクリニック 児童精神科・精神科・心療内科を開業しています。
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