まつ毛は伸びたのに、まぶたが老けて見えた話
まつ毛美容液で起きる、まぶたの変化について
「先生、まつ毛はこんなにフサフサになったのに、どうして私の目はこんなに小さく、老けてしまったんでしょうか?」
診察室で、そう話してくれた女性。
まつ毛は、たしかに長い。
目を縁取る濃さもある。
ぱっと見たら「うらやましい」と思う人もいるでしょう。
でも、私はまつ毛より先に、まぶたのほうが気になりました。(当たり前だけど)
まぶたの縁が黒っぽく沈んでいる。
眉の下は、痩せこけたように落ちくぼんでいる。
あと、黒目にまぶたがかぶっていて、目そのものが小さく見えていました。
本人は、きっと綺麗になりたくて続けていただけなんです。
毎日ちゃんと塗って、ケアして、まつ毛が伸びるのを楽しみにしていた。
シナリオ通りに、まつ毛は伸びた。
でも、まぶたが変わってしまった。
正直、こういう相談を受けるたびに、やるせなさを覚えます。
「頑張って綺麗になろうとしたこと」が、結果的にその人のまぶたを傷めてしまっている。
これは、まぶたの治療に関わっている医師として、かなりつらい現実です。
しかも、こういう相談は珍しくありません。
最近は、まつ毛美容液を使ったあとに、
「まぶたが黒ずんできた」
「目が落ちくぼんだ」
「なんだか老けて見える」
「目が開きにくくなった気がする」
と受診される方がじんわり増えています。
医学的には、こうした変化を
PAP(プロスタグランジン関連眼窩周囲炎)
と呼びます。
しかもね。本人もうっすら分かってるんです。まつ毛美容液が原因だって。だから「使用はやめた」って。
でも戻らないんだって。

まつ毛を伸ばすために塗ったものが、なぜまぶたにまで影響するのか。
不思議に感じます?
でも、まぶたって、かなり特殊な場所なんです。
皮膚がペラペラに薄い。
顔の中でも、かなりデリケート。
しかも薬や成分が入りやすい場所でもあります。
皮膚科や眼科で、まぶたに塗るステロイドを慎重に選ぶのも、このためです。
「まぶたは吸収しやすいから気をつけてね」と言われたことがある方もいるかもしれませんね。
まぶたは特に素直でデリケート。
まつ毛の根元に毎日塗っているものが、まつ毛だけに作用して終わってくれたらよかったんだけど。皮膚と内部の組織が受け止めてしまったわけ。
まつ毛を伸ばす薬剤は、現実に存在する(ファクト)
厚労省が認可した医薬品として「グラッシュビスタ」があります。もともと緑内障治療薬(点眼薬)で、成分はビマトプロスト。
緑内障患者さんのまつ毛がフッサフサになるのを、影から私は見とどけています。と同時にまぶたが黒ずんで落ちくぼみ、眼瞼下垂になっているのです。(実際眼瞼下垂の治療しているしね)
そう、その類似成分が、彼女のまつ毛美容液に含まれていた。
ただそれだけ。
PAP(プロスタグランジン関連眼窩周囲炎)
具体的には、まぶたの中でこんなことが起きています。
メラニン合成の活性化: まぶたがパンダのように黒ずむ(色素沈着)。
脂肪の萎縮: 目の上が痩せ、急激に老け込んだ印象になる(落ち窪み)。

「私が使っているのは、ネットで買った普通の美容液だから大丈夫」 そう思っている方にこそ、一度確かめてほしいことがあります。
実は、医薬品ではない「一般の化粧品」として売られているまつ毛美容液の中にも、これらと同じような作用を持つ成分が紛れ込んでいるケースが少なくないのです。
そこで、あなたが今使っている美容液が「まぶたの健康」を損なっていないか、以下の記事でチェックしてみましょう。
キーワードは「イソプロピルクロプロステネート」「エチルタフルプロスタミド」
もし、今使っている製品の成分表を見て、この名前が見つかったら。その後にすべきことはお分かりですね。
まぶたの縁が黒ずんでくる。
いやね。わかるんです。アイシャドーやアイラインのように見えるから「まんざらでもない」って思うのね。
でもPAPは色素沈着から始まります。ここでブレーキをかけられるかどうかにかかっています。
私は、まつ毛美容液そのものを全部悪者にしたいわけではありません。
そこは誤解しないでください。
まつ毛が薄くて悩んでいる方はたくさんいます。
まつ毛が伸びることで、気持ちが明るくなる方もいる。
それは美容の力だし、私はそこを否定したくありません。
綺麗になりたくてケアをしていた。
それは自然なことです。
間違いなんかじゃありません。
ただ、体の反応は人によって違います。
同じ美容液を使っても、何も起きない人もいます。
一方で、まぶたが敏感に反応してしまう人もいる。
肌が弱い人、目の周りがかぶれやすい人、もともとまぶたが薄い人は、変化に気づきやすいかもしれません。
あと、毎日見ている自分の顔って、意外と変化に気づきにくいんです。(コレ本当ですよ)
使用を中止することで、回復する可能性はまだまだあります。諦めないでください。
もし使用を中止して数ヶ月経っても、目の開きが戻らなかったり、落ち窪みが深く刻まれたままなら、それはもう「セルフケア」の段階を超え、まぶたの構造自体をととのえる「治療」が必要なサインかもしれません。
「まつ毛を伸ばしたかっただけなのに、手術の話になるなんて」
そう思いますよね。
私も、できればそんな展開にはなってほしくありません。
だからこそ、早めに気づいてほしい。ただそれだけ。
これからは、まつ毛への情熱を『まぶたを守ること』にも少しだけ分けてあげてください。もし、一人で鏡を見て悩んでいるのなら、いつでも診察室のドアを叩いてくださいね。

※この記事に出てくるエピソードは、実際に診察室で経験した複数の相談をもとに、個人が特定されないよう再構成したものです。物語の形で書いていますが、ここでお伝えしているまぶたの変化は、実際の診療でも目にする現実です。
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