全文無料で読めます。「寒いと風邪をひく」は迷信ですか?
こんにちは。2025年まで残すは20日ほどですね。良い1週間を !!
今回は、気温と「自然免疫における一般の方が使う言葉としてのシェディングの効果」の関係について科学的に説明します。
なお、評価してくださるのが嬉しくてマガジンに入れていますが全文無料で読めます
今回のご紹介は、マスクのことに詳しいnoterさんです
いわゆる「マスク推し」ではなく、「一流のマスクオタク」の方です
それでは、どうぞ
なぜ冬に風邪をひくことが多いのか?
ヒトの上気道は、吸入された呼吸器系ウイルスの最初の接触部位であり、さまざまな自然免疫応答が起きています

鼻上皮細胞にウイルスが侵入すると防御効果をもつ何かが分泌されますか?
ウイルス感染で、ウイルスが鼻上皮細胞に侵入した時にどのような抗ウイルス効果のある生体反応がおこるのでしょうか?
🔵 実験にはヒト初代培養鼻上皮細胞および新鮮なヒト鼻粘膜手術検体を使用した
🔵 dsRNAウイルス感染と同様な反応を自然免疫系に起こすと考えられているポリ(I:C)*をウイルスの代わりに使用した。ポリ(I:C)は TLR3 アゴニストで、TLR3 シグナル伝達経路を活性化します
*ポリ(I:C)は、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸 の略です
実験1: 鼻上皮細胞にポリ(I:C)を暴露して分泌される細胞外小胞を計測した

鼻上皮細胞にポリ(I:C)を暴露した。
ポリ(I:C)は、暴露刺激後5時間で細胞外小胞 (EV)分泌を促進し始めた。
24時間後に分泌のピークが観察された (図1A)

ポリ(I:C) の濃度は、0.5 μg/mL、2.5 μg/mL、5 μg/mL
ポリ(I:C)を暴露した鼻上皮細胞の生存率をMTSアッセイで調べた。
ポリ(I:C)はを暴露しても鼻上皮細胞がの生存率に影響はなく、毒性は無いと判断した (図1B)

∗∗P ≤ .01(2元配置分散分析に続いてTukey検定)
データは4つの独立した実験(平均±SEM)を表します
さらに詳しい実験:
🔵 ポリ(I:C)存在下、TLR3/dsRNA複合体阻害剤で細胞を前処理すると、TLR3およびphospho-IRF3のタンパク質発現が低下し(図1、CおよびD)、ポリ(I:C)刺激によるEV分泌への影響にマイナスの効果があった(図1、E)。分泌されたEVの総数は、刺激されていないコントロールと同程度であった(P > .05)。
🔵 次に、細胞をTLR3/dsRNA複合体阻害剤とIRF3アゴニストKIN1148のカクテルで前処理すると、TLR3-IRF3シグナル軸の遮断と、TLR3への競合結合によって誘発されるEV分泌の減少が完全に無効になった(図1、C-E)

分泌された細胞外小胞はどのような特性ですか?
ポリ(I:C) 刺激を受け分泌された細胞外小胞は、平均粒子サイズが177.5×20.1nmで、ゼータ電位が210.88×1.31mVの負の表面電荷を示した
細胞外小胞 の粒子サイズとゼータ電位は、Malvern Nano ZS (Malvern Instruments) を使用した動的光散乱によって決定された。EV の形態は、極低温透過型電子顕微鏡 (TEM) によって観察された
分泌された細胞外小胞をクライオ透過型電子顕微鏡で観察すると、予想されるサイズ約100nmの 単一または二重膜小胞でした

スケール バー = 50 nm
鼻上皮細胞から分泌された細胞外小胞は、再び鼻上皮細胞に入りますか?
🔵 鼻上皮細胞を培養します (下図左側)
🔵 次に、分泌された細胞外小胞を回収して、緑色の標識をつけて37℃で60分間培養した鼻上皮細胞に添加した
✅ 細胞外小胞は上皮を通過し、蛍光タグは10分以内に細胞内に検出され、急速な細胞内への取り込みを示しその後60分かけて細胞質全体に徐々に拡散していった (下図右)

スケールバー=100 μm


この細胞外小胞は風邪コロナウイルスの感染を防ぐでしょうか?
🔵 風邪コロナウイルス (Cov-OC43) を感染させた培養している細胞に、ポリ(I:C)暴露で分泌された細胞外小胞 をさまざまな濃度で作用させてみました
🔵 次に、細胞内で増殖するウイルス量を定量PCR法で測定した
✅ 細胞内で増殖するウイルスは ポリ(I:C)暴露で分泌された細胞外小胞の量 が多い ほど強く増殖が抑制されました (下図)
抗ウイルス活性アッセイ方法:TCID50 の 2 倍のウイルスを、BEBM 中で 1.25 × 10^10/mL の濃度で組換えヒト低密度リポタンパク質受容体 (LDLR; 60 nmol; R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)、組換えヒト細胞間接着分子 1 (ICAM-1; 60 nmol; R&D Systems)、または精製 EV と 1:1 の体積比で事前に混合し、1 時間インキュベートした。次に、96 ウェル プレートに播種した HNEpC を、組換えヒトタンパク質または EV とともに事前にインキュベートしたウイルスに曝露した。ウイルスが 1 時間吸収された後、BEGM を実験ウェルに加え、インキュベーションを続けた。感染から 4 日後、感染細胞からウイルス RNA を抽出し、発現をリアルタイム定量 PCR (qPCR) で定量した
下図です。ポリ(I:C)暴露で分泌された細胞外小胞は、用量依存的にウイルス感染をブロックし、最低濃度の2.5 3 10^9/mLでも、CoV_OC43(P <_ .05)の複製をそれぞれ38.37% 抑制した

∗P ≤ .05 および ∗∗∗∗P ≤ .001(1 元配置分散分析に続いて Tukey テスト)
データは 3 つの独立した実験を表します(平均 ± SEM)
この他のウイルスに対する効果も調べられた。ライノウイルス RV-1B の複製を72.59% (P <_ .001)、ライノウイルス RV-16 の複製を 61.51% (P <_ .001)抑制した

細胞外小胞による抗ウイルス効果は気温に影響されますか?
鼻腔内のコンパートメントは下鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介に分かれています(下図)

室温変化に伴う鼻腔内温度の変化
🔵 健康なボランティアの鼻粘膜の温度を測定した
✅ 室温 23.3℃が、4.4℃に下がると、下鼻甲介と中下鼻甲介の鼻腔内温度は、最大6.48℃(P <_.001) と 4.78℃(P <_.001) 低下した (下図E6)

健康なボランティアの鼻腔内温度を常温(23.38℃)または低温(4.48℃)環境で測定した。****P <_ .001(両側スチューデントt検定); データは4つの独立した実験(平均6 SEM)を表します。
🔵 上の結果から、外気温が4℃の時は鼻内部の上皮細胞の温度は室温の時よりも5℃下がる。鼻細胞上皮を培養する温度を5℃下げてみた
✅ 鼻細胞上皮からの抗ウイルス効果のある細胞外小胞は、温度低下の影響を強く受け、分泌量が減少した (下図)

∗ 対照と TLR3 刺激 EV の比較では P ≤ .05、37°C と 32°C で生成された TLR3 刺激 EV の比較では #P ≤ .05 (2 元配置分散分析の後に Tukey 検定を実施)
データは 4 つの独立した実験 (平均 ± SEM) を表します

確認実験:
🔵 鼻上皮細胞を4℃の低温でインキュベートし、クロルプロマジンで前処理した場合、細胞外小胞の取り込みがそれぞれ87.5% (P <_ .001) および 41.3% (P <_ .01) と大幅に抑制された (Fig 1, H)
✅ 鼻上皮細胞によるの細胞外小胞内在化にはエネルギー依存性およびクラスリン仲介性のエンドサイトーシスが関与することが確認できた .
細胞外小胞の抗ウイルス効果は何によるのか?

🔵 TLR3 刺激によって分泌された細胞外小胞に含まれる miRNAをスクリーニングした
🔵 TLR3 刺激後に有意に発現が上昇したmiRNAの中でウイルス複製を抑制することが以前に報告されているmiR-17 の量をqPCRで調べた
*ポリ(I:C)暴露はTL3を刺激するので、これ以降は論文に従って「ポリ(I:C)暴露」のことを「TLR3 刺激」と書きます
✅ miR-17の発現量は、TLR3刺激による細胞外小胞中で非刺激対照と比較して有意に増加していた(図3C. P <_ .001)

∗∗∗∗P ≤ .001(両側スチューデントt検定)

次に、miR-17 の抗ウイルス作用を確認した
✅ 細胞にトランスフェクションすると、細胞内のmiR-17 が増加することがわかっている合成 miR-17 模倣体を鼻上皮細胞にトランスフェクトすると、風邪コロナウイルスの増殖が減少した (図3D)
✅ miR-17 阻害剤 (mirVana miR-17阻害剤) をトランスフェクトすると、風邪コロナウイルスは増殖した (図3F)

図3F. qPCR 分析では、TLR3 刺激抗 miR-17 EV でウイルスをプレインキュベートした場合、TLR3 刺激抗 miR 陰性コントロール EV と比較して、CoV_OC43 に感染した 鼻上皮細胞 でウイルス mRNA レベルが上昇したことを示しています。 *P < _ .05 (両側スチューデント t 検定)。データは 3 つの独立した実験 (平均 6 SEM) を表します

まとめ
✅ dsRNAウイルスに感染すると、鼻上皮細胞は抗ウイルス活性のある細胞外小胞を分泌する
✅ 分泌された細胞外小胞は抗ウイルス活性を近くの細胞に伝達する
✅ この細胞外小胞は鼻上皮細胞内で風邪コロナウイルスが増殖するのを抑制した
✅ この細胞外小胞の抗ウイルス活性の一部はmiR-17 による
✅ 寒冷な環境では鼻上皮細胞から分泌される細胞外小胞をの数が減少する
✅ 寒冷な環境では鼻上皮細胞から分泌される細胞外小胞による抗ウイルス活性が減少した
なお、ウイルス感染と関係なくシェディングされた細胞外小胞には、抗ウイルス活性はなかった
個人の意見
この記事は、不織布マスク・サージカルマスク・KF94・N95などのフィルター付きマスクではなく昔からある布マスクの鼻や喉を温める効果に関係します。マフラー等で代替可能です
この記事は、一般の皆さんの言っている「シェディング」に関係すると思います。論文の研究方法を参考にしてください
論文:Cold exposure impairs extracellular vesicle swarm–mediated nasal antiviral immunity. Di Huang, PhD et al.
J Allergy Clin Immunol 2023;151:509-25.
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