脊髄小脳変性症3型_治療
こんにちは。15才の時に脊髄小脳変性症を発症した木藤亜也さんの手記、「1リットルの涙」をご存じですか?
木藤さんは脊髄小脳変性症が進行して25才で亡くなられました。
木藤亜也さんの手記、「1リットルの涙」とお母さんの木藤 潮香さんによる母の手記は幻冬舎文庫になっています。
沢尻エリカさんの主演でテレビドラマにもなっています。
脊髄小脳変性症には複数の病型があります。世界的に脊髄小脳変性症は3型のマシャド・ジョセフ病(MJD) が多く、日本人のこの病気の50%を占めると言われています。脊髄小脳変性症3型の世界全体における有病率は 10万人に 1 ~ 5 人であると推定されています。
1978年に世界で初めて論文化されたマシャド・ジョセフ病(MJD)はポルトガルの人でした。 Neurology. 1978;28 (7) 703- 709
脊髄小脳変性症の症状
発病すると歩行、姿勢、手足、言語のバランスと調整が損なわれる運動失調が時間と共に悪くなって行く。次第に歩けなくなり、話すことが不自由になりますが、眼や耳から入る情報処理は障害されにくい。典型的な臨床症状は進行性小脳性運動失調と発語の悪化です。最も影響を受ける領域は小脳と橋です。発症から平均21年ほど生存できます。感情的に表現するなら残酷な病気です。
脳の磁気共鳴画像法 MRI により、脳幹と小脳の萎縮が明らかになります(図1A)

小脳 (青い矢印)、脳幹 (赤い矢印)、および頸髄 (白い矢印) の萎縮
Pol Arch Intern Med. 2022 Oct 21;132(10):16322.
なぜ脊髄小脳変性症になるのか?
遺伝子異常
脊髄小脳変性症3型は常染色体優勢遺伝をします。生まれつき遺伝子に異常のある病気ということです。
異常はアタキシン-3 タンパク質の遺伝子のエクソン 10番目にあるCAG リピートが、 45 コピー以上に拡大していること。その結果できる異常なアタキシン-3 タンパク質が直接の病因です。
アタキシン-3は転写制御にも関与する脱ユビキチン化タンパクです。

Neurobiol Dis. 2020 Feb; 134: 104635. の図1. を改変しました
CAGリピートの拡張などにDNA/RNA結合によるRループの関与が示唆されています。CAGリピートのある長い遺伝子は下図のようにやや安定なループを作って対立遺伝子と結合していると想定されます。

先祖のどこかで生じたアタキシン-3 タンパク質の遺伝子のエクソン 10番目にあるCAG リピートが、子孫に伝わる。CAG リピートは親から子供へ代を重ねるにつれ長くなり、CAGリピートが長いほど若い時に発症し、症状が重く出ます。
今年になって、米国のケビン・マッカーナン氏が新型コロナウイルス感染症のワクチンに250bp以上の長さのdsDNAが混入していることを証明したことで、同ワクチンには有害指定されているdsRNA、さらにDNA/RNAハイブリッドも混入していると示唆されました。
人に注射したDNA/RNAハイブリッドやGC richのdsDNAが、疾患を誘発するというデータはまだありません。また、これまでの遺伝子治療薬投与により目的外の多様な核酸種が人体に注射された経験があるのかは不明です。
少なくとも発達途中にある子どもや胎児へこのワクチンを接種した場合にこれらの混入核酸種によるリスクを評価できません。
既にワクチン接種された方へお伝えできることは、脊髄小脳変性症3型の遺伝子異常が自然発生することは非常に稀です。
新型コロナウイルス感染症ワクチンに含まれている脂質系送達物質のLNPは血液脳関門BBBを突破して、中枢神経へワクチン成分を届け、さらに細胞膜も突破しますが、それからさらに核膜を突破する確率は天文学的に低いはず。例外として核膜がない状態の細胞なら核へ混入核酸種が届く可能性が高くなりますが核膜のない状態の細胞も非常に少数です。
治療法
脊髄小脳変性症は治療法がないと言われています。今、アクセスした難病情報センターにも運動失調に対する対症療法の薬が2種類記載されているだけでした。
運動失調に対する対症療法の薬
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)製剤のプロチレリン酒石酸塩
TRH誘導体であるタルチレリン水和物

甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン (TRH) _運動失調の対症療法
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン (TRH) は、脊髄小脳変性症に対して日本で最初に承認された薬剤の一つです。
2013 年の第 3 相試験 ( NCT01970098)) は、TRH 誘導体ロバチレリン (KPS-0373) が SCA31 および SCA6 患者の重度の運動失調を改善し、これらの効果が軽度の運動失調患者よりも顕著でした。
TRH アナログ C-Trelin 口腔崩壊 (OD) タブは、SCA3 を含む脊髄小脳変性症の治療に提案されており、第 4 相試験が 2019 年に登録されました (NCT04107740)。
TRHの脊髄小脳変性症の運動失調に対する作用を詳しく
TRHは下流のホルモンおよび神経伝達物質の多面的調節因子です。また、神経伝達物質の可能性もあります。
TRH は、小脳でNO/cGMP シグナル伝達経路を介して α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸 (AMPA) 型受容体活性を低下させることにより、平行線維から プルキンエ細胞 (Purkinje cells) への興奮性グルタミン酸作動性伝達の長期抑制を促進し、プルキンエ細胞 のグルタミン酸作動性興奮毒性を抑制する可能性をもとにした対症療法です。
リルゾールからトロリルゾールへ
カルシウム活性化カリウム (SK) チャネルアゴニストである SKA-31 とリルゾールが SAC3/MJD の治療法として提案されています [ 53 ]。2015 年の臨床試験では、リルゾールが治療を受けた患者の 50% で SARA スコアを低下させたと報告されました [ 13]。
リルゾールは一部の患者にアミノトランスフェラーゼの軽度の上昇から肝不全に至るまでの肝毒性を発症するため、特に治療の最初の 1 年間は副作用を注意深く監視する必要があることに注意されました。
トロリルゾールは、より安全性プロファイルが高く、SCA3 に対する有効性が期待できるリルゾールのプロドラッグであり、臨床試験の第 III 相段階にあります (NCT03701399)。
バイオヘブン社は1年前、リルゾールの後継のトロリルゾール薬を用いて脊髄小脳失調症全体を対象とした第3相試験で主な目標を達成できなかった。しかし、脊髄小脳変性症3型に絞って再度解析て前向きな兆候が判明したため治療薬の承認申請を米国FDAに提出した。
リルゾールの作用を詳しく
SCA3 モデル細胞で静止膜電位が低下 (脱分極) で示されるカリウム チャネル機能不全から治療しようという考えです [ 112 ]。
バイオヘブン社は、昨年、同社の片頭痛治療薬に興味を持ったファイザーによって120億ドル近い取引で買収されました。しかし、トロリルゾールは新しく設立されたスピンアウトに送られました。
トレハロース
トレハロースは、砂糖の45%の甘さを持つ自然界に存在する糖質です。日本では林原(株)が大量生産方法を開発し、デンプンの老化抑制などの目的で餅やケーキ、弁当に添加されているのでご存じのかたが多いでしょう。
トレハロースの医療利用の権利
OPMDおよびSCA3患者に対するトレハロースの非経口投与に関する米国特許が2件存在する。 両方とも 2033 年に期限が切れると予想。さらに、OPMD、サンフィリッポ症候群、SCA3 に対する希少疾病用医薬品指定が米国と EU で確保されている。
トレハロースは、細胞内の病理学的プロセスから保護する低分子量二糖類 (0.342 kDa) です。筋肉に浸透し、血液脳関門を通過することが証明されています。
脊髄小脳変性症は3型ではミスフォールド変異体アタキシン-3が封入体として蓄積し、神経細胞死につながります。そこで オートファジーを強化する化学シャペロン トレハロース (Cabaletta) の利用が考えられました。
実験からトレハロースは、1) mTOR 経路非依存性のオートファジー誘導物質として機能する。2) 異常蛋白の凝集を抑制する。3)リソソーム蛋白の発現を増強する。など提唱されていますが、脊髄小脳変性症型の病因である変異体アタキシン-3蛋白にどのように働くかは不明瞭です。

トレハロースに期待できるか?
これまでのところトレハロースは臨床的に安定した治験成果が得られていません。
Bioblast Pharma Ltd.が後援する治験 でトレハロース (13.5 または 27 g/週) は副作用なく SARA スケールを安定させた。
一方、薬剤: カバレッタを週 1 回、24 週間点滴静注する臨床試験でSARAスコアは低下しなかった ( NCT02147886)
水面下にある治療薬
この記事は、決定的な治療薬のない不治の病である脊髄小脳変性症で苦しんでいる人たちのために書いています。
脊髄小脳変性症3型のトリプレットリピート配列に特異的に結合して、短縮させる小分子化合物が開発されています。この化合物は培養細胞と動物モデルのマウスの中枢神経で、トリプレットリピート配列に特異的に結合し、短縮することが報告されています。まだ製薬には遠いですが希望の芽がまったくない訳ではありません
最後まで読んでくださいましてありがとうございます

*自粛蛋白マンさんがでてきませんように(-人-〃)祈。
(自粛蛋白マンさんとは?ネットで医学界に対してずっと怒っている人です)
