【Dr.Suzukaの健康学】第45話 食事が変わると体と心が変わる 食事編⑥
「太っているけど栄養失調」
──現代女性に増える“かくれ栄養不足”
こんにちは、内科医のすずかです。
今回登場するのは、50代の専業主婦・聡子さん(仮名)。
更年期を迎え、「太りやすくなった」「疲れがとれない」「髪が薄くなった」と感じていました。体重は標準よりやや重め。でも血液検査では、
鉄や亜鉛が不足しており、「軽度の貧血」と診断されました。
「栄養は摂ってるはずなのに、なぜ?」
──実は、“量”ではなく“質”の問題が隠れていたのです。
カロリーは足りてる。でも“体が欲しい栄養”は
足りてない?
聡子さんの1日を振り返ってみましょう。
朝:トースト+カフェオレ(砂糖入り)
昼:パスタ+市販ドレッシングのサラダ
おやつ:クッキー+甘い紅茶
夜:ご飯+お惣菜の唐揚げ+ビール
一見、食べていないわけではありません。
でも、以下の問題点が見えてきます:
たんぱく質が少ない
加工食品・糖質中心
鉄・亜鉛・マグネシウムなどの微量栄養素が不足
📌 カロリーは足りているのに、栄養が足りない。
これは現代の“新型栄養失調”とも呼ばれています。
“お腹は満たされる”けど、体が満たされない
現代は、カロリーは十分に足りているのに、栄養素が足りないという paradox(パラドックス)がよく起こります。
鉄が不足すれば、疲れやすく、抜け毛・冷えが起きやすくなる
亜鉛が不足すると、味覚が鈍くなり、さらに過食につながる
マグネシウムが不足すれば、便秘や不安感を引き起こすことも
しかも、こうした微量栄養素の吸収は年齢とともに落ちていくため、
“とっているつもり”では足りないことも多いのです。
🔶 鉄が足りないと…
疲れやすい、立ちくらみ、めまい
肌や粘膜が弱くなる(口内炎、肌荒れ)
抜け毛や爪のもろさ
不妊のリスク上昇(卵巣への酸素供給不足)
📌 鉄は、体内に酸素を運ぶ“ヘモグロビン”の材料。不足すると全身が“酸欠状態”に。
🔹 補える食品
→ レバー、赤身肉、かつお、あさり、ひじき、大豆製品、ほうれん草、
プルーン、アサイー
※ビタミンCと一緒に摂ると吸収率アップ(例:鉄+柑橘系)
🔶 マグネシウムが足りないと…
足がつる、筋肉のけいれん
便秘がちになる
イライラ、不安感、眠りが浅い
血圧が上がる
📌 神経の安定や筋肉の収縮、腸のリズムに関わる大事なミネラル。
🔹 補える食品
→ 玄米、アーモンド、ひじき、納豆、バナナ、豆腐、干しえび、
カカオ(高カカオチョコ)
※ストレスやカフェイン、加工食品の摂りすぎでも消耗します。
🔶 亜鉛が足りないと…
味がしにくい(味覚異常)
肌や髪がパサつく
免疫力が低下し、風邪をひきやすくなる
妊娠中は胎児の発育にも影響
📌 亜鉛は「細胞の修復と成長」に不可欠。粘膜や皮膚の再生に関わります。
🔹 補える食品
→ 牡蠣、豚レバー、牛肉、納豆、チーズ、アーモンド、卵黄、かぼちゃの種
※玄米やコーヒーの“フィチン酸”により吸収が阻害されることがあります。
🔶 カルシウムが足りないと…
骨や歯がもろくなる(骨粗しょう症)
足がつる、しびれる
イライラ・情緒不安定
動悸や不整脈、高血圧の原因に
📌 骨だけでなく、筋肉・神経・心臓の働きにも大きく関与。
🔹補える食品
→ いりこ、小魚、木綿豆腐、チーズ、ヨーグルト、小松菜、ひじき、
切り干し大根
※ビタミンDが不足すると吸収率が落ちるので、日光浴も意識しましょう。
微量栄養素を“奪う”習慣にも注意
コーヒー・紅茶・牛乳などの飲み方にも落とし穴があります。
1. 食後のコーヒー・紅茶
タンニンが鉄や亜鉛の吸収を阻害することがわかっています。特に女性は
鉄不足に陥りやすいため、食後30〜60分あけて飲むのが理想です。
2. 牛乳(カルシウム)と鉄・亜鉛の関係
牛乳に多く含まれるカルシウムは、鉄・マグネシウム・亜鉛の吸収を妨げるとされています(Zhou et al. Nutrition Research, 13(11), 1445–1456.2013)。
さらに、乳糖不耐症の人では、腸にガスがたまって腹部膨満や不快感の原因にもなります。
カルシウムは重要だが、摂るタイミングや体質によって注意が必要です。
📌「貧血対策で鉄分を摂っても効果を感じない…」という方は、
「何と一緒に」「いつ」食べているかも見直してみてください。
腸からの吸収が落ちている可能性も
「しっかり食べてるのに、なんだか不調が続く…」
そんなとき、見逃されがちなのが腸の“バリア機能”の低下です。
最近注目されているのが「リーキーガット(腸漏れ)症候群」。
医学的にはまだ議論の多い概念ですが、腸の粘膜が炎症などで緩み、
未消化の物質や毒素が体内に漏れ出すという状態です。
栄養の吸収がうまくいかない
アレルギーや慢性疲労、肌荒れ、自己免疫疾患と関連の可能性
IBS(過敏性腸症候群)ともオーバーラップする症状群が多い
📚 参考文献
リキーガットは腸のバリア機能が低下し、自己免疫疾患や慢性炎症と関連する可能性がある状態です。(Paray B.A. at al. Int J Mol Sci.2020;21(24):9770)
最近では「グルテン(小麦たんぱく)」が腸のバリア機能に影響を与えるという話題もあります。実際、セリアック病のように、小麦の摂取で腸が炎症を起こす病気も存在します。
ただし、こうした疾患はごく一部であり、多くの方にとって小麦は健康的な食事の一部でもあります。大切なのは、「同じ食品ばかりを繰り返しとらず、腸内環境に多様性をもたせること」。
甘い菓子パンや麺類中心の食生活が続いている方は、「たんぱく質や食物繊維が足りているか?」と振り返ってみると、体の声が見えてくるかもしれません。
📌 腸内環境の乱れが、“食べてるのに不調”の背景にあるかもしれません。
腸内環境を整えることは、「栄養を吸収する力」を取り戻す第一歩。
とくに鉄や亜鉛、マグネシウムは腸の健康がカギです。
“おだやかに吸収できる体”を育てよう
聡子さんは、以下のように食生活を見直しました。
朝食にゆで卵や納豆などのタンパク質を追加
昼はパスタをおにぎりに変え、副菜にひじき煮などを選ぶ
食後の飲み物を「麦茶」や「ルイボスティー」にチェンジ
夜はサプリメントで鉄と亜鉛を“医師の指導のもと”に補給
2ヶ月後、少しずつ体に変化が現れ始めました。
だるさが軽減し、髪にハリが出てきて、便秘が改善し、肌の調子も
見違えるほどにとてもよくなったのです。
「ふふふ。若さを取り戻した気がします!」と聡子さんには明るい笑顔が
溢れていました。
🏃♀️ 今日からできる3ステップ
① 主食だけで終わらせない
朝や昼に「パンだけ」「パスタだけ」になりがちな方は、卵・納豆・豆腐・チキンなど、タンパク質を1品追加してみましょう。鉄・亜鉛・マグネシウムの補給にもつながります。
② 食後のコーヒー・紅茶・牛乳を見直す
鉄や亜鉛の吸収を妨げるタンニン・カルシウム・カフェイン。食後すぐは控えめにして、麦茶やルイボスティーに変えると腸にもやさしいです。
③ お腹を整える発酵食品と食物繊維を加えよう
腸のバリアを守るには、味噌・ヨーグルト・ぬか漬けなどの発酵食品と、
野菜・海藻・きのこ・雑穀の組み合わせを意識してみて。まずは1日1回から始めましょう。
🌱 まとめ
体重だけで“栄養状態”は判断できません。“食べているのに不調”の背景には、かくれ栄養失調があるかもしれません。
微量栄養素を意識し、飲み物のタイミングや組み合わせも見直してみましょう。
大事なのは「何を食べているか」と「どう吸収できているか」です。
🐤ピコ「ただ食べてるだけでなく、食べ合わせも意識しようっと♪」
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