それでもドネアを応援する理由
堤聖也のしつこい終盤の攻めは、内山高志いわく「ゾンビ」と称されるが、ドニアのキャリアもまさにゾンビ。
いやゾンビと言うには失礼だろう。まるで不死鳥=フェニックスのように、「これまでか…」と終わりを予感させるたびに、再び甦り、その度に私は彼に心を奪われていくのだった。

「フィリピーノフラッシュ」と呼ばれていた頃の彼のファイトは、まさに閃光、まさに鮮烈。躍動感溢れるステップと、大太刀のような左フックは、同郷のパッキャオに負けず劣らずのセンセーションだった。
ダルチニアンの猛牛のような突進を左カウンター一閃で切り落としたフライ級時代。タフなシドレンコを血まみれに切り刻み、長谷川を倒したモンティエルのこめかみを打ち砕いたバンタム級時代、西岡のアメリカンドリームを右カウンターで絶ったスーパーバンタム時代。

フラッシュからサムライへ
しかしその後、リゴンドウの高次元ボクシングに攻め手を封印され、フェザー級ではウォータースのパワーに完敗し、快進撃はストップした。
ただ、リゴンドウ戦では、最終ラウンドに片目を潰されグローブで隠しながら執念の左フックを狙い、ウォータース戦では最後の反撃を仕掛けた所をフックをテンプルに喰らい、前のめりに倒れ込んだ。
その姿にこそファイターとしての執念、ドネアの真の魅力であるサムライのような精神性が浮かび上がり、私にとってはますます見逃せないファイターになった。

対モンスター、老兵は死なず
「私に合う階級ではなかった」
と、フェザー級から階級を落とし、バンタム級でまさかの復活劇。
そして名勝負となるWBSS決勝、井上尚弥戦を迎える。
2ラウンド、井上にとって初のクリーンヒットである左フックを狙い打ちし、終盤にボディで倒され、追い込まれながらも最後まで左フックを狙う。
現地で見ていた私は、井上の反撃よりも、ドネアのタフネスと執念に感動し「ドネア、すげえ!」とうなっていた。
最終ラウンドもラッシュを受けながら、わずかな余力で左フックをフルスイング。老兵はただでは死なず。あの名勝負を生んだのは、紛れもなくドネアのサムライ魂だった。
しかし第二戦では、完膚なきまで叩きのめされた。見えない右カウンターで沈み、左フックでグニャリとよろけ、ロープ際でとどめを打たれた。
沈みゆくその姿に「あ〜、ドネア〜!」と叫ぶ。
もちろん井上は好きだが、それ以上に私がドネアの大好きなのだと確信したシーンでもあった。
もうこれで終わりだろう。
疲れ果てリングから去るドネア。花道を歩くその前で誘導スタッフが転ぶ。それを咄嗟に助け起こそうとするドネア。いま自分がKO負けしたばかりだというのに…。
こういう時にこそ、本当の人格が現れる。
強さと優しさと賢さとユーモアを持つ漢、最強の侍ボクサー、ノニト・ドネア、本当にありがとう!
と当時は思ったのだが…
…物語はそこで終わっていなかった!
40歳を超えてもなお、彼は戦い続け、再びチャンスを掴んだのだ。神は見捨てていなかった。

12/17の堤聖也戦。
堤も素晴らしいハートとパーソナリティを持ったナイスガイだが、会場へ赴き、心からドネアを応援し、その勇姿を目に焼き付けていこうと思う。
どんな戦い様、生き様、あるいは死に様を見せてくれるのか?
今の彼の姿は「鬼滅の刃」の最後に登場する、最強の剣士「縁壱(よりいち)」の姿がダブる。
老兵となった縁壱は、いや43歳のドネアは、宿敵相手に最後のひと太刀を振るうことができるのだろうか?
見届けよう。

