彼女たちの見る世界【19/100】
31。
その数字を年齢として認識した時、人々は一体どういったイメージを持つのだろうか。
その年よりも上の人物は「働き盛り」と思うかもしれないし、年下の人は「未来の自分」と思うかもしれない。当事者であるわたしは、「そこそこ社会にも慣れてきたいい大人」というイメージで、それ以上でも以下でもない。
しかしそこに【女性】という性別、そして【既婚・未婚】という言葉が付くと、途端に世間の視野が狭くなる。「〇〇でなければならない」と自他共に縛られる感覚には、誰もが覚えがあるものだと思う。
今となっては「うるせえ、外野は黙っとけ」と喚くわたし自身も、その感覚は何度も何度も経験した。元号が令和になってるのにね。世界のアップデートは存外遅い。
そんな中、ふと二人の友人を思い出す。
大学の同級生である彼女たちは、ひとりひとり、自分の思うがままの選択をして、今を生きている。わたしはその二人がとびきりカッコよく、素敵だなと思っている。
「プロポーズって特別な日だった?」
彼女が意中の彼女に思いを伝えたいと連絡してきてくれたとき、蚊帳の外だというのにわたしは盛大に「最高!」と声を上げていた。
そう、何を隠そうわたしはハッピーエンド大好き女、人の幸せになりそうな話については全力で話を聞きたい人間だ。

Aからカミングアウトを受けたのは何時だったかは、正直なところ覚えていない。わたしの周りにはそれなりにLGBTQがいて、そんな話も普通にしてたからその時にでも彼女から聞いたのだと思う。
誰が好きだろうが嫌いだろうが、大切なのは目の前にいるのはその人個人の性格だ。相手方の人格が人間としてクズである場合以外は、どんな思考や考えを持っていたって問題ないと思っている。
だからこそ、Aからの相談は自分のことのように興奮したし、正式にOKをもらったと聞いたときは再び雄叫びを上げた。その後彼女たちは、彼女たちの大切な日にパートナーシップ制度を利用して正式なパートナーになった。
わたしの大好物、ハッピーエンドである。
我が家でお祝いのケーキをつつきながら、彼女たちのプロポーズの様子を見てニヤニヤしつつ、早く法的に彼女たちの関係が普通の男女の婚姻と同じようにならないものかと幾度と願った。
同じように好き同士で、プロポーズもして、生計を一緒に立ててるのに、性別の壁で「夫婦」の表記は「パートナー」になる。不思議だ。
いいじゃん「結婚」で。「ふうふ」で。扶養控除の対象で。
外部のわたしですらそう思うのだから、きっと内部の彼女たちはその数十倍も思うことがあるに違いない。どんな風に、今の世を捉えているのだろうか。
なにはともあれ、どうか早く、いろんなことが「当たり前」になりますように。そう今も願っている。
「会社辞めて、留学に行こうと思って」
お祝いのケーキをつつく数時間前、もうひとりの主人公Bは肉を焼きながらそう言った。Aのプロポーズ成功祝いのための会合だったはずなのに、そんな爆弾をぶち落とすなんて聞いてない。まさに青天の霹靂である。
「え、何時から?」
「年明けすぐにで、実は昨日が退職日だったんだよねえ」
「マ?かっちょよすぎんか!!Bさま?!!」
もうお分かりかと思うが、そう、このゴリラ(わたし)、嘘がつけない。思った言葉が口から出てしまう。
タン塩を焼きながら興奮を伝えたところ、女のわたしでも見惚れるような笑みを彼女は浮かべた。
Bのスペックは笑ってしまうぐらい高い。才色兼備で性格もよく努力家でもある。(わたしの周りにはそんな女性が多い)
そんな彼女から「留学」という言葉が出てきたら、自然と口から洩れる言葉は称賛に溢れたものになってしまう。
「年齢的にも最後のチャンスかなと思って」という彼女。英語を使う仕事をする中で、いろいろと思うところがあったらしく、留学へと考えが結びついたらしい。
当時はコロナワクチン接種三回目を政府が促しているぐらいの時期で、だからこそ余計に「日本の外に出る」という選択はすごく大きな決断のように思えた。知らない海外の土地に、未知のウイルスがある中で飛び立つ。
結婚式ですら開催を躊躇うわたしにとって、その決断はあまりにもかっこよく、そして羨ましいものだった。
予定日よりも少しだけズレて、彼女は海外へと旅立った。
インスタグラムのストーリーには毎日楽しそうな写真が並ぶ。マスクを外して笑う彼女は今日も今日とて美しい。
一年という期間の中で、彼女が日本に戻ってきたとき、わたしはどんな話を聞けるのか楽しみで仕方ない。
きらきら楽しい日々よ、続け
最愛の彼女と幸せに暮らす彼女、日本を離れて新しい世界を見る彼女、そして母になろうとするわたし。
三者三様、31歳のわたしたちにはいろいろな道がある。見えてるものもたぶん全然違うけれど、どうかその日々が楽しいものであってほしい。
また次の機会に会ったときに、みんながみんなたくさん楽しい思い出連れて会えますように。そう心から願っている。
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