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ラブホで働いていた時に一番怖かった話

※自分なりのオブラートで包んではいますが、ちゃんと汚い表現が出てくるので予めご了承ください


ラブホで働いていた時に一番怖かった話をしようと思う。

大学生の頃、まわりに誰もやってないし話のネタになるかなという不埒な理由でラブホテルの清掃のバイトに応募した。

面接に行くと、「若いから」という理由で即日採用されたし、
「明日から来て」と言われ、そのまま働くことになった。
まずこの時点で怖かった。
これから地下労働で働くわけじゃないよねこれ。バカでかい臼みたいなのを4、5人で回し押して門とか開ける役かな。

若いという理由で採用されたのも、初出勤してからなんとなく察した。
20代は自分しかいない。一番若くても30代前半のお姉さんが一人。
あとは、おばさんとおじいちゃんがスタメンだ。
そこに20代の自分が加わるので、この職場をサッカーのフォーメーションで表すなら「8-1-1」でこうなる。

DF DF DF DF
DF DF DF DF
  MF
  FW

そりゃ監督も喉から手が出るほど若い兄ちゃんが欲しくなるだろう。

そしてこれも怖かったのだが、全員紙タバコを吸ってた。(自分も吸っていたけど。)

2013年ぐらい。電子タバコも存在しない時代ではあったものの、こんだけ全員タバコを吸っているのもびっくりだった。

自分はメビウスのオプション、お姉さんはピアニッシモ。
おじいちゃん①はわかば、おじいちゃん②は赤ラーク。
おばさん①はセブンスター、おばさん②は中南海。だった。
中南海が一番怖い。紆余曲折あってたどり着いた先が中南海。死屍累々を越えていかないと中南海なんか吸わないだろ。と思って吸ってる芸能人調べたら出川哲朗と忌野清志郎が吸ってた。おもろいって。どちらもまさに今際の際を乗り越えてきてそう。

ラブホで働いていると話のネタになりそうなおもしろいことはそれなりにあった。
ローションが入っていたであろう2リットルのサイズのペットボトルが20本くらい散乱してて、バスタブを見るとタプタプにローションが溜まっていたり、
部屋の冷蔵庫を開けると肉そぼろがギッチギチに入ったタッパーが忘れ去られてて、一旦預かっておくか・・・ということで事務所で保管していたら、3時間後に男性が肉そぼろを取りに来たり、
一年ぐらい働いていると、廊下に漏れ出してくる喘ぎ声にもだんだん慣れてくるのだが、今日はなんかやたらと激しい喘ぎ声が聞こえるなー!と思って耳を澄ませてみると喘ぎ声ではなくUSENから流れてくるビヨンセの歌声の
「ッホーーーー!」だったり、
なんか思ってた話のネタではなかったが、普通に生きてたら経験できなさそうなことは起きてた。


で、働いていて一番怖かった話をします。

ラブホの清掃は文字通り、事後のお部屋を掃除するわけだが、
事後直後なところもあるので、部屋を開けた瞬間にまぁ臭い。
特に高確率で加齢臭が充満している。
固形?ってぐらい加齢臭がミッチミチに詰まっている感覚だった。
はじめはキツかったけど人とは慣れる生き物で、そんなに加齢臭にもそこまで抵抗感はなくなっていった。


ある時、部屋を開けると、
男性が絶頂に到達した際に射出される液体のあの「子孫繁栄の香り」が充満している。
そう、あの香り、というか匂い。
男性ならわかると思いますが、あの「子孫繁栄の香り」ってティッシュにくるまっていたとしても、ゴミ箱の上空だったり、近くで嗅がない限りで匂わないというか、そこまで匂いって充満しないじゃないですか。
現に今まで清掃してきた部屋も加齢臭や汗の匂いが充満していることはあっても、「子孫繁栄の香り」が充満していることはありえなかった。

つまりこの部屋、バリやばいってわけ。
キ〇タマが世界一デカい男性と営む作品をここで撮ってました!!って言われれば、あーね!って言えるぐらい子孫繁栄臭がすごい。

今まで嗅いだことのないレベルのどぎつい臭いに倒れそうになりながらも、部屋のドアを開けっぱなしにし、窓を全開にする。
そして、ファブリーズを一本使い切る勢いで部屋中に噴射した。

そんな必死の消臭作業をしていると、ふと視界に入ったのが、ベッドのそばに無造作に置かれた二つの大きな紙袋だった。

その紙袋に入っていたのは、
ボロボロというより、もはや切り刻まれたチェック柄のカッターシャツが3着。
そして、ところどころ紙ガムテープで補修された大人のおもちゃが5個だった。

・・・あのー、怖すぎます。

大人のおもちゃって、ここまで使い込むものなの?
終盤のゴーイング・メリー号ぐらいツギハギだらけで補強されているし、「もう頼むから船降りてくれ」とこちらから懇願するレベル。

そして、ベッドの方を見ると、そこにおいてあったのが、
めちゃくちゃ大きい布団圧縮袋だった。

どういう癖?それどういう癖なの?
大喜利?エロ大喜利これ?
状況が状況だけにイマジンが止まらなかった。

この部屋の状況でもう一個、怖い要素がひとつ。
宿泊じゃなくて休憩なんですよね。
短時間でこのボリューム、お腹いっぱいでは?
いやボリュームといっても何してたん?って話ではあるが、解決はしない。こんな脱出ゲームがあったら嫌すぎる。
キモいヒントが散りばめられて、謎を解き明かせ!!なんて言われてもスタッフにバツ印を手で作ってリタイアするね。

謎は深まるばかりだったが、考えていても仕方がない。

とりあえず掃除を進めていると、
今度はテーブルに「黒い液体」がこぼれているのを発見した。

若干粘着性がありそうなその黒い液体、恐る恐る嗅いでみると、
とんっっでもない濃い「子孫繁栄臭」だった。

「エンッ!!!」って叫んで鼻血を勢いよく噴出しながら倒れそうになった。
こんなの黒の教科書の挿絵でしかみたことないぜ…! そんなことを言ってもおかしくないぐらい、子孫繁栄臭がギュッッッッッと濃縮したような臭いがその液体から発されていた。

射出した液体を煮詰めに煮詰め、100倍濃縮としたような感じである。
ただなぜ黒いのかもわからない、もうすべてがこわい!!!!!なんやこの部屋!!!

つんざくような悪臭を放つ黒い液体。この部屋を子孫繁栄臭で充満させていた犯人は、どうやらこいつらしい。

なんだか、こうして書いている今でも「全部夢だったんじゃないか」と思ってしまうほど不可思議な体験なのだが、マジのマジにノンフィクションですし、この話にはまだ続きがある。

黒い液体を雑巾で拭き取り、ファブリーズをぶちまけ、さらに新しい雑巾で拭く。それでも、新しい雑巾にはまた黒い汚れが付く。

「さっきの拭き残しか」と思い、今度は別の面でもう一度拭く。それでも黒い。
さらに新品の雑巾を持ってきてファブリーズをかけて拭く。それでも、また黒い。
何枚雑巾を替えても、まるで机そのものが黒い液体を生み出しているかのように、延々と黒い汚れが付いてくるのだった。
3、4枚雑巾を替えたところでようやく黒い液体は拭き取れた。単に机が元々汚かったっていう汚れの取れ方では無かったのを覚えている。清掃パートナーのお姉さんもこの汚れの取れなさを見て関西弁でただ一言「なんなん」って言ってた。半ギレやん。

とりあえず、臭い以外の清掃はひと通り終え、あとは換気に望みを託し、部屋のドアを開けっぱなしにしたまま、ペアの人と一緒に下の階の清掃へ向かう。
しばらくして他の部屋の清掃も終わり、再び問題の部屋がある階へ戻ってきた。
すると、信じられない光景(というか臭い)が待っていた。

換気のために開け放ったドアから、あの子孫繁栄臭が廊下へと勢力を拡大し、フロア一帯があの臭いで充満していた。
最臭兵器すぎる。大友克洋先生の短編映画のことが脳裏に浮かびつつ、廊下にも、そして部屋にもファブリーズをかけまくる。
「おい!!ありったけのファブリーズをもってこい!」P&Gの社員さんでも言ったことないと思う。

それからも空気清浄機を持ち込んだり、定期的にファブリーズをかけたり、できる限りのことはした。
しかし、数時間経っても部屋に充満した子孫繁栄臭は一向に消えない。
やがて夕方になり、ほかの部屋はほぼ満室。このままでは、この問題の部屋も稼働させなければならない状況になった。

困り果てたスタッフ一同は、武蔵に似たコワモテの支配人のもとへ向かい、「まだ臭いんですが、どうしましょう」と相談した。

支配人は腕を組み、「うーん……」としばらく考え込む。
そして何かを閃いたように顔を上げ、こう言った。

「よし、その部屋で全員でタバコ吸おう」

いや、閃いたみたいな顔で言っていますけど、支配人も支配人である。

まぁ支配人がそう言うなら、
ということでタバコ吸っているスタッフ(=出社している全スタッフ)と支配人で、いまだバリバリに子孫繁栄臭がする部屋に向かい、そこで一斉に紙タバコを吸い出した。
ものの数秒で、部屋はタバコの煙で充満した。

「こんなんで臭い消えるんすかねー」とか談笑をしつつ、一本吸い終わり、もう一度清掃チェックを行い、部屋を出た。

その後、ほかの部屋の清掃を済ませ、30分ほど経ってから再び問題の部屋へ向かう。

恐る恐るドアを開け、臭いを嗅いでみると、


子孫繁栄臭が消えている!!!!!!


そこで、私は思った。

え、

タバコ、こわ!!!!!!!!!!!!!!!


あれだけこびりつき、何時間経っても消えなかった子孫繁栄臭が、タバコを吸っただけで跡形もなく消えた。

あの訳の分からない粘着性の黒い液体が放っていた、とんでもない悪臭。
それを、人が普段何気なく吸っているタバコの煙が打ち消してしまった。

この話で一番怖かったのは、黒い液体でも、布団圧縮袋でも、子孫繁栄臭でもない。

タバコだ。


タバコのパッケージには「健康を害します」と書かれているが、あの日ばかりは「子孫繁栄臭を消します」も追記したほうがいいと思った。

みんな、タバコが一番怖いんだから、やめたほうがいいよ。

そんなことを書きながら、自分は今日もアイコスの電源を入れるのであった。

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おたわ|サブカル・エッセイ チップをいただいた際はむせび泣いてます。 泣くだけではなく、むせび泣いてます。 チップのしがいがあることで定評があります。