「バオバブ戦記」第2話#創作大賞2024 #漫画原作部門
純白の少女は、ぱくりと一口、大蛇を一飲みしてしまった。
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「兄ちゃんもダイヤモンドの探索かい」
「うん、そのつもりだけど」
アナンシは小舟でオレンジ川を渡っている。
陽気な船頭は鼻歌交じりにオールをこぐ。
「命知らずだねえ。人食いの大蛇の話はもちろん知ってんだろ」
「蛇の精霊グローツラングだろ、知ってるさ」
「なら止めはしねえが、俺が向こう岸に送って帰ってきたやつは一人もいねえぞ。みんな大蛇に食われちまったに違いない」
あーおっかない、と話の内容とはそぐわない明るさで船頭は話す。
「それでも、僕にはどうしてもダイヤモンドが必要なんだ」
「そうかい。ならば俺は兄ちゃんが戻らなきゃ、弔いの歌でも歌ってやるよ。この川一帯に響き渡るようにな」
そう言って船頭はわざとらしく鼻歌を大きくした。
「あっ、そういや。ここいらの王様と村が協力して、グローツラングの討伐隊を結成したって話だったなあ。近いうちにあの人食い蛇も退治されちまうかもな」
「だったら急がないと」
(大蛇が討伐されれば、ダイヤモンドはすべて採掘されてしまうだろう)
アナンシは小舟を蹴ってひとっ飛び、向こう岸へと消えた。
「おうおう、元気なこった。死ぬんじゃねえぞ」
船頭は元来た道を引き返していった。
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「のうココナッツ、人だ・・・・・それも沢山の人がやってきたぞ」
「しゃしゃ、最近人はこんようになっておったからのう。パパもちょうど腹が減ってきたころじゃろう」
「ああ。腹が減って仕方のうて仕方のうて、こちらから出向いてやろう」
南アフリカのリスタフフェルト、オレンジ川の近くにあるといわれる大量のダイヤモンドが埋蔵されている底なしの洞窟。
二匹の白い蛇が光り輝く大量のダイヤモンドの前で、しゃしゃしゃしゃと高らかに笑い声を響かせた。
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「なんだ、この音。もしかして、討伐隊が」
アナンシがリスタフフェルトに足を踏み入れたのとほぼ同じタイミングで、地が揺れ、破裂音が轟いた。
アナンシは音のなる方へと急ぐ。
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「しゃしゃしゃしゃ、来おったか愚かな人間どもよ。一人残らずわしの胃袋に収めてやる」
グローツラングを討伐すべく、リスタフフェルトに送り込まれた数百を超える軍隊の前に、大蛇は洞窟より出でて対峙した。
「化物の声に耳を貸すな。我々の仕事を遂行するのみだ。やれ」
軍を率いる男は百戦錬磨なのだろう、目の前に現れた規格外の化物に怖気づくことなくそう指示した。
「シャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
大蛇が大きく口を開き、軍に突っ込んでいき、ブラックホールのように次々と人間を吸い込んでいく。
「臆するな、進め」
指揮官はなおも怯むことはない。
率いられる軍も、まるで恐怖など感じていないかのごとく、暗い闇に飲まれていく。
大蛇の腹の中から爆炎が轟いたのは、数百いた軍のほとんどが空腹の大蛇の胃袋に収められてしまった時だ。
「シャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
絶え間なく大蛇の体内で爆発が起こり、化物はのたうち回った。
「くそお。貴様ら、正気か。兵を爆薬代わりにしおったな」
爆発が止むころには、大蛇は体中が焼け焦げ、瀕死状態だ。
「化物が人間に正気を問うか。お前にとっては人間など食糧でしかないだろうに」
指揮官は畳みかけろ、と残った兵に指示を出す。
「どうだ、美味かったか私の愛しの兵たちは。今まで散々食らってきたんだ。その報いを受けろ」
「やはり、人間は愚かじゃ」
兵が大蛇に槍を突き立てていく。
「ここにいる兵はみな、貴様に大切な人を食われた者たちだ。復讐の炎は天にも届くだろう」
指揮官は大蛇の頭部にゆっくりと近づき、手のひらを天にかざした。
すると、そこに小さな火が生まれ、徐々に大きくなっていく。
「これにてグローツラング討伐完了だ」
「やめろっ」
突如現れた純白の少女が、指揮官の放った火の玉を丸のみにした。
「ココナッツ。どうしてきたんじゃ」
「だって、パパが……。パパがっ」
「ここは危険じゃ。早く行け。パパを置いていけ。もうパパは……」
「いやじゃ。わしにはパパしかおらんのじゃ」
純白の少女ココナッツは大蛇に駆け寄る。
「なぜ邪魔をするアルビノの少女? そいつは人食らいの化物だぞ」
「人間はみなわしの身体を欲しがって殺そうとする。それは生みの親も例外にはならん……。殺されかけていたわしを助けてくれたのがパパじゃ」
「アルビノの宿命か。にわかには信じがたいが、その真っ白な身体を食せば不老不死が手に入るようだな。思わぬ副産物が手に入りそうだ」
やるぞ。指揮官の合図で役目を終えていた兵に士気が戻る。
「シャーーーーーーーーーーーーー」
最後の力を振り絞った大蛇の咆哮。
指揮官と兵があっけにとられている隙に、大蛇はココナッツを連れてその場を離れた。
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「ココナッツ、いいか。わしはもう長くない」
「いやじゃ。パパがいなくなったら、わしはどうやって生きればいいんじゃ」
「大丈夫じゃ。パパはずっとココナッツと一緒じゃ」
「でも……」
「わしを食え。ココナッツ。そしたらわしとお前はずっと一緒じゃろう」
「パパッ。わかった。私の体を食べて。そうすれば」
「いやじゃ。お前を食べてまで生きたくないわい。大丈夫じゃ。ココナッツなら、わしがいなくても生きていける。世界は広いぞ。お前を連れ出してやらなかったことだけが心残りじゃ」
「わかったよ。パパ」
「いい子じゃ。お前の父親でいれて幸せじゃったぞ。愛しのココナッツ」
「わしもじゃ。パパの娘でよかった。わしのパパは、パパだけじゃ」
純白の少女は、ぱくりと一口、大蛇を一飲みしてしまった。
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「さあ、第二章。アルビノ狩りの始まりだ。グローツラングはあの小さな体の中にいるぞ」
やれ。指揮官の合図と共に一斉に兵たちがココナッツに向けて火を放つ。
「グローツラングは大蛇って聞いてたけど、こんなに可愛い女の子だったの」
アナンシは大剣を一振り。火は一瞬にしてかき消えた。
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第2話完。
