「休んでください」と言う側の、休み方

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患者さんには、よく言う。
「無理しすぎないでくださいね」
「今日は早めに休んでください」
「ちゃんと眠れてますか」
診察室では、わりと自然に出てくる言葉なのに、
自分に向けるとなると、急にむずかしくなる。
休んだほうがいいことは、わかっている。
でも、まだ返していない連絡がある。
明日のカルテも気になる。
あの患者さんの検査結果も、頭のすみで光っている。
身体は診察室を出たのに、
気持ちだけ、まだ白衣を着たままだった。
その日、温泉街に着いたのは夕方だった。
湯けむりの向こうで、
旅館の灯りがぽつぽつつき始めていた。
スマホと時計をロッカーに置いたとき、
少しだけ、自分の外側にあったものを
置いてこられた気がした。
湯に肩まで沈む。
何かが劇的に解決したわけではない。
疲れが全部消えたわけでもない。
ただ、湯気の中で、
ずっと張っていた糸が
少しだけゆるんだ。
患者さんにかけていた言葉を、
ようやく自分にも渡せた気がした。
休むことは、
何もしないことではなくて、
自分の回転を少し落としてあげることなのかもしれない。
人を支えるためにも、
自分を戻す時間がいる。
そう思えた夜だった。
