【保存版】10年後、当たり前になる技術10選 ─現役研究職が「来る」「まだ怪しい」を正直に選んだ─
ー展示会を歩き回った研究職が、「来る」と「怪しい」を正直に仕分けたー
情報を止めたら、取り残される。
これは、化学メーカーで研究開発職5年目の私が、現場で染み付いた感覚です。
先端材料の世界では、目を離した隙にあっという間に置いていかれます。新しい素材、新しい製法、新しい競合——展示会に行くたびに、「あ、もうここまで来ていたのか」と気づかされる場面が何度もありました。
だからこそ、今の私には「怪しい技術を怪しいと言える」という強みがあると思っています。
10年後の技術を語る記事は、ネット上に山ほどあります。でも正直に「まだ怪しい」と言っている記事は、ほとんどない。予測が外れるのが怖いのか、難しいのか——理由はわかりませんが、読んでいてずっとモヤモヤしていました。
だから書くことにしました。「来る」だけじゃなく「まだ怪しい」も、正直に。
技術10選を読む前に ─「正直な約束」─
この記事の選定基準は3つです。
① 企業や政府の具体的なロードマップが出ている
② 展示会・顧客ヒアリングなどで「現場の手応え」を確認した
③ 研究職として「現場で使われる絵が描ける」
2023年、世界中を騒がせた「常温超伝導体(LK-99)」というものがありました。「史上初の常温常圧超伝導を発見」と報じられ、SNSで爆発的に拡散された。でも再現実験は世界中で失敗。今もネット上に関連記事は残っています。
(あの騒動のあと、自分なりに決めました。一次情報を持てる分野だけ書く、と。)
常温超伝導は、この記事には入れていません。
「来る」確実組① ─エネルギーと素材の3技術─
この章では、2035年までに確実に普及が進むエネルギー・素材系の3技術を紹介します。
全固体電池
(初学者向け一言:電池の内部を「液体」から「固体」に変えた次世代電池。液漏れがなく充電が速くて安全。電気自動車の進化を根本から変える技術です。)
トヨタと出光興産が、2027〜2028年の商用化・2030年の本格量産を公式に発表しています。固体電解質の量産技術を確立するための工場建設も始まっており、国が支援を入れたサプライチェーン構築が動いている。
化学メーカーの研究職として見ていると、固体電解質の材料開発競争がすでに相当な熱を帯びています。「この電池が当たり前になる」のは、私の感覚では時間の問題です。

ペロブスカイト太陽電池
(初学者向け一言:フィルム状に「塗って作れる」軽くて薄い太陽電池。ビルの外壁や曲面に貼れるのが従来の太陽電池との最大の違い。日本発の発明です。)
積水化学工業が2025年から量産を開始しており、2030年には年産1GWの体制構築を計画。国が約3,145億円の支援を決定しました。富士経済の予測では、2035年に世界市場が1兆円規模に達するとされています。
まだ変換効率や耐久性に課題がある——これも正直に書いておきます。それでも「普及の勢い」は本物です。

次世代パワー半導体(SiC・GaN)
(初学者向け一言:電気を変換するときのロスを大幅に減らせる半導体素材。シリコンの後継にあたる材料で、EVの急速充電器などに今まさに採用が広がっています。)
「2035年に当たり前になる」ではなく、「2026年時点で、すでに普及しはじめている」のがこの技術です。SiCの熱伝導率はシリコンの3倍以上。放熱が得意で、高温・高電圧の環境でも安定して動く。
来るというより、もう来ています。

「来る」確実組② ─通信・デバイスの3技術─
この章では、「モノがつながる世界」を支える通信・デバイス系の3技術を紹介します。
6G通信(そして、低誘電材料)
(初学者向け一言:5Gの次の世代の通信規格。2030年頃の商用化を目指していて、スマホだけでなく工場・病院・自動運転など「社会インフラそのもの」になると予測されています。)
総務省が「2030年頃の商用化」を公式ロードマップで明言しており、NTTドコモ等の国内キャリアも積極的に研究開発を進めています。
ここで少し、専門的な話をさせてください。
私は仕事で、この「6G通信」を支える材料を扱っています。「低誘電材料」と呼ばれるものです。
(「低誘電」って何?という方へ補足:電波は高周波になるほど、通過する材料の中で信号が減衰しやすくなります。この「信号のロス」を小さくするために、誘電率(Dk)と誘電正接(Df)という値が低い材料が必要になります。Dk・Dfが低いほど「信号を劣化させにくい、優秀な材料」という意味です。スマートフォンの内部配線基板や6G基地局の基板に使われます。)


参考:デクセリアルズ株式会社「回路基板の絶縁材料に求められる低誘電特性 - TECH TIMES」
東京ビッグサイトをはじめ、nano tech・高機能素材week・ネプコン・新機能素材展など、年間を通じて複数の展示会に足を運んでいます。顧客ヒアリングを重ねていると、求められる材料の性能ハードルが年々上がり続けているのを肌で感じます。
「他社材では欲しい特性のものはなかったが、御社ならできるのではないか。」
この一言が、新しいテーマ立ち上げのきっかけになったことが何度もあります。先端材料の世界では、1kgあたり数万円、なかには10万円を超えるものも存在します。それだけの価格でも開発投資が行われているということは、各社がそれだけ本気だということ。6G対応材料の競争は、研究職の目線から見ても「相当に熱い」分野のひとつです。

AIネイティブデバイス(PLAUD NOTEなど)
(初学者向け一言:録音するだけで、AIが自動で文字に起こして要約・議事録まで作ってくれるデバイス。昔のボイスレコーダーとは、できることがまったく違います。)
私自身、PLAUD NOTEというAI録音機を使っています。展示会のセミナーや社内会議の議事録作成に活用していて(上司の許可を得た上で)、録音から文字起こし・議事録化まで、ひとつのツール内で完結します。
使う前は2時間近くかけていた議事録作成が、30分程度まで縮まりました。
(この変化、体験してみないとわかりにくいんですが「仕事のやり方が変わった」と感じるレベルです。)
2023年の発売から累計100万台以上を出荷。GPT・Claude・Geminiなど最新AIを搭載し、発言者識別機能や3,000種類以上の要約テンプレートも使えます。このカテゴリーは、10年後には完全に「当たり前」になっている技術だと確信しています。

量子コンピュータ
(初学者向け一言:従来のコンピュータが「0か1か」で計算するのに対し、「0と1を同時に扱う」量子力学の原理を応用した計算機。特定の計算を圧倒的に速く処理できます。)
ただし、ここは正直に書かせてください。
「スマホのように誰もが使う」ようになるのは、10年後でも難しいと思っています。
現実的な予測は「2030年代に、企業・研究機関がクラウド経由で使える計算インフラとして普及する」というものです。IBMが2026年に実用的な量子優位性の達成を目標に掲げており、創薬・素材開発での専門的な活用が2030年代に本格化するという見方が有力です。
化学系研究職にとっては「新素材の分子シミュレーションが桁違いに速くなる」という点で、じわじわと無視できなくなる技術のひとつです。
「来る」確実組③ ─ロボット・バイオ・素材の3技術─
この章では、製造業・化学産業の構造を変えうる3技術を紹介します。
ヒューマノイドロボット
(初学者向け一言:人型ロボットのこと。これまでの工場ロボットは「決まった動作しかできない」ものでしたが、人間と同じ道具・動線で複雑な作業ができるロボットの開発が急加速しています。)
Tesla Optimus・Figure 02・Boston Dynamicsなどが実証を加速させており、製造業への本格投入は2028〜2030年前後が見込まれています。深刻な人手不足とAIの自律化が掛け合わさって、2035年には工場の景色がかなり変わっていると思います。
合成生物学(バイオものづくり)
(初学者向け一言:遺伝子を設計した微生物に、欲しい素材を「作らせる」製造技術。石油を使わずに、プラスチックや繊維・化学品を製造できます。)
国内では、スパイバー(山形・タイに工場稼働)がクモの糸タンパク質の量産に成功し、The North Faceなど海外ブランドとの協業が進んでいます。脱石油という大きなトレンドの中で、化学業界の視点から見ると「じわじわと市場の中心に入ってくる技術」だと感じています。
ダイヤモンド(放熱材料・量子センサー)
(初学者向け一言:天然・人工ダイヤモンドのすさまじい熱伝導率——シリコンの約14倍——を、電子部品の熱を逃がす素材として活用する技術。半導体そのものより「熱管理素材」としての実用化が現実的です。)
1年前の展示会でのヒアリングでは「まだ研究段階」という回答でした。それが、ここ数ヶ月の展示会では充填材(フィラー:材料に混ぜ込んで特性を高める粉体成分のこと)用途での開発品として出展されるようになってきました。
私は元々、鉱石が好きで多少の知識があります。だから担当分野外のダイヤモンドブースにも立ち寄って、「この特性はどう活かせるのか」「硬度が高いことによる加工の難しさはどう解決するのか」を自分から聞いてみました。加工性の課題は現実としてある。でも特性は圧倒的です。
(担当外でも、気になったブースには積極的に声をかけるようにしています。それが後から自分の分野に返ってくることがある、と経験的に感じているので。)
AIデータセンターの発熱密度が急上昇している今、放熱・冷却材料としての需要はこれから一気に高まると見ています。

正直に言う。「まだ怪しい」と感じる技術 ─空飛ぶクルマ─
この章が、この記事を書きたかった一番の理由かもしれません。
東京ビッグサイトで、実機を見ました。EHang(イーハン)というメーカーのeVTOLです。
(eVTOLとは:Electric Vertical Take-Off and Landingの略。電気で動き、滑走路なしで垂直に離着陸できる乗り物。飛行機・ヘリコプター・ドローンの技術を組み合わせたものです。)
実機は思ったより小さくて、思ったよりリアルでした。「本当にこれが空を飛ぶのか」という驚きと、「本当に10年後の街に当たり前に普及しているのか」という疑問が、同時に浮かびました。

ヘリコプターと比べたメリットは、確かにあります。
電動なので騒音が少ない
滑走路が不要で、ビルの屋上などからも発着できる
自動操縦を想定しているため操縦士が不要で運航コストが安い
整備がシンプルで維持費が安い
CO2を排出しない
でも、正直に言います。10年後に「当たり前」になるかというと、私はまだ懐疑的です。
理由は2つ。
ひとつは、EVや自動運転でさえまだ発展途上だということ。地上の移動の安全基準・法整備でさえ時間がかかっているのに、空の交通ルール(航路・高度・空の交差点の設計)と機体の安全基準が10年で整うか——というリアルな疑問があります。
もうひとつは、技術が来るかどうかと「当たり前になるかどうか」は別の話だということ。技術自体が実現しても、インフラと法制度が追いつかなければ日常には入ってこない。
(これは、空飛ぶクルマを否定しているわけじゃないです。展示会でリアルに実物を見たからこそ、「すごいとは思う。でも10年で"当たり前"は難しい」と正直に感じた話です。)
情報を止めたら、取り残される
10技術を選びながら、改めて確信したことがあります。
先端材料の研究開発現場では、目を離した隙にあっという間に置いていかれます。文字情報のアップデートも大切ですが、展示会やセミナーに足を運んで、分野の第一人者から一次情報を直接拾いに行くことの価値は、比べものにならないくらい大きい。
私が開発テーマを立ち上げるとき、一番役に立った情報源は、論文でも特許でもなく「顧客の生の声」でした。
「他社材では欲しい特性のものはなかったが、御社ならできるのではないか。」
その一言が、新しいテーマの出発点になったことが何度もあります。
この記事で紹介した10技術は、今後も動き続けます。「来る」と書いた技術が急加速するかもしれないし、「まだ怪しい」が覆るかもしれない。
だからこそ、情報を止めないことだけが、10年後も自分のスキルを陳腐化させないための、いちばん地味で確実な手段だと思っています。
情報を止めたら、取り残される。
それだけは、10年後も変わらない。
💬 今回の10技術の中で「これは絶対来る」「これは怪しい」と感じたものがあれば、あなたの業界目線のコメントをぜひ教えてください。
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