Islandman初来日インタビュー / ネオ・ターキッシュ・サイケデリアとは? トルコの瞑想的でダンサブルなサウンドの秘密に迫る
2025年、筆者は友人からアイランドマン(Islandman)というバンドを教えてもらい、一瞬でそのサウンドの虜になった。
昨今、日本でも高い人気を誇る、クルアンビンやグラス・ビームス、イン・インなどに代表されるような、民族的でダンサブル、ファンキーなダンスミュージック。
しかもアイランドマンは、そのメロディのスケールが独特だった。クルアンビンやグラス・ビームスなどとはまた違う民族的な――彼らの音楽が、別の国の音楽をルーツにしていることは明らかだった。
聞けば、トルコはイスタンブールのバンドだという。2018年にモントルー・ジャズ・タレント・アワードを受賞しており、2025年にモントルー・ジャズ・フェスティバルに再出演予定。
トルコ、アナトリア地方の音楽をルーツに持つ、ネオ・ターキッシュ・サイケデリアというジャンルのバンドだというのだ。
なるほど、だから聞き慣れない魅力的なサウンドなのか――と感銘を受けていたら、なんとこのタイミングで彼らの初来日ツアーが組まれるという。
そのことをSNSで発信していたら彼らのチームからコンタクトがあり、急遽、その初来日ツアーの初日、ライブ直前にリーダーのトルガ・ビュユク(Tolga Böyük)さんにインタビューを行うことができた。

今回は彼らのサウンドのルーツから、最新アルバム『Island5』についても、バンドの背景についての話をたっぷりと聞くことができた。トルコ、イスタンブールの音楽シーンに関する貴重なインタビューになったはずである。ぜひ最後までお楽しみいただきたい。
――アイランドマンはどのようにスタートしたのでしょう?
2016年に僕のソロ・プロジェクトとして始まった。大学を卒業したあと、実家に帰って作曲をスタートしたんだ。数曲を作ってSoundCloudにアップして、いつしかバンドの形態になっていったんだよ。
――では、バンドメンバーについて教えてください。

写真右から、トルガさん、エラルプさん、エルデムさん
僕はトルガ・ビュユク(Tolga Böyük)。僕がバンドのプロデュースをして、ギターとシンセサイザー、そしてサズ(トルコの弦楽器。詳しくは後述)をプレイしている。
ドラマーはエラルプ・ギュヴェン(Eralp Güven)、僕らは彼をエロス(Eros)と呼んでいる。
ギターはエルデム・バシェル(Erdem Başer)だ。
――それぞれ皆さん、どんな音楽に影響を受けているんですか?
僕はドイツのクラウトロックのバンド、CANにとても大きな影響を受けている。
他にも、バルシュ・マンチョ(Barış Manço)とか、
ジェム・カラジャ(Cem Karaca)からも影響を受けているね。
(筆者注:バルシュ・マンチョとジェム・カラジャは、どちらもトルコ、アナトリアのミュージシャン。トルコの民族音楽とロックなどを融合した、アナトリアン・ロックというジャンルの第一人者)
ドラムのエラルプは、ラッシュ(Rush)がフェイバリットだ。ギターのエルデムは、ビートルズやレディオヘッドが大好きだね。
――なるほど、ビートルズやレディオヘッドも影響しているんですね。
実はそうなんだ。でも、インスピレーションの源はもちろん、トルコの1970年代の音楽だと思う。それらはメンバーみんなにとって共通の、大きなインスピレーションになっているんだ。
――ありがとうございます。その、インスピレーション元になっているトルコの音楽について、もっと教えていただいてもいいでしょうか?
もちろん。僕は7歳のときにミュージックスクールに通い始めた。トルコのサズを教えるスクールだった。そこでたくさんのトルコの伝統音楽を聴いて育ったんだ。
例えばアシュク・ヴェイセル(Aşık Veysel)。50年代のトルコのサズ奏者で、アイランドマンでは彼の曲「Kara Toprak」をカヴァーして歌っている。彼はとても伝統的なプレイヤーで、詩人のようにひとりで演奏して歌う人なんだ。僕にとても大きな影響を与えた人物だ。
彼の歌ははいつも、自然をモチーフにしているんだ。自然を通して、人間や人生について語っている。彼は生まれつき目が見えなかったので、彼の曲、彼の歌詞はとても深い。彼の曲では生と死、友情、愛など――そういった根源的なものについて歌うんだ。
他にも、さっきも挙げたバルシュ・マンチョ(Barış Manço)や、モゴッラル(Moğollar)、
セルダ・バージャン(Selda Bağcan)など。これらは1970年代のトルコの音楽だね。
そのあと、イスタンブール(トルコ最大の都市)にとても良い音楽シーンが生まれて、たとえばババ・ズラ(Baba Zula) のようなバンドがいた。ババ・ズラは1990年代以降のバンドで、今も活動している。彼らも僕たちにとても大きな影響を与えているね。なぜなら、電子音楽とトルコ音楽をつないで、とても素晴らしいフュージョンを生み出しているからだ。
――アイランドマンではそういったトルコの音楽と、現代的なダンスビートを融合させていると思います。これはどうやって生まれたのでしょう?
それは、ドイツのフュージョン・フェスティバルというフェスで受けた影響から来ているんだ。
あれは本当に特別なフェスだった。広告もなく、ブランドもスポンサーもついていないんだ。それでも7万人が集まってきて、しかもセキュリティすらいない。
5日間、20ほどのステージで音楽がノンストップに続く、まさに音楽だけが支配する世界のようだった。僕は朝の5時ごろ、砂に覆われたステージに立っていたんだ。ゆっくりとしたダウンテンポの音楽が静かに流れていて――その瞬間こそが、まさにインスピレーションの源だった。
それで僕も「みんなが踊れる音楽を作りたい」と思ったんだけど、その時のように速いテンポじゃなくて、もっとゆっくり、アフターパーティーの雰囲気のような感じにしたかった。
そして僕はずっとサズを弾いてきたし、トルコの音楽やメロディに親しんできた。だから作曲するときは自然とそれが出てくるんだ。つまり、すべてが自然に起きたことなんだよ。
自分のよく知っているメロディを使って、ダンスミュージックを作りたかった。だから、そのメロディをエレクトロニックなビートの中に入れたんだ。
そうして生まれたのが、アイランドマンだった。
――なるほど。少し話が逸れますが、さっきから名前が出てきている、サズという楽器について教えてもらってもいいですか?
もちろん。サズ(Saz)はトルコの伝統的な弦楽器だ。バーラマ(Bağlama)とも呼ばれている。トルコ音楽ではポピュラーな楽器だよ。

僕はアイランドマンではサズとギターがミックスしたような楽器、チャーラマ(Çağlama)を使っている。これはサズと違ってエレクトリックなんだ。
ちなみに、サズもチャーラマもマイクロトーナル(微分音が出る楽器)なんだよ。
――そうなんですね!だからあのような民族的な響きになるんですね。

――ちなみに、エレクトロニックなビートの影響元もお伺いしてもいいですか?
それについては、ドイツのエム・ラックス(M RUX)や、DJたちの影響がある。DJ マーセル(Marcelle)や DJ フォグ・プマ(Fog Puma)などだね。
――アイランドマンのジャンルはネオ・ターキッシュ・サイケデリア(Neo-Turkish Psychedelia)だということですが、これはトルガさんが命名したのですか?
そうだね。なぜなら、これは新しいシーンだと思うから。1970年代にはトルコのサイケデリック音楽があって、現代にそれをカバーするバンドもいる中で、僕たちはそれを継承しながら違うことをやっている。
僕たちはもっと実験的で、この音楽の未来がどんな形になり得るのかを探している。何ができるのか? 何を加えられるのか? もっと即興的に、もっと自由に発展させていきたいと思っているんだ。
――ちなみに、サイケデリアとはどういう意味ですか?
それは、1970年代のサイケデリック・ロックからインスピレーションを受けた音楽だね。でも今の自分にとっては、もっと「超越的な精神状態」に近い意味なんだよ。
つまり、音楽に身を委ねられるような心の状態というか、音に合わせて自分が動いていく――まるでトランス状態のような感覚。音が自分の内側に入ってくるような、そんな体験ができる音楽。僕にとって、それこそが「音楽とひとつになる」という意味なんだ。
――なるほど。他にアイランドマンのようなバンド、例えばネオ・ターキッシュ・サイケデリアにあたるようなバンドはトルコにいるのでしょうか?
そうだね、いくつかアーティストの名前は挙げられる。でもそれは、イスタンブールの音楽シーンと呼んでもいいかもしれない。トルコ全体というより、イスタンブールが、このジャンルの中心だと思う。
アーティストを挙げると、ヘイ・ダグラス(Hey! Douglas)、
ガイ・ス・アクヨル(Gaye Su Akyol)、
アイユカ(Ayyuka)などだね。
――ありがとうございます。アイランドマンで演奏されているメロディ、スケールはとてもクールだと思うのですが、これがトルコ、アナトリアの音楽で使われているスケールなのでしょうか?
その通り。アナトリアの音楽はメロディがとても豊かなんだ。なぜなら、ほとんどが単旋律(モノフォニック)の音楽だから。
つまり、西洋音楽のように和声で作られているわけではなく、単音のメロディを重視する、東洋的な音楽なんだ。尺八とか、日本の伝統音楽もそうだよね?
だからこそ、すべてがメロディを中心とした音楽で、そこにとても深い豊かさがある。僕はそうしたメロディを使うのが好きなんだ。
自分で書くメロディは、それはアナトリア音楽のように、いわば僕たちのルーツ・ミュージックの延長線上にあるものとして書いているんだ。
――ちなみに、ライブではベース・プレイヤーが参加せず、打ち込みのベースを鳴らしていましたね。ベーシストがいない編成は珍しいと思ったのですが、これはなぜなのでしょうか?
そうだね。僕たちはトリオで、しかももう長年の友人同士だから、新しいメンバーを入れるのはなかなか難しい。いつかベーシストを迎えるかもしれないけれど、今のところは僕がPCをベーシスト代わりに使っている。でも、僕たちは電子的なサウンドが好きで、打ち込みを使うことでよりダンス寄りの音にしたいという意味もあるんだ。
それと、最新のアルバム『Island5』では、実際のベースもたくさん使っている。それは僕が弾いているよ。ライブでもキーボードを弾いていないときは、僕がベースを弾くこともある。
将来的には、ベース・プレイヤーを1人、キーボード・プレイヤーをもう1人入れるかもしれない。でも今はツアーが多くて、コストもかかる。だから現状ではこの形がいちばん動きやすいんだ。この編成なら、世界中どこへでも行けるし――今回のように、日本にもね。
――なるほど、確かにコンパクトな編成であることは素晴らしいですね。作曲はトルガさんがメインで?
前のアルバムでは、すべて自分ひとりで作っていた。PCで作曲して、録ってはやり直し、という感じでね。
でも最新アルバムでは僕たちはスタジオに集まって、一緒にジャム・セッションで作曲した。すべての演奏を録音して、ゆっくり、ゆっくり積み上げていったんだ。全員で一緒に演奏して作り上げたアルバムで、とても楽しかった。
なぜかというと、もっとアルバムにライブ感を加えたかったんだ。みんなで自然に一緒に演奏できるような、バンドとしてのサウンドでね。だから一緒にセッションで作っていったんだ。
――ちなみに作曲、サウンドのゴールはどこにありますか? リスナーとどういう状態を共有したいと思っているのでしょう?
僕は、音楽が自分を瞑想のような状態――あるいはトランスの意識状態へと導いてくれるときが本当に好きなんだ。そういうとき、心がとても穏やかで平和になる。
だから自分が音楽を作るときは、聴く人にもその感覚を与えたいと思っている。穏やかで瞑想的で、トランスのような心の状態――それを音で共有したいんだ。そしてもちろん聴いた人々が動き、踊り、グルーヴを感じてほしい。
それが僕の目指していることなんだ。
――ありがとうございました。最後に、日本のファンへメッセージをお願いします!
僕たちは日本が大好きなんだ。日本の文化も、人々も、すべてが本当に大好きなんだよ。だから、ここに来られて本当にワクワクしている。
今回の初来日ツアーはとても良いスタートだと思うし、また必ず戻ってきたいと思っている。本当にありがとう!

Islandman初来日ツアーはただいま開催中!
11/7は名古屋、
11/9に京都、
11/12に大阪、
11/14に横浜、同11/14深夜に下北沢、
11/15にラストが浜松町でライブです。
チケットはこちらから👇
◆インタビュー/著者◆
Dr.ファンクシッテルー

宇宙からやってきたファンク博士。「ファンカロジー(Funkalogy)」を集めて宇宙船を直すため、ファンクバンド「KINZTO」で活動。「KINZTO」と並行して、音楽ライターとしても活動しています。
■バンド公認のVulfpeckファンブック■
■ファンクの歴史■
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