預金封鎖より怖い、「見えない税金」の話
いつも有益な情報発信ありがとうございます。備蓄、防犯、資産防衛、メンタルヘルスなど、とても助けられています。 私がお伺いしたいのは、預金封鎖や財産税への対策です。金現物を買おうとしましたが、購入には本人確認書類の提示が必要なことが分かり、200万未満の場合は税務署に連絡されなかったとしても、取引業者の記録から封鎖時には接収対象になるリスクがあるのではと思いましたが、papaさんはいかがお考えでしょうか。 また、封鎖時に1番安全な対策の1つは海外の銀行口座に預金することかと思いましたが、簡単には海外に口座を作れなさそうと思いました。(まだちゃんと調べてないのですが。。)そうなると次に安全と思ったのはドル現物の保持です。現時点ではドルは少額でよいとおっしゃってると思います。預金封鎖に至るには段階があるとのことだったので、すぐに封鎖が迫ってないからとのお考えと思いますが、封鎖のリスクが迫ってきて海外口座を持ってなかった場合は、資産を守るためにはドル現金を持つしかないのでしょうか。NISAを含むほとんどの資産をドル現金にすると少ない額ではなくなり、それを自宅保管するのも多大なリスクだと感じてます。BTCにはさすがに一部しか入れられないし、どうしてよいか分からず右往左往する毎日です。 季節の変わり目で気温の変化が大きいので、体調崩されないようお身体ご自愛ください。
ご丁寧なメッセージ、そしていつも読んでくださっていること、ありがとうございます。
いただいた問いは、とても本質的です。そして「預金封鎖対策」として世に出回る話の中で、一番混乱しやすい点が、ほとんど全部含まれています。
順に解きほぐしていきます。
最初に、土台になる整理を一つ。
心配の対象を、ごちゃ混ぜにせず、三つに分けてみてください。
一つめは「預金封鎖」——銀行が止まって、お金を動かせなくなること。
二つめは「円安・インフレ」——円の価値がじわじわ下がって、同じお金で買えるものが減っていくこと。
三つめが「財産税」——持っている財産の合計に課税されること。
この三つは、起きる確率も、効く備えも、まるで違います。
世の中の対策論は、これを「金を買え、ドルを持て」に一緒くたにしてしまっている。でもそれは多くの場合、貯める側ではなく、金を売る側に都合のいい話です。
この区別を持ったうえで、ご質問の一つずつに。
金(ゴールド)について。
購入時に本人確認を求められるのはご指摘の通りです。
ただ、税務署に記録(支払調書)が回るのは、原則として200万円を超えて"売った"ときで、"買った"こと自体で記録が出るわけではありません。
そして「業者の記録が残るから、封鎖のときに取り上げられるのでは」という不安。ここは少し落ち着いて見たほうがいいと思っています。1946年の封鎖でも、国が購入記録をたどって個人の家から金を一軒ずつ回収した、という事実はありません。凍結されたのは銀行預金です。仮に国が個人の金にまで手を伸ばす段階なら、その手前で、預金や株という、はるかに簡単に押さえられる資産をすべて押さえている世界です。金が"記録に残るかどうか"は、その世界ではもう決め手になりません。だから金を持つ意味は「隠せるから」ではなく、「銀行という仕組みの外にあって、お金そのものが揺らいでも価値が残るから」。
その役割は、買った記録が残っても損なわれません。堂々と買って大丈夫です。
海外口座について。
まず現実問題として、いまは日本に住む個人が海外に口座を作ること自体が難しくなっています。そしてもう一つ大事なのは、たとえ作れても"隠す"ことはできない、という点です。海外の銀行は、日本人の口座残高や利息を日本の税務当局へ自動で報告する仕組み(CRSと呼ばれます)の中にあります。だから、財産の合計にかける税からは隠れられない。海外口座の値打ちは"隠せること"ではなく、いざ封鎖が起きたときに"そちらのお金は使える"というアクセスのしやすさにあります。もし作るなら、危機が来てからでは送金そのものが規制で止められかねないので、平時のうちに、というのはおっしゃる通りです。
ドル現金について。ここは、役割を二つに分けると、あなたの怖さの正体が見えます。
ドルには、別々の二つの仕事があります。一つは"非常用の現金"——銀行が止まったときに、手元で使える外貨。これは、金と同じ「非常持ち出しの一枚」として、ごく少額だけ持つなら理にかなっています。もう一つは"円安への備え"——ある程度まとまった額を、円以外で持っておく仕事。こちらは、ドル札ではなく、銀行の外貨預金や、NISAの中の外国のファンドで持つべきものです。あなたが「NISA含め大半をドル札に」と聞いて怖いと感じたのは、この二つが頭の中で一つにつながって、"まとまった額のドルを、現金で、家に"という、一番まずい組み合わせになっていたからです。
分ければ、その怖さは消えます。家に積んだドル札は、財産税からは守ってくれませんし、盗難・火事・紛失・利息ゼロ・両替の目減りという、もっと起こりやすい損を抱え込むだけ。あなたの違和感は、まったく正しいのです。
そして、財産税が逃げきれない理由。
ここが一番伝わっていないところなのですが、預金封鎖と財産税は、別々の出来事ではなく、もともとひとつの段取りの両端なんです。1946年、政府はまず預金を封鎖して、誰もお金を動かせない状態を作りました。そのうえで、その凍結された財産に、最高税率90%の財産税をかけた。先に動けなくしてから、課税する——この順番が肝心で、だからこそ「封鎖が迫ってから動こう」では間に合わない。財産税は、預金でも金でもドルでも株でも、形を問わず"合計額"にかかるので、形を変えても逃げられず、隠せばそれは犯罪になります。
では、それが今そこに迫っているのか。足元のシグナルは、確かに財政の苦しさを映しています。長期金利(10年国債)は約27年ぶりの2.6〜2.8%、日銀は6月に政策金利を1%へ引き上げ、国債の買い入れも縮小し、高市政権は歳出を増やす積極財政で追加の予算(補正予算)も組む。「財政の流れは無視できない」というあなたの直感は、間違っていません。
ただ、自国の通貨で借金をし、その国債の多くを国内で抱え、自前の中央銀行を持つ国で財政の負荷が表に出るときの道筋は、圧倒的に"インフレと円安と金利上昇"であって、1946年型の封鎖ではありません。あの年は、ハイパーインフレと占領と、生産設備そのものの崩壊という前提が揃っていた。いまとは前提が違います。
ここからが、いちばん大事なところです。
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