見出し画像

ハンタウイルスとクルーズ船の関連情報5/26時点(オープン記事,随時更新)

更新履歴
【5月15日】作成
【5月16日13時更新】1-(2)症例数更新・Case 10削除,1-(3)5/15ぶん情報追加
【5月17日10時更新】1-(2)症例数更新・Case 12追加,1-(3)5/16ぶん情報追加,1-(6)感染者からのシーケンスにパスツール研究所情報を追加
【5月18日11時更新】1-(2)Case 12が感染確定に変更,1-(4)5/17ぶん情報追加,1-(5)英国の対応に追記,3-(8)ファビピラビルについて追加
【5月19日12時更新】1-(4)5/18ぶん情報追加
【5月20日10時更新】1-(4)5/19ぶん情報追加,1-(7)アルゼンチンの最初の感染源調査開始追加
【5月22日10時更新】1-(4)5/21ぶん情報追加
【5月23日11時更新】1-(2)症例数更新・Case 13追加,1-(3)接触者・集団更新,1-(4)5/22ぶん情報追加,1-(5)世界各国の対応スペイン追記
【5月26日13時更新】1-(2)症例数更新・Case 14追加,1-(4)5/25ぶん情報追加

 ハンタウイルス集団感染が発生した国際クルーズ船MV Hondius号について,SNSでは様々な情報が飛び交っている.ここでは極力一次情報に絞り,現時点で判明していることをまとめ,今後も情報を集約して最新情報を随時更新していく.また,過剰反応している層や反ワクチン層が多数のデマを流しているため,これらのQ&Aも記す.現状としては,既知のウイルスによる局所のアウトブレイクであり,伝播性増加や重症化の変異も確認されておらず,パンデミックに至る可能性は非常に低い.現時点の感染者は全て乗員乗客であり,船外での二次感染は発生しておらず,接触者は隔離されている状況にある.

参照先おすすめ目次番号
1:感染者リスト,接触者集団,時系列情報整理,各国対応,シーケンス結果等まで知りたい方向け
2:Q&Aを知りたい方向け(現在作成中)
3:ハンタウイルス(特に今回問題となっているアンデスウイルス)についての知見を知りたい方向け

1.今回のクルーズ船関連情報(随時更新)

(1)事案の基本構造

【クルーズ船名】MV Hondius号(Oceanwide Expeditions社,オランダ)
【出航地】アルゼンチン・ウシュアイア
【出航日】2026年4月1日
【船内人数】147人.内訳は乗客88人・乗員59人・23国籍(WHO情報).一方で船会社は4月1日に114人のゲストが乗船したと説明しており、途中乗下船や「ゲスト」と「乗客・乗員」の定義差があると見られる
【旅程】ウシュアイア出航後,以下を経由する行程
南極→サウスジョージア、→ナイチンゲール島→トリスタン・ダ・クーニャ→セントヘレナ→アセンション島方面
【病原体】ハンタウイルス(中でもアンデスウイルス)
【公表値】5月25日時点で13例(11例確定,2例疑い),死亡3例
【ソース】
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599
https://oceanwide-expeditions.com/blog/press-update-m-v-hondius-7-may-2026-11-30-hrs-cet?srsltid=AfmBOooAg9ADEa-2BQzBF8Qm54loBhzZW8VIGpsthdiRcXRKdD3r6nvm
https://www.hug.ch/en/actualite/hantavirus-outbreak-cruise-ship-hug-have-identified-strain-virus
https://www.rivm.nl/en/hantavirus/current-information
https://www.who.int/news-room/speeches/item/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing---7-may-2026

(2)症例整理(5/26更新)

【5/23更新】Case 10の米国での症例が検査偽陽性でリストから削除され,5/15にアンデスウイルス感染者(疑い例含む)は10例(-1)に変更となった.その後5/16にカナダで疑い例(Case 12)が発生,5/17に確認検査で陽性となり感染確定したためうち11例となった.さらに,テネリフェで下船してオランダで隔離されていた濃厚接触者の乗員(Case 13)が5/22に陽性,同じくテネリフェで下船してスペインで隔離されていた乗客(Case 14)が5/25に陽性となり,13例となった.確定例が11例,probableが2例となっており,死亡は3例となっている.13例は全例が乗客乗員であり,非乗船者の感染者は現時点でゼロである.

Case 1
成人男性乗客.Case 2の夫で密接接触.乗船前にアルゼンチン,チリ,ウルグアイを3か月超旅行.WHOはこの症例を推定上の最初期症例とし,乗船前の南米での曝露可能性を重視
【発症日】4/6
【経過】4/11船上で死亡.検査はなされておらずprobableの扱い.

Case 2
69歳オランダ人女性乗客.Case 1の妻で密接接触.乗船前にアルゼンチン,チリ,ウルグアイを3か月超旅行.航空機,空港,救急・医療機関接触者追跡の起点.
【発症日】4/24
【経過】
- 4/24: 消化器症状を伴いセントヘレナで下船・上陸
- 4/25: セントヘレナ発ヨハネスブルグ行き航空便4Z132内で悪化,ヨハネスブルグ発アムステルダム行きのKLM便KL592に一時搭乗したが,体調不良のため搭乗継続を認められず短時間で降機
- 4/26: ヨハネスブルグの診療施設で死亡
- 5/4: PCRでハンタウイルス確認
【接触者】4/25の4Z132にいた62人(うちフランス人8名)を特定.同日のKL592にいたフランス人14人

Case 3
69歳英国人男性乗客.南アフリカ共和国NICDによる初期確定診断の中核症例.接触者として,Sandtonの病院関係者と救急搬送/航空搬送関係者42人が追跡・観察中
【発症日】4/24
【経過】
- 4/24: 軽いウイルス様症状を示す
- 4/27: 重症化したためアセンション島で下船・医療搬送(初期はハンタウイルスではなく重症肺炎+敗血症として扱われレジオネラが疑われていた)
- 5/1: セントヘレナ・アセンションの医療チームがCase 1,2,3の関連に気づき国際当局へ連絡
- 5/2: PCR陽性,シーケンスでアンデスウイルス確認
- 5/8: ヨハネスブルグのICUで治療中と判明
- 5/11: 南ア保健省報道官より臨床的に改善中との説明あり

Case 4
80歳ドイツ人女性乗客.船内で死亡した後期死亡例
【発症日】4/28
【経過】
- 4/28: 発熱・全身倦怠感で発症し,その後肺炎へ進行
- 5/2: 船内で死亡
- 5/8: 死後検体からアンデスウイルス確認
- 65歳ドイツ人女性が船内で接触しており,現時点で検査は陰性

Case 5
オランダ人42歳男性,船医
【発症日】4/30
【経過】
- 4/30: 発熱,倦怠感,筋肉痛,軽度呼吸症状
- 5/6: PCRでアンデスウイルス陽性
- カーボベルデ沖からオランダのRadboud病院に医療搬送,隔離入院で治療中・病状安定
- 本患者の血液・尿処理に関連して職員12人が高リスク接触者として6週間隔離へ

Case 6
56歳英国人男性,船内ガイド
【発症日】4/27
【経過】
- 4/27: 軽度呼吸器症状,消化器症状
- 5/6: PCRでアンデスウイルス陽性
- カーボベルデ沖からオランダのライデン大学医療センターに搬送,隔離入院で治療中・病状安定
- 5/16: 英国へ移送できる程度まで回復

Case 7
64歳スイス人男性乗客
【発症日】5/1
【経過】
- 4/22: セントヘレナで下船
- 4/27~28: 南アフリカ・カタール経由でスイスへ帰国
- 5/1: 発症,すぐに自己隔離・申告し,その後チューリヒ大学病院に入院
- 5/5: PCRでアンデスウイルス陽性
- 本症例の検体からANDV/Switzerland/Hu-3337/2026の全ゲノム配列が公開.Ct値20.5の血漿検体からシーケンス

Case 8
トリスタンダクーニャ在住の65歳英国人男性乗客.検査結果待ちのためprobable
【発症日】4/28
【経過】
- 4/14: トリスタンダクーニャで下船
- 4/28: 下痢発症
- 病状安定,検査結果待ち
- トリスタンダクーニャは飛行場がないため,英国軍はRAF A400Mを用い,16 Air Assault Brigadeの6人の空挺隊員と2人の軍医療者をパラシュート降下させ、酸素などの医療物資を同時に空中投下

Case 9
成人フランス人女性乗客.スペイン・カナリア諸島からの退避便での帰国中に発症しており,4人の同乗フランス人(全員5/11陰性,隔離中)が接触者とされる.65歳以上,基礎疾患ありとの報道はあるが公式には非公表
【発症日】5/10~5/11未明
【経過】
- 5/10~5/11: フランス帰国便の中で急性症状発症
- 5/11: PCR陽性
- フランス・パリのBichat-Claude Bernard病院で隔離,ICUで人工呼吸器・ECMOを装着し治療中

Case 10(→5/16リストから除外)
米国人乗客.初回検査は偽陽性でinconclusive→5/16リストから除外
【発症日】無症状
【経過】
- 5/10にスペイン・カナリア諸島で下船後,米国の退避便でネブラスカ州の隔離施設へ移動,その際の検査で陽性(もしくは判定不能?)と報道もその後の確認検査で偽陽性と判明,5/16時点では無症状で症例から外れることとなった

Case 11
スペイン人男性乗客
【発症日】5/11~5/12
【経過】
- 5/10にスペイン・カナリア諸島で下船し搬送,Hospital Central de la Defensa Gómez Ullaで隔離中
- PCRで陽性
- 当初は無症状・全身状態良好だったが,その後,5/11~5/12以降に微熱,軽度酸素飽和度低下,呼吸器症状/呼吸困難を呈した.現在病状は安定
【接触者】なし(感染可能期間は既に防護・隔離措置がとられていた)

Case 12(5/17追加,5/18更新)
70代カナダ人乗客
【発症日】5/14
【経過】
- 5/10に退避便でカナダに帰国,自己隔離・症状監視へ
- 5/14に軽度症状が出現したため病院へ搬送
- 5/15に初期検査で推定陽性(presumptive positive)でprobableの判定
- 5/17確認検査で陽性となり感染確定
【接触者】クルーズ船に乗船していた配偶者も5/14に軽度症状が出現したため病院へ搬送.検査結果は陰性

Case 13(5/23追加)
MV Hondius号乗員で,感染者と密接接触があったためテネリフェで下船し,オランダに移送,自宅で自己隔離となっていた.
【発症日】症状有無不明(ただし,自宅隔離中の週次検査で陽性となったこと,現在予防的入院となっていることから無症状と推察される)
【経過】
- 5/10〜11: スペイン・カナリア諸島テネリフェで下船
- 5/12: オランダに移送,初回検査陰性で自宅隔離
- 5/22: 自宅隔離中の週次検査で陽性となり,予防的入院

Case 14(5/26追加)
MV Hondius号の乗客で,テネリフェで下船し,病院で隔離となっていた
【発症日】無症
【経過】
- 5/10: スペイン・カナリア諸島テネリフェで下船し,マドリードのGómez Ulla軍病院で隔離
- 5/22: 定期PCR検査で陽性.無症状

Non-Case 1
乗客
【発症日】
【経過】
- 当初疑い例とされたが,ドイツ移送後,PCR・血清検査陰性であり,non-caseに再分類

ソース
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON600
https://www.who.int/news-room/speeches/item/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing---7-may-2026
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/andes-hantavirus-outbreak-ecdc-continues-working-frontline-support-eu-member-states
https://www.info.gouv.fr/actualite/hantavirus-le-point-sur-les-mesures-sanitaires-en-france
https://www.unmc.edu/newsroom/2026/05/11/16-u-s-citizens-safely-repatriated-to-unmc-nebraska-medicine/
https://www.unmc.edu/newsroom/2026/05/11/cruise-ship-passengers-arrive-at-national-quarantine-unit/
https://apnews.com/article/hantavirus-outbreak-hondius-cruise-ship-ac42357c5c3ae1694a93f1d43ba38bdb
https://www.sanidad.gob.es/en/gabinete/notasPrensa.do?id=6907

(3)接触者・集団(5/23更新)

 WHOは接触者を,

  • 症例の体液・血液等への直接曝露

  • 2m以内で15分超の近接

  • 密閉空間・共有空間

  • 無防護の医療・検査曝露

などに基づいて定義している.高リスク接触者には42日間の能動的モニタリングと自宅または施設での隔離を推奨し,低リスク接触者には症状自己監視を推奨している.WHOは最終曝露日を5月10日とし,42日後の6月21日までの監視を勧告

C-Ship
【集団構成】船内接触者.4月1日〜5月10日にMV Hondiusにいた乗客・乗員全体を指す
【追跡・対応】ECDCは下船時点で全員を高リスク接触者として扱い,非商用便で帰国,最大6週間の隔離・監視を推奨
【新規感染者発生】13例
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/andes-hantavirus-outbreak-ecdc-continues-working-frontline-support-eu-member-states
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/rapid-scientific-advice-management-passengers-context-andes-virus-outbreak-cruise

C-StH
【集団構成】セントヘレナ接触者.4月22〜24日の寄港時に上陸・接触した乗客,島内住民,関係者
【追跡・対応】セントヘレナ当局は,高リスク接触者に自己隔離・医師の毎日連絡,低リスク接触者に通知.5/8時点で22人が隔離指示,83人が低リスク管理
【新規感染者発生】5/12時点でなし
https://www.sainthelena.gov.sh/suspected-hantavirus-on-mv-hondius/
https://www.sainthelena.gov.sh/update-on-hantavirus-linked-to-mv-hondius/
https://www.sainthelena.gov.sh/end-of-week-1-update-hantavirus-response-and-international-coordination-8-may-2026/

C-Asc
【集団構成】アセンション島接触者.Case 3の診療・搬送関係者,島内医療・行政関係者
【追跡・対応】Case 3は4/27にアセンション島で下船・医療搬送.英国は後にセントヘレナ・アセンションの接触者10人を英国へ移送して隔離継続すると発表
【新規感染者発生】5/12時点でなし
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON600
https://www.gov.uk/government/news/ukhsa-update-on-the-hantavirus-cruise-ship-outbreak

C-Tristan
【集団構成】トリスタンダクーニャ接触者.4/14に同島で下船したCase 8の島内接触者
【追跡・対応】英国は医療物資・医療者をRAF機と空中投下で支援.トリスタン当局が接触者調査中.
【新規感染者発生】5/12時点でなし
https://www.tristandc.com/government/news-2026-05-04-hondius-hantavirus.php
https://www.tristandc.com/government/news-2026-05-11-airdrop.php

C-Flight-4Z132
【集団構成】セントヘレナ→ヨハネスブルグ便4Z132接触者.Case 2が発症後搭乗しており,その接触者にあたる
【追跡・対応】フランス政令は4Z132便乗客を明示し,フランス入国者に連絡・隔離・評価を求めた.南アフリカ共和国は空港・搬送・医療接触者を含め62人を特定
【新規感染者発生】なし
https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000054051506
https://www.sanews.gov.za/south-africa/response-hantavirus-case-was-swift-contact-tracing-began-within-hours

C-Flight-KL592
【集団構成】セントヘレナ→ヨハネスブルグ便KL592接触者.Case 2が発症後搭乗(許可が降りず短時間で降機)しており,その接触者にあたる.フランス人14人を含む.
【追跡・対応】フランス政令はKL592便も対象化.RIVMは,同便では症例を介助した者を高リスク,同列前後2列を低リスクなどとする評価を示した.
【新規感染者発生】なし.フランス人客室乗務員1人が症状を呈したが検査で陰性.
https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000054051506
https://lci.rivm.nl/richtlijnen/orthohantavirusinfectie/maatregelen-andesvirus

C-Repat
【集団構成】帰国・退避便接触者.5/10〜11にテネリフェから各国へ非商用便で帰国した乗客・一部乗員.
【追跡・対応】オランダ,米国,英国,フランス,スペイン等が隔離・検査・健康監視を実施.帰国便中に発症したフランス人症例もあり,便内接触者追跡が追加
【新規感染者発生】1例(Case 13)がオランダで予防的入院
https://www.government.nl/latest/weblogs/the-work-of-the-ministry-of-foreign-affairs/2026/medical-evacuation-from-cruise-ship-m-v-hondius
https://www.unmc.edu/newsroom/2026/05/11/16-u-s-citizens-safely-repatriated-to-unmc-nebraska-medicine/

(4)出航日からの時系列(5/26更新)

▶4月1日
国際クルーズ船MV Hondius号がアルゼンチン・ウシュアイアを4月1日に出航
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

▶4月6日
成人男性の最初の症例(Case 1)が4月6日に発熱,頭痛,軽い下痢などを発症.その後呼吸状態悪化(その後は4/11へ)
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

▶4月11日
(4/6→)Case 1が船内で死亡
WHOはこの時点では検体が採取されていなかったため,後から検査確認された症例ではないと説明.船会社も船内では死因を確定できなかったと説明
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599
https://oceanwide-expeditions.com/blog/press-update-timeline-of-the-medical-situation-on-board-the-m-v-hondius?srsltid=AfmBOoqIo5pOdWwp7NYUD6aVSLWv4oqGkbMpu_FkJKSBGUQ-5nfHUOqh

▶4月13日~15日
トリスタンダクーニャに寄港.乗客が上陸し,その際4/28に発症したCase 8(ここで下船)と現地住民が接触(その後は4/28へ)https://www.tristandc.com/government/news-2026-05-04-hondius-hantavirus.php

▶4月22〜24日
セントヘレナに寄港.軽い症状のある乗客2名(うち1名がCase 7で下船)が地域住民と接触(その後は5/4へ)
https://www.sainthelena.gov.sh/suspected-hantavirus-on-mv-hondius/

▶4月24日
30人がセントヘレナで下船.この30人には4月11日に死亡してセントヘレナで下ろされた乗客の遺体(Case 1)も含まれる.下船者30人の国籍内訳は以下(国籍と居住国が異なるケースあり)
- 英国: 7
- 米国: 6
- オランダ: 3
- カナダ: 2
- スイス: 2
- トルコ: 2
- ドイツ: 1
- デンマーク: 1
- ニュージーランド: 1
- セントクリストファー・ネイビス: 1
- シンガポール: 1
- スウェーデン: 1
- 不明: 2
https://oceanwide-expeditions.com/blog/press-update-m-v-hondius-7-may-2026-11-30-hrs-cet

成人男性(Case 3)が発熱,息切れ症状で船医に相談する(その後は4/26へ)
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

▶4月25日
セントヘレナで下船した,最初に死亡した男性(Case 1)のオランダ人の妻(Case 2)は,4月25日のセントヘレナ発ヨハネスブルグ行きの便で体調が悪化した.この便について接触者追跡が開始されている.
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599
このCase 2の女性はその後,ヨハネスブルグでアムステルダム行きのKLM便KL592に一時搭乗したが,体調不良のため搭乗継続を認められず短時間で降機(その後は4/26へ).この際接触した客室乗務員がその後軽度の体調不良で隔離入院(検査結果は未判明).KLMはRIVMやGGDと連携して乗客への情報提供.
https://news.klm.com/passenger-with-hantavirus-was-briefly-on-board-a-klm-aircraft-in-johannesburg/

▶4月26日
(4/25→)オランダ人女性(Case 2)が南アフリカのヨハネスブルグの医療施設で死亡(その後は5/4へ)
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

▶4月26日
(4/24→)4/26に症状を訴えた男性(Case 3)が症状悪化(その後は4/27へ)
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

▶4月27日
(4/26→)4/24に症状を訴え,4/26に症状が悪化した男性患者(Case 3)が症状悪化後4月27日にアセンション島から南アフリカへ医療搬送され集中治療室に入る(その後は5/2へ)
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

船内ガイド(Case 6)が発症(その後は5/6へ)
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

▶4月28日
新たに成人女性(Case 4)が発症し,肺炎を呈した(その後は5/2へ)
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

(4/13~4/15→)Case 8がトリスタンダクーニャで発症
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

▶4月30日
船医(Case 5)が発症.(その後は5/6へ)
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

▶5月1日
Case 7がスイス帰国後に発症し自己隔離・申告
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

▶5月2日
WHOが英国のIHR国家連絡窓口から重篤な急性呼吸器疾患のクラスター(死亡者2名と重篤な乗客1名)に関する通知を受ける.
(4/27→)同日,南アフリカで集中治療室で治療中のCase 3の検査結果でハンタウイルス感染を確認
(5/2→)同日,4/28に発症した女性が南アフリカ(Case 4)が死亡.死亡例としては3例目.
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

▶5月4日(アウトブレイク公表日)

WHOがDisease Outbreak Newsとして,MV Hondius関連のハンタウイルスクラスターを公表.この時点でWHO整理では7例,うち2例確定・5例疑い,死亡3例.症状は4/6〜4/28にかけて発生し,発熱,消化器症状,肺炎,ARDS,ショックなどが報告
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

(4/26→)に南アフリカで死亡したCase 2のオランダ人女性において,死亡後にハンタウイルスが確認された(その後は5/6へ).WHOはこの死亡例に関連して航空便の接触者追跡を開始した
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

同船訪問時に軽い症状のある乗客2名がセントヘレナに上陸し,地域住民と接触した可能性があるとして,リスクベースの接触者追跡を開始.濃厚接触者には自宅隔離と毎日の健康確認を求めた.隔離期間は最終曝露から45日(6/9まで)
https://www.sainthelena.gov.sh/suspected-hantavirus-on-mv-hondius/
https://www.sainthelena.gov.sh/update-on-hantavirus-linked-to-mv-hondius-6-may-2026/
https://www.sainthelena.gov.sh/update-on-the-hantavirus-linked-to-the-mv-hondius-7-may-2026/

▶5月5日

スペインはWHOとEUから,カーボベルデでは対応能力が不足するためカナリア諸島でMV Hondiusを受け入れるよう要請されたと公表
https://www.sanidad.gob.es/en/gabinete/notasPrensa.do?id=6900

Case 7がスイスでPCR陽性,アンデスウイルスと確認
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

▶5月6日

(5/4→)死亡したCase 2の女性で確認されたハンタウイルスがシーケンスによりアンデスウイルスと判明https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/TAB-hantavirus-06052026.pdf

(4/27・4/30→)Case 5Case 6(その後は5/7へ)が検査でアンデスウイルス陽性.この2例と当初疑い例(Non Case 1)をカーボベルテから欧州へ医療搬送
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

MV Hondius号がカーボベルデからスペイン・カナリア諸島へ向け出航
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

アルゼンチンは、2,500件分の診断検査資材をスペイン,セネガル,南アフリカ,オランダ,英国などへ送付し,初発例の旅程調査を進めると発表
https://www.argentina.gob.ar/noticias/argentina-asiste-paises-europeos-con-insumos-de-diagnostico-para-hantavirus

▶5月7日

(5/6→)Case 6がオランダへ医療搬送
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

スペインは関係国・カナリア自治州と複数回の調整会議を行い,船上の147人はカナリア諸島へ向け航行中で無症状と説明
https://www.sanidad.gob.es/gabinete/notasPrensa.do?id=6902

アルゼンチンは,Case 1等の旅程,アンデスウイルス系統,国内監視強化について全国州当局と会議.発生源は未確定と説明
https://www.argentina.gob.ar/noticias/salud-sostiene-y-refuerza-la-vigilancia-epidemiologica-de-hantavirus-en-el-pais

▶5月8日

WHOが更新DONを公表.8例(うち6確定・2probable),死亡3例.確定例はすべてアンデスウイルス.4人が入院中(ヨハネスブルグICU,オランダ2病院,チューリッヒ)
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599

英国保険安全保障庁(UKHSA)は,8例中3人が英国人,うち2人確定,1人がトリスタンダクーニャで監視中の疑い/probableと説明.英国人乗客・乗員は最大45日隔離へ
https://www.gov.uk/government/news/ukhsa-update-on-the-hantavirus-cruise-ship-outbreak

ECDCが下船・帰国管理の迅速助言を公表.船内全員を高リスク接触者として扱い,最大6週間の隔離・監視を推奨
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/rapid-scientific-advice-management-passengers-context-andes-virus-outbreak-cruise

セントヘレナ当局は,島内で疑い例ゼロ,隔離指示22人,低リスク83人と公表
https://www.sainthelena.gov.sh/end-of-week-1-update-hantavirus-response-and-international-coordination-8-may-2026/

▶5月9日

英国はCase 8に関連するトリスタンダクーニャの疑い例支援のため,RAF A400Mをアセンション島から派遣し,医療者と約3.3トンの物資を空中投下
https://www.tristandc.com/government/news-2026-05-11-airdrop.php

ECDC専門家に加えEU Health Task Forceの専門家がスペイン支援に入り,シーケンス結果は既知の南米アンデスウイルスに近く,新変異株や感染性・重症度増加の証拠はないと説明
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/andes-hantavirus-outbreak-ecdc-continues-working-frontline-support-eu-member-states

▶5月10日

MV Hondius号がスペイン・カナリア諸島にあるテネリフェ島グラナディージャ港沖/港へ到着.スペインは5/10を隔離・監視の「day zero」と設定
https://www.sanidad.gob.es/en/gabinete/notasPrensa.do?id=6907
ttps://www.lamoncloa.gob.es/presidente/actividades/paginas/2026/120526-sanchez-encuentro-director-general-oms.aspx

フランス政令が,4/1〜5/10にMV Hondius号に乗船しフランスへ戻る者を対象に,病院での評価後,最大42日隔離・隔離入院を可能にする措置を規定
https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000054051506

▶5月10日~11日(乗客下船)

スペイン主導で,WHO,欧州委員会,ECDC,カナリア自治州,23か国と連携し,乗客・乗員の下船・送還を実施https://www.lamoncloa.gob.es/presidente/actividades/paginas/2026/120526-sanchez-encuentro-director-general-oms.aspx

退避便での帰国中にフランス人乗客(Case 9)が発症し,その後重症化してICUに入室(その後は5/11へ).4人のフランス人同乗あり
https://www.info.gouv.fr/actualite/hantavirus-le-point-sur-les-mesures-sanitaires-en-france

▶5月11日

ECDCは,ゲノム解析結果により今回のウイルスは南米で既に循環が知られているアンデスウイルスに類似し「新しい変異株ではない」とし,さらに「この変異株が他のアンデスウイルスより広がりやすい,または重症化させやすいという証拠は現在ない」と発表
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/andes-hantavirus-outbreak-ecdc-continues-working-frontline-support-eu-member-states

スペイン政府は120人が10本の特別便で送還されたと発表
https://www.lamoncloa.gob.es/presidente/actividades/paginas/2026/120526-sanchez-encuentro-director-general-oms.aspx

ECDCは,船上の全員が下船時に高リスク接触者として扱われ,非商用便で送還されたと説明.
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/andes-hantavirus-outbreak-ecdc-continues-working-frontline-support-eu-member-state

(5/10~11→)Case 9がPCR陽性.重症化したためフランス・パリのBichat-Claude Bernard病院ICUに入室
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/andes-hantavirus-outbreak-ecdc-continues-working-frontline-support-eu-member-states

オランダの第2便・関連便がテネリフェを出発し,乗客・一部乗員をアイントホーフェンへ搬送
https://www.government.nl/latest/weblogs/the-work-of-the-ministry-of-foreign-affairs/2026/medical-evacuation-from-cruise-ship-m-v-hondius

▶5月12日

WHOが症例数を11例(9確定・2probable)に更新.全員が乗客乗員であり,船外での二次感染発生なし.5/2以降死亡例なし.この後,現在(5/15)まで症例数の増加なし.
https://www.who.int/news-room/speeches/item/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-on-hantavirus---12-may-2026

UKHSAは,20人の英国人,英国在住ドイツ人1人,日本人乗客1人がArrowe Parkで初期評価を受け,その後自宅等で隔離・健康監視へ移行すると公表.日本人乗客は日本政府の要請で送還済み
https://www.gov.uk/government/news/ukhsa-update-on-the-hantavirus-cruise-ship-outbreak

UKHSAは,セントヘレナ・アセンションの英国海外領土から10人を英国へ移して隔離継続すると説明.このうち高リスク接触者1人のみ(確定例と濃厚接触した医療関係者)が症状を呈したが,英国での検査では陰性.
https://www.sainthelena.gov.sh/hantavirus-response-update/
https://www.gov.uk/government/news/ukhsa-update-on-the-hantavirus-cruise-ship-outbreak

オランダ政府は,すべての乗客が送還され,オランダ人乗客は自宅隔離,船は残る乗員とともにオランダへ航行中と発表
https://www.government.nl/latest/weblogs/the-work-of-the-ministry-of-foreign-affairs/2026/medical-evacuation-from-cruise-ship-m-v-hondius

スペイン人乗客1人(Case 11)が発症,避難後に陽性となり,マドリードのHospital Central de la Defensa Gómez Ullaで隔離中.
https://apnews.com/article/hantavirus-outbreak-hondius-cruise-ship-ac42357c5c3ae1694a93f1d43ba38bdb

オランダで,ハンタウイルス患者Case 5の尿・便の処理を通常より厳格な手順なしに扱ったRadboud病院職員12人が6週間隔離へ
https://apnews.com/article/hantavirus-outbreak-hondius-cruise-ship-ac42357c5c3ae1694a93f1d43ba38bdb

カナダ公衆衛生庁は,5月10日にカナダ人乗客4人がブリティッシュコロンビア州へ帰国し,専用施設で自己隔離中と公表.4人はいずれも無症状で,隔離期間は5/10起算で最低21日,最大42日.また,カナダ国内の高リスク接触者は計9人
https://www.canada.ca/en/public-health/news/2026/05/media-update-on-andes-hantavirus-situation.html

豪州CDCは,オーストラリア国民4人,永住者1人,ニュージーランド国民1人の帰国を調整し,到着後少なくとも最初の3週間はBullsbrook Centre for National Resilienceで隔離し,全体として42日間の検疫を行う方針
https://www.cdc.gov.au/newsroom/news-and-articles/mv-hondius-passengers-returning-australia

▶5月13日

UKHSAは,Arrowe Parkにいた6人が最新PCR陰性後,自宅または適切な宿泊施設へ移り,45日間の隔離を継続となった.残る人々も無症状で,検査は陰性とされた.
https://www.gov.uk/government/news/ukhsa-update-on-the-hantavirus-cruise-ship-outbreak

スペイン保健当局者は,陽性となったスペイン人男性乗客(Case 11)が呼吸困難を呈し酸素療法を受けた後,改善・安定化したと説明.他の13人は無症状でPCR陰性のまま隔離・監視中
https://www.rtve.es/noticias/20260513/espanol-con-hantavirus-aislado-gomez-ulla-sigue-con-sintomas-pero-estabilizado/17066639.shtml

セントヘレナ当局は,セントヘレナには疑い例・確定例なし,アセンション島には確定例なしだが高リスク接触者1人が症状を呈し初期検査陰性,トリスタンダクーニャにはMV Hondiusに乗船していた島民のprobable例1例(Case 8)があり安定・改善傾向と発表
https://www.sainthelena.gov.sh/daily-update-hantavirus-response/

米国のNebraska Biocontainment Unitにいた初期陽性者(Case 10)が再検査で陰性を確認,無症状・偽陽性判定で医学的にクリアされ,National Quarantine Unitへ移された.
https://www.wowt.com/2026/05/13/cdc-says-previously-confirmed-hantavirus-case-brought-nebraska-medicine-now-inconclusive/

南アフリカ共和国では,Case 2Case 3に関連する接触者が97人に増え,うち90人に連絡済みで6週間監視される.
https://english.news.cn/africa/20260513/ad901e8c0c64410f8ad8631f6786fcf8/c.html

▶5月14日(5/17に発表されたCase 12の情報を追加)

【5/17更新】5/10にクルーズ船から退避便でカナダに帰国,自己隔離・症状監視となっていたユーコン準州在住の70代乗客(Case 12)とその配偶者(クルーズ船乗客)が軽い症状を訴え,病院に搬送(その後は5/15へ)
https://www.canada.ca/en/public-health/news/2026/05/media-update-on-andes-hantavirus-situation0.html

ECDCはEU/EEA一般住民へのリスクは非常に低いと評価
https://www.ecdc.europa.eu/en/infectious-disease-topics/hantavirus-infection/surveillance-and-updates/andes-hantavirus-outbreak

UKHSAは,セントヘレナ・アセンションで隔離中の無症状接触者9人を英国へ予防的に移し,Arrowe Parkで隔離継続させると発表.アセンション島の症状がある医療者接触者は,初期検査陰性ながら,南イングランドのHCIDユニットへ別途医療搬送される予定.
また,1人が臨床・公衆衛生評価後にArrowe Parkを離れ,隔離を継続する予定とされた.UKHSAは一般住民へのリスクは非常に低いとした
https://www.gov.uk/government/news/ukhsa-update-on-the-hantavirus-cruise-ship-outbreak

RIVMは,5/12夜〜13未明にアイントホーフェンへ到着した第2・第3便の26人全員について,RIVMとErasmus MCの検査で陰性だったと発表.ただし陰性でもオランダへ送還された乗客は6週間の自宅隔離対象.
また,アンデスウイルス感染症を届出対象に追加し、5月12日には確定例定義を更新した。感染可能期間は症状出現から回復または死亡までとし,予防的に発熱2日前から接触者調査を行うと説明
https://www.rivm.nl/hantavirusinfectie/actueel
https://lci.rivm.nl/richtlijnen/orthohantavirusinfectie/maatregelen-andesvirus

米国では41人が監視対象で,その中にはNebraska・Atlantaの18人,アウトブレイク認知前に帰国した乗船者,症状のある症例と同じ航空便で曝露した可能性のある人が含まれるとした.米国内でこのアウトブレイクに由来する確定アンデスウイルス症例はなし.
https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/cdc-says-41-people-being-monitored-hantavirus-us-2026-05-14/
https://www.cdc.gov/hantavirus/situation-summary/index.html

スコットランド公衆衛生局は,スコットランド国内で症例との潜在的接触があった少数者をNHS boardと連携して追跡中と発表.45日間の隔離・経過観察が行われ,スコットランドに既知の症例はないとした.
https://publichealthscotland.scot/news/2026/may/hantavirus-cruise-ship-outbreak/

▶5月15日(5/16更新)

米国のCase 10は検査偽陽性であり,inconclusiveのままであったが,リストから外れ,クルーズ船MV Hondius号関連症例数は10例に減少となった.米国内感染者は0例.
https://www.who.int/news-room/speeches/item/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing---15-may-2026

【5/17更新】(5/14→)病院搬送されたカナダ人乗客(Case 12)が検査で推定陽性となり今後確認検査へ(その後は5/17へ).同じくクルーズ船に乗船していた配偶者は陰性.
https://www.canada.ca/en/public-health/news/2026/05/media-update-on-andes-hantavirus-situation0.html
https://apnews.com/article/canada-hantavirus-positive-test-880ad45b272c59a96a9fb07bf6425d45

WHOは今回のアンデスウイルスについて,より伝播しやすい,またはより重症化しやすいと示す変異は確認されていないと説明(→(6)感染者からのシークエンス参照)
https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/who-revises-hantavirus-cases-lower-after-us-passenger-tests-negative-2026-05-15/

テネリフェからの乗客移送作戦は完了し,120人超が母国または最終目的地へ向かう途中の受け入れ国で隔離・管理.船長と26人規模の乗員はなお船内におり,船内に症状者はいない.
https://www.who.int/news-room/speeches/item/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing---15-may-2026

RIVMは,アイントホーフェンに到着した第2・第3退避便の乗客・乗員26人全員がアンデスウイルス陰性だったと発表(初回退避便も全員陰性)
https://www.rivm.nl/en/hantavirus/current-information

ECDCが,アンデスウイルス疑い・確定患者を診療する医療施設向けに,感染予防・管理措置に関するRapid Scientific Adviceを公表.これは5/6のThreat Assessmentと5/9の乗客管理助言を更新し、医療施設内でのIPCに焦点を当てた文書である.
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/rapid-scientific-advice-infection-prevention-and-control-measures-patients

WHOは,20カ国超と協力してアデンすウイルスの自然史をよりよく理解する研究を調整し,また,UKHSAとWHO R&D Blueprintが支援する科学協議で治療薬・ワクチン候補の研究開発優先順位を整理へ.
https://www.who.int/news-room/speeches/item/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing---15-may-2026

WHO Europeは,今回のMV Hondius号事案を「船上で確認された初のハンタウイルスクラスター」と位置づけ,IHRに基づく通知,医療搬送,接触者追跡,検査・シーケンス調整,テネリフェ下船支援が短期間で行われたと総括.また,セントヘレナで先に下船した人々の国籍国12カ国に通知したことが,5/6のスイスのCase 7症例特定に直接つながったと説明
https://www.who.int/europe/news/item/15-05-2026-how-a-little-known-virus-on-a-cruise-ship-put-the-world-s-health-security-framework-to-the-test

5月16日(5/17更新)

カナダ公衆衛生庁は,MV Hondius号から帰国し隔離・症状監視中だった高リスク者4人のうち1人(Case 12)がアンデスウイルスの推定陽性になったと発表(5/14・5/15を参照).念のため,隔離用宿泊施設にいた3人目も病院へ移送し評価・検査中.医療者・送還関係者はPPEなど感染予防策を取っており,送還作業関係者はリスク対象とはみなされていない.カナダ一般市民へのリスクは現時点で低いままと評価
https://www.canada.ca/en/public-health/news/2026/05/media-update-on-andes-hantavirus-situation0.html

フランスのパスツール研究所が,MV Hondius関連のフランス人患者から検出されたアンデスウイルスを完全シーケンスし,南米で既知のウイルス群に一致しており,現時点で伝播性や重症度を高める新しい性質を示す証拠はないと発表
https://apnews.com/article/france-hantavirus-andes-sequencing-b48647992da82d6d44dfc6da1a460005

アセンション島で症状を示した医療者が予防的措置として英国へ医療搬送され,Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation TrustのHigh Consequence Infectious Disease Unitに到着.感染はまだ確認されていないが,重症化に備えて専門評価を行う予定
https://www.gov.uk/government/news/ukhsa-update-on-the-hantavirus-cruise-ship-outbreak

オランダで入院していた英国人患者(Case 6)について,英国へ移送できる程度まで回復したと報告
https://nltimes.nl/2026/05/16/british-patient-well-enough-leave-netherlands-port-rotterdam-awaits-hondius

MV Hondius号がロッテルダム港へ向かっており,5/18月曜朝の到着が見込まれるとされる.船内には27人が残り,25人の乗員とRIVM職員2人.乗員には外国籍乗員23人が含まれており,フィリピン17人,ウクライナ4人,ロシア1人,ポーランド1人.うち,フィリピン人乗員についてはフィリピンでの隔離実施・強制や最適医療アクセスの制約を理由に,オランダで6週間隔離を完了するのが望ましいと報告
https://nltimes.nl/2026/05/16/british-patient-well-enough-leave-netherlands-port-rotterdam-awaits-hondius

豪州市民・永住者5人とニュージーランド人1人の計6人がオランダからPerth近郊のRAAF Base Pearceに到着し,Bullsbrook隔離施設へ移送.6人はいずれも出発前陰性
https://apnews.com/article/hantavirus-australia-passengers-netherlands-quarantine-5872e351c6c2bc0f881b4165651e5611

5月17日(5/18更新)

(5/16)MV Hondius乗船者で,5/16に初期検査で推定陽性となり疑い例(probable)となっていたカナダ人1人(Case 12)について,WinnipegのNational Microbiology Laboratoryでハンタウイルス陽性を確認し,感染確定.同行者は陰性で2人ともVictoriaの病院で隔離中
https://www.canada.ca/en/public-health/news/2026/05/media-update-on-andes-hantavirus-situation1.html
https://apnews.com/article/canada-hantavirus-positive-test-1ef18249115195f09381a174092a1cae

死亡したオランダ人女性(Case 2)と同じ航空便に乗っていたバルセロナとアリカンテの女性2人について,最新PCRが陰性で,無症状が続き,次回PCRも陰性なら,5月23日から自宅隔離へ移行可能
https://elpais.com/sociedad/2026-05-17/las-mujeres-de-barcelona-y-alicante-podran-hacer-cuarentena-en-casa-si-dan-negativo-en-hantavirus.html

5月18日(5/19更新)

MV Hondius号がオランダのロッテルダム港に到着し,閉鎖区域に係留.船内に残る27人(フィリピン17人,ウクライナ3人,オランダ4人,ポーランド1人,ロシア1人,ウクライナ1人)は全員無症状で,段階的・管理下で下船し,特別な検疫区域に収容・検査へ.陰性確認後は外国籍者はロッテルダム港内の一時隔離ユニット,オランダ人乗員は自宅隔離に入る運用.船に関しては船体検査とサンプル採取後,船全体を清掃・消毒する.清掃は経験ある専門業者が行い,RIVMが事前助言しており,作業員はPPEを使用する.
https://www.rivm.nl/en/news/arrival-and-cleaning-of-cruise-ship-hondius
https://oceanwide-expeditions.com/blog/press-update-m-v-hondius-18-may-2026-18-30-hrs-cet

UKHSAは,日本の厚労省・日本政府から抗ウイルス薬ファビピラビル(アビガン®︎)の提供を受けたと発表(→3-(8)参照).これは厚労省とUKHSAの協力覚書を含む日英公衆衛生パートナーシップの一環
https://www.gov.uk/government/news/ukhsa-update-on-the-hantavirus-cruise-ship-outbreak

5月19日(5/20更新)

米国CDCはネブラスカに送還された2人に対し、Public Health Service Actおよび42 CFR parts 70/71に基づく正式な検疫命令(拒否があった場合に罰金・刑事罰を伴い得るまれな法的措置)を発出
https://www.cdc.gov/media/releases/2026/cdc-provides-update-on-hantavirus-outbreak-linked-to-m-v-hondius-cruise-ship.html

UKHSAは「Hantavirus: human-to-human infection transmission parameters」を公開.ハンタウイルスの人−人感染に関する潜伏期間,感染可能期間,無症状・発症前感染,感染経路について,2026年5月1日までの文献検索に基づく17研究の系統的エビデンス要約
https://www.gov.uk/government/publications/hantavirus-human-to-human-infection-transmission-parameters

WHO事務局長は,全乗客が監視下にあり,乗員も隔離に入るとしたうえで,現時点ではより大きなアウトブレイクの始まりを示す兆候はないと述べる.一方で,関係国には乗客・乗員の慎重な監視継続を求めた.
https://www.who.int/news-room/speeches/item/who-director-general-s-address-to-member-states-at-the-79th-world-health-assembly---19-may-2026

アルゼンチン当局がMV Hondius関連アウトブレイクの感染源を探るため,出航地ウシュアイア周辺の森林でげっ歯類捕獲を開始.Malbrán研究所が主導し,採取サンプルはブエノスアイレスの研究所へ戻され,検査には最大1か月かかる可能性.
https://apnews.com/article/argentina-hantavirus-investigation-cruise-ship-hondius-outbreak-ushuaia-6e02980f2ab1637e3ceeddc7d1429b5f

5月21日(5/22更新)

ロッテルダムに到着したMV Hondius号に残っていたの27人の乗員全員がPCR検査でアンデスウイルス陰性.到着時に全員が医学的診察・検査を受け,発症者もいなかった.
https://www.cadena3.com/noticia/mundo/paises-bajos-descarto-infecciones-de-hantavirus-en-pasajeros-del-crucero_554038

▶5月22日(5/23更新)

感染者と密接接触があったため,5/10〜11にスペイン・カナリア諸島テネリフェで下船し,オランダへ送還され,その後オランダ国内で自宅隔離されていたMV Hondius号乗員(Case 13)が週次検査で陽性となり,予防的入院.
RIVMは,乗員移送時は厳格な予防策を取り,オランダ到着後すぐ隔離され,GGDが健康監視していたため,オランダでのさらなる拡大リスクは「very small」としている.
https://www.who.int/news-room/speeches/item/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-on-outbreaks-of-ebola-and-hantavirus-22-may-2026
https://www.rivm.nl/en/hantavirus/andes-virus

スペインでは,無症状かつPCR陰性が続く接触者について,42日隔離のうち最後の14日間を自宅で完了できる新プロトコルが示された.自宅には個室,換気,可能なら専用浴室などの条件が必要で,公衆衛生スタッフが毎日確認する.
https://www.euronews.com/health/2026/05/22/spain-allows-hantavirus-contacts-who-test-negative-to-spend-last-14-quarantine-days-at-hom

▶5月25日(5/26更新)

クルーズ船MV Hondiusから5月10日にテネリフェで下船して退避しマドリードのGómez Ulla軍病院で隔離中だったスペイン人1人が定期PCR検査でハンタウイルス陽性.無症状
https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/spanish-national-evacuated-hantavirus-cruise-ship-tests-positive-2026-05-25/

(5)世界各国の対応(5/23スペイン追記)

①国際的な基本方針
国際的な基本方針は

  • 症例の隔離・治療

  • 接触者追跡

  • ハイリスク接触者の42日間監視・検疫

  • 症状出現時の即時隔離・検査

である.WHOは、親密接触・同居・長時間の屋内接触・防護なしの医療接触・体液曝露などをハイリスク接触とし,最後の曝露から42日間の能動的監視と自宅または施設での検疫を推奨している.低リスク接触者については,通常の検疫やルーチン検査は不要で,自己監視と症状時対応が中心である.
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON601

ECDCは,下船・帰国対応のため,当初は乗船者全員をハイリスク接触者として扱う方針を示し,5/12時点の協議では船内で個室隔離が徹底された5/10をDay 0として42日監視を扱う考えを示している.ただし,各国が自国の法制度・医療体制に応じて措置を調整し得るとも説明している.
https://www.ecdc.europa.eu/en/infectious-disease-topics/hantavirus-infection/surveillance-and-updates/questions-answers-outbreak
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/rapid-scientific-advice-management-passengers-context-andes-virus-outbreak-cruise

国ごとに違いがあり,期間では,WHO/ECDCの基本は42日間ですが、英国とギリシャは45日間,シンガポールは30日間検疫+45日目まで電話監視,オーストラリアは最初の3週間を施設検疫でその後42日まで再評価という運用である.これは,ECDCが各国の国内法・医療体制に応じた調整を認めているためである.

検疫場所の違いでは,スペイン,ギリシャ,アイルランド,オーストラリア,カナダ,シンガポールは施設・病院・専用宿泊施設を重視し,オランダ,英国,ドイツ,米国はリスク評価に応じて自宅隔離と施設管理を組み合わせている.

②スペイン(5/23更新)
スペインは,2026年5月10日を検疫Day 0とし,船内にいた者や確定例と感染可能期間に接触した者を接触者に含めた.クルーズ避難者はマドリードのHospital Central de la Defensa Gómez Ullaで個室検疫とし,少なくとも初期28日間は強化監視,1日2回の体温・症状確認,7日ごとのPCR,症状出現時はprobable caseとして陰圧隔離・専門対応へ移行する運用.【5/23追記】無症状かつPCR陰性が続く接触者について、42日隔離のうち最後の14日間を自宅で完了できる新プロトコルが5/22に発表された.これは自宅には個室,換気、可能なら専用浴室などの条件が必要で,公衆衛生スタッフが毎日確認する.
https://www.lamoncloa.gob.es/serviciosdeprensa/notasprensa/sanidad14/paginas/2026/120526-dia-cero-cuarentena-hantavirus.aspx
https://www.sanidad.gob.es/areas/alertasEmergenciasSanitarias/alertasActuales/fiebreHemorragica/docs/20260513_ProtocolovirusAndes_v2.pdf
https://www.euronews.com/health/2026/05/22/spain-allows-hantavirus-contacts-who-test-negative-to-spend-last-14-quarantine-days-at-hom

③オランダ
RIVM/GGDは,乗船者全員を自宅または検疫施設で管理し,42日間の隔離・監視を実施している.オランダ居住者は原則自宅隔離,帰宅できない外国籍者や乗員はGGDの検疫場所で管理される.RIVMは週次検査,症状時再検査,GGDによる毎日連絡と24時間対応を示している.
https://www.rivm.nl/en/hantavirus/current-information
https://www.government.nl/latest/weblogs/the-work-of-the-ministry-of-foreign-affairs/2026/medical-evacuation-from-cruise-ship-m-v-hondius

④英国
UKHSAはアンデスウイルスを英国でHCID扱いとし,英国人乗客・乗員に最終曝露から45日間の隔離・監視を求めている.テネリフェからの専用便でマンチェスターに帰国した者はArrowe Parkで臨床評価・検査を受け,その後は安全と判断されれば自宅または代替施設で隔離を継続する.症状または陽性の場合は専門感染症センターに移送される.セントヘレナ,アセンション島,トリスタンダクーニャ関係の接触者にも検査・隔離・搬送支援が行われている.【5/18更新】また,治療薬候補として,日英相互協力に基づき,日本にファビピラビル(アビガン®︎)の提供を要請し,日本が提供に応じた(→3-(8)参照).
https://ukhsa.blog.gov.uk/2026/05/12/what-you-need-to-know-about-the-hantavirus-outbreak-linked-to-the-dutch-cruise-ship/
https://www.gov.uk/government/news/ukhsa-update-on-the-hantavirus-cruise-ship-outbreak
https://www.gov.uk/government/news/military-conducts-daring-parachute-drop-to-deliver-critical-medical-support-to-tristan-da-cunha

⑤フランス
フランス政府は、帰国したフランス人5人を病院で検疫・評価し、必要に応じて隔離または検疫を継続、期間は最大42日としています。2026年5月11日にフランス人1人が陽性確認され、22人の接触者が特定・追跡されています。ARSが地域ごとの健康監視を行い、症状が出た場合は高リスク感染症対応経路で専門医療機関の隔離へ移行
https://www.info.gouv.fr/actualite/hantavirus-le-point-sur-les-mesures-sanitaires-en-france
https://www.diplomatie.gouv.fr/fr/presse-et-ressources/decouvrir-et-informer/actualites/cas-d-hantavirus-a-bord-du-navire-mv-hondius-evacuation-des-ressortissants-francais

⑥米国
CDCは,5/12時点で米国内の確定例はないとしつつ,曝露者をNebraska Biocontainment UnitやEmory University Hospital Atlantaで評価・管理している.CDC暫定指針では,高リスク者は42日間の監視,活動制限,自宅または施設での管理,1日2回の保健当局確認,症状時の自己隔離・検査を求めている.標準監視群には通常の移動制限はない.
https://www.cdc.gov/hantavirus/situation-summary/index.html
https://www.cdc.gov/hantavirus/php/emergency-guidance/index.html
https://www.cdc.gov/hantavirus/faq/index.html

⑦カナダ
PHACは,5/10にブリティッシュコロンビア州へ到着したカナダ人乗客4人を専用宿泊施設に移し,最低21日から最大42日,5/10を起点に自己隔離・能動監視している.さらにカナダ国内で5人の潜在的曝露者を確認し,合計9人を高リスク接触者として扱っている.MV Hondiusに4/1以降乗船した乗客・乗員については,42日経過までカナダ行き航空便搭乗を制限する暫定措置も示している.
https://www.canada.ca/en/public-health/news/2026/05/media-update-on-andes-hantavirus-situation.html
https://www.canada.ca/en/public-health/news/2026/05/speaking-remarks-for-the-chief-public-health-officer.html

⑧オーストラリア
オーストラリアは,対象者を専用便・PPE管理下でパースに移送し,RAAF Pearce到着後,Bullsbrook National Resilience Centreで検疫命令下に置く体制である.対象者は到着前時点で全員陰性・無症状とされ,最初の3週間は施設検疫,その後は42日までの残余期間について施設または自宅検疫を再評価する方針
https://www.health.gov.au/ministers/the-hon-mark-butler-mp/media/press-conference-with-minister-butler-parliament-house-14-may-2026
https://www.health.wa.gov.au/Media-releases/2026/May/WA-Health-update-regarding-Hantavirus-situation

⑨ニュージーランド
ニュージーランド保健省は,通常ニュージーランド居住ではない二重国籍者について,現地に留まり身体的接触を避けるよう助言し,現地当局が接触者管理を行うと説明している.別のニュージーランド国民は,オランダからオーストラリアへ移送され,オーストラリア側の検疫体制で管理されている.ニュージーランド国内に既知の曝露者は確認されていないが,帰国時には検疫支援が可能としている.
https://www.health.govt.nz/news/hantavirus-update-14-may

⑩ドイツ
ドイツ連邦保健省は,関係するドイツ人乗客をWHO・EU・外務省・RKIなどと調整して帰国させ,接触者は居住地で検疫し,今後数週間にわたり密な症状監視を行うと説明している.詳細は地域保健当局が判断し,発症時にはSTAKOBネットワークの専門センターで治療可能としている.
https://www.bundesgesundheitsministerium.de/service/begriffe-von-a-z/h/hantavirus

⑪スイス
スイスFOPHは,スイス国内で感染者と接触した人物を特定し,検疫下に置いたと公表している.Hondius関連の感染者1人はチューリッヒ大学病院で治療されており,一般公衆へのリスクは低く,一般向け追加措置は不要とされている.HUGは,Hondius関連検体からアンデスウイルス株を特定したと公表している.
https://www.bag.admin.ch/en/hantavirus-infections
https://www.hug.ch/en/medias/press-release/hantavirus-outbreak-cruise-ship-geneva-university-hospital-have-identified

⑫南アフリカ共和国
南ア保健省は,ヨハネスブルクOR Tambo空港で倒れ死亡したオランダ人女性(Case 2)と,AscensionからSandtonの医療機関へ搬送された英国人重症例(Case 3)を公表した.英国人患者は隔離下で治療され,NICDおよびGauteng保健当局が曝露者の特定・監視を実施している.アフリカCDCは,南ア,Cabo Verde,オランダ,スペイン,英国などが症例調査・隔離・搬送・検査で連携していると説明.
https://www.gov.za/news/media-statements/health-confirms-deaths-tourists-severe-acute-respiratory-infection-04-may
https://africacdc.org/news-item/statement-on-multi-country-hantavirus-cluster-associated-with-cruise-ship-travel/

⑬カーボベルデ共和国
WHOは,カーボベルデ共和国のPraiaで下船した者やその後の接触者が追跡・監視対象であるとしている.オランダ政府は,カーボベルデ沖での医療搬送や現地当局との調整を公表しており,WHO/ECDC専門家やオランダ医療チームが船上対応を支援した.カーボベルデ強化国独自の個別検疫プロトコルは,確認できた公表資料では詳細化されていない.
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON601

⑭アルゼンチン
アルゼンチン保健当局は,MV Hondius号事案を受けて国際協力を開始し,2,500検体分の診断資材提供,臨床管理支援,国内での感染源調査を行っている.24州・地域との会合で監視強化を調整し,旅程再構成と疫学調査を継続している.
https://www.argentina.gob.ar/noticias/argentina-asiste-paises-europeos-con-insumos-de-diagnostico-para-hantavirus
https://www.argentina.gob.ar/noticias/salud-sostiene-y-refuerza-la-vigilancia-epidemiologica-de-hantavirus-en-el-pais
https://www.argentina.gob.ar/noticias/actualizacion-del-boletin-epidemiologico-nacional-de-la-semana-ndeg-17

⑮チリ
WHOは,感染源調査をアルゼンチンおよびチリ当局と進めているとしている.アンデスウイルスはアルゼンチン・チリを含む南米地域で知られるハンタウイルスで,今回の配列調査でも南部チリを含む既知流行地域との関連が検討されている.
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON601
https://www.argentina.gob.ar/noticias/argentina-asiste-paises-europeos-con-insumos-de-diagnostico-para-hantavirus

⑯シンガポール
Communicable Diseases Agencyは,MV Hondius号関連曝露のあるシンガポール居住者2人をNCIDで隔離・検査し,複数検体が陰性だったと発表した.運用は,最終曝露から30日間の検疫,解除前検査,その後45日目まで電話監視である.陽性化した場合は入院隔離して濃厚接触者にも検疫を適用する方針.
https://www.cda.gov.sg/news-and-events/public-health-measures-activated-for-two-singapore-residents-onboard-mv-hondius/
https://www.cda.gov.sg/news-and-events/both-singapore-residents-onboard-mv-hondius-tested-negative-for-hantavirus/

⑰デンマーク
Statens Serum Institutは,MV Hondius号関連で曝露可能性のあるデンマーク人2人を把握し,Danish Patient Safety Authorityが追跡しているとしている.1人は感染者と同じ航空便に搭乗しており,複数回PCR陰性で隔離中である.SSIは国内診断体制を有し,国際当局と連絡を取っている.
https://www.ssi.dk/aktuelt/nyheder/2026/danskers-proeve-for-hantavirus-er-negativ
https://www.ssi.dk/aktuelt/nyheder/2026/ssi-foelger-udbrud-af-hantavirus-paa-krydstogtskib

⑱アイルランド
HPSCは,アイルランド人乗客が帰国後,ECDCおよびWHO助言に沿ってHSE施設で一定期間隔離されると公表している.HSE National Health Protection Officeと保健省がECDC・WHOと連携して監視しており,一般公衆へのリスクは非常に低いとしている.
https://www.hpsc.ie/news/hantavirus-infection-cluster-update.html

⑲ギリシャ
ギリシャ保健省は,無症状のギリシャ人乗客1人をオランダ機・ギリシャ空軍等で帰国させ,救急搬送によりAttikon大学病院の陰圧室へ入院させ,45日間の義務的検疫を実施すると公表している.EODYおよびEKABが搬送・監視を支援している.
https://www.moh.gov.gr/articles/ministry/grafeio-typoy/press-releases/14226-enhmerwsh-gia-ton-epanapatrismo-toy-ellhna-polith-apo-to-kroyazieroploio-mv-hondius
https://www.moh.gov.gr/articles/ministry/grafeio-typoy/press-releases/14227-eirh-nh-agaphda-kh-laquo-den-syntre-xei-kane-nas-lo-gos-anhsyxi-as-gia-ton-xantai-o-e-xoyme-la-bei-ta-aysthro-tera-me-tra-raquo

⑳スウェーデン
スウェーデン公衆衛生庁は,国際的な接触者追跡情報を受け取り次第,地域の感染症管理部門に連絡し,ECDCの助言に沿って曝露者を追跡・助言するとしている.スウェーデン人旅行者2人が地域感染症管理部門のフォロー下にある.同庁はEUのハンタウイルス等リファレンス機能として,アンデスウイルス診断支援も行っている.
https://www.folkhalsomyndigheten.se/vara-amnesomraden/sjukdomsutbrott/hantavirus-internationellt-maj-2026/
https://www.folkhalsomyndigheten.se/nyheter-och-press/nyhetsarkiv/2026/maj/folkhalsomyndigheten-foljer-det-internationella-utbrottet-av-andesvirus/

㉑トルコ
トルコについては,MV Hondius号関連のトルコ国民5人が陰性・無症状で,うち3人は保健省の航空救急機で帰国し,イスタンブールで自宅検疫・毎日42日間の在宅確認とされている.
https://www.hurriyetdailynews.com/3-cruise-passengers-airlifted-to-turkiye-test-negative-for-hantavirus-222033
https://t24.com.tr/gundem/saglik-bakanligindan-hantavirus-aciklamasi-turkiyeye-getirilen-3-vatandasin-test-sonuclari-aciklandi%2C1320936

㉒インド
オランダ政府の帰国便リストでは,インド国民2人が5/10のEindhoven便でオランダへ移送され,非居住者として検疫施設管理の対象になっている.2人は無症状で,WHOおよびスペインの手順に従って下船したとされている.
https://www.government.nl/latest/weblogs/the-work-of-the-ministry-of-foreign-affairs/2026/medical-evacuation-from-cruise-ship-m-v-hondius
https://www.newsonair.gov.in/two-indians-on-hantavirus-hit-cruise-ship-are-safe-embassy/

㉓フィリピン
オランダ政府は,5/12のEindhoven便でフィリピン人乗員17人が到着し,居住者は自宅・非居住者は検疫施設で管理されるとしている.5/10の便にもフィリピン国籍者4人が含まれていた.フィリピン国内当局の詳細プロトコルは確認できないが,報道ではDOHがフィリピン国内確定例なし,乗員は隔離下と説明されている.
https://www.government.nl/latest/weblogs/the-work-of-the-ministry-of-foreign-affairs/2026/medical-evacuation-from-cruise-ship-m-v-hondius
https://english.news.cn/asiapacific/20260509/2aff79d3fec6420b969f20159d1839b4/c.html

㉔日本
UKHSAは,Arrowe Parkで評価された帰国者群に日本人乗客1人が含まれており,この人物は英国のHCID対応,評価,45日隔離・監視枠組みで扱われている.日本の国立健康危機管理研究機構は,MV Hondius事案について,日本国内での感染・ヒト―ヒト拡大リスクは極めて低く、適切な隔離・接触者管理で拡大防止可能と評価している.
https://www.gov.uk/government/news/ukhsa-update-on-the-hantavirus-cruise-ship-outbreak
https://id-info.jihs.go.jp/risk-assessment/hantavirus-pulmonary-syndrome/20260506/index.html

㉕その他
オランダ政府の5/10のEindhoven便には,ベルギー,ポルトガル,ウクライナ,グアテマラ,モンテネグロなどの国籍者も含まれており,オランダ居住者は自宅,非居住者はGGDの検疫施設で管理される枠組みである.
https://www.government.nl/latest/weblogs/the-work-of-the-ministry-of-foreign-affairs/2026/medical-evacuation-from-cruise-ship-m-v-hondius
https://www.ecdc.europa.eu/en/infectious-disease-topics/hantavirus-infection/surveillance-and-updates/andes-hantavirus-outbreak

(6)感染者からのシークエンス(5/17更新)

①スイスでのシークエンス

 ジュネーブ大学病院・チューリヒ大学のチームがCase 7のスイス人感染者から得られたCt 20.5の血液/血漿検体からIllumina MiSeqでシークエンスした,アンデスウイルス3分節(予想される産物はRNA依存性RNAポリメラーゼ,Gn/Gc糖蛋白前駆体,ヌクレオカプシド)の全長コンセンサス配列が以下で公開されている.
https://virological.org/t/complete-sequence-of-orthohantavirus-andesense-virus-swiss-resident-2026/1023

 ANDV/Switzerland/Hu-3337/2026,明確にANDVクレード内に入り,Virological図上ではチリ・アルゼンチン系のANDV配列群の近傍に位置していることから,欧州在来のPuumala/Dobrava系ではなく南米由来アンデスウイルスと整合的ということになる.

②オランダ・南アのシークエンス

 その後,オランダからの検体2件,南アフリカ・ヨハネスブルグからの検体2件もシークエンスが公開された(Case 2, 3, 5, 6).
https://pathoplexus.org/andv/search

 S分節とM分節は全症例間で同一であった.L分節だけに2か所の症例特異的SNPが残り,Case 5に C2139T,Case 7に G576A があり、いずれも参照配列MN258159に対する表記で、どちらも同義変異とされている.すなわち,現時点のアウトブレイク内比較では,アミノ酸置換を伴う症例間差は報告されていない.少なくとも公開された暫定解析の範囲では,伝播性や病原性を変えるような新規変異が検出されてはいない.

 ECDCは,遺伝子解析から確認済み検体が同じ元感染源にリンクしている可能性が高く,今回のウイルスは南米で既知のアンデスウイルスに類似しており,新しい変異株ではなく,他のアンデスウイルスより広がりやすい/重症化しやすい証拠は現時点でないと説明している.
https://www.ecdc.europa.eu/en/infectious-disease-topics/hantavirus-infection/surveillance-and-updates/questions-answers-outbreak

③パスツール研究所のシークエンス(5/17追加)

 パリのパスツール研究所が,フランスへ帰国したMV Hondius乗客(Case 9)の血液検体からアンデスウイルスを完全シークエンスしたと発表した.得られたウイルス配列は船内の他の陽性例で検出されたアンデスウイルス株と同一と確認された.その配列は南米南部で既知のアンデスウイルス株に近縁であり,現時点で「新しい特徴を持つ特別な変異株」の出現を示す要素はないとしている.
https://www.pasteur.fr/fr/espace-presse/documents-presse/institut-pasteur-confirme-sequencage-complet-origine-latino-americaine-hantavirus-andes-detecte-bord

 具体的には南米で循環する一部のアンデスウイルス株,特にげっ歯類由来株を含む既知株と約97%程度近いと説明している.残り約3%の差は長く循環しているウイルスの自然変異の範囲であり,旅行者間で検出された株の性質に影響しているようには見えないとのことであった.

 97%は「船内で3%も変異した」という意味ではなく,これは,南米で過去に得られている一部の既知アンデスウイルス配列,げっ歯類由来株を含む参照配列との距離を表している.アウトブレイク内では,既存の詳細解析では最大でも症例あたり1 SNP程度の差しか報告されていない.

(7)最初の感染源(5/20更新)

 MV Hondius号関連アウトブレイクのCase 1が「どこで」「何から」感染したかは公式には確定していない.Case 1は4/1にアルゼンチンのウシュアイアからMV Hondius号に乗船し,4/6に発症したことから,乗船前に南米陸上で,感染した野生齧歯類の尿・糞・唾液,またはそれらで汚染された環境からアンデスウイルスに感染した可能性が高いとされている.実際,乗船前には3か月以上,アルゼンチン,チリ,ウルグアイを旅行しており,このどこかで感染したことになる.
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON600

 当初は,アルゼンチン当局がウシュアイアのごみ処分場でのバードウォッチングを有力仮説として調査しているとしたが,一方で,ティエラ・デル・フエゴ州当局は,Case 1の滞在が3/29午後から4/1までの約2日間と短く,廃棄物処分場内に入る公式バードウォッチングツアーがないこと,潜伏期間や同州での患者発生歴から同州での感染可能性は「ほぼゼロ」と強く否定している.
https://apnews.com/article/f9f82fed60cfb77c4c6787fded0e9f10
https://salud.tierradelfuego.gob.ar/hantavirus-en-crucero-la-posibilidad-de-que-ese-contagio-se-haya-producido-aca-es-practicamente-nula/
https://infuetur.gob.ar/noticias/2595

 アルゼンチン保健省は,今回のANDV株がChubut,Río Negro,Neuquénおよび南部チリで既知のアンデスウイルスと関係する可能性を示している.また,ANLIS-Malbránは,MV Hondius号関連ウイルス配列が2018年にNeuquénで検出された株に近縁と報告している.ただし,同省は推定感染期間中にCase 1がアンデスウイルス流行地域にいたことを確認できていないため,発生地は確定できない.関連株がウルグアイなどにも存在することがわかっているが,特定する根拠は出ていない.
https://www.argentina.gob.ar/noticias/argentina-asiste-paises-europeos-con-insumos-de-diagnostico-para-hantavirus
https://www.argentina.gob.ar/noticias/actualizacion-del-boletin-epidemiologico-nacional-de-la-semana-ndeg-17

【5/20更新】アルゼンチン当局は,最初の感染源がどこだったのかを突き止めるため,Malbrán研究所が主導で出航地ウシュアイアの周辺の森林に現地チームが150個の箱わなを設置し,捕獲したげっ歯類から血液サンプルを取り,ブエノスアイレスのマルブラン研究所で検査する予定で,結果判明には最大1か月かかるとのことである.
https://apnews.com/article/6e02980f2ab1637e3ceeddc7d1429b5f

2.今回のクルーズ船MV Hondius号のハンタウイルス集団感染事例に関するQ&A(現在作成中)

現在作成中

3.ハンタウイルス(特にアンデス株)について

 2026年5月,クルーズ船MV Hondius号に関連して,アンデス株によるハンタウイルス感染症クラスターが報告された.世界保健機関(以下,WHO)は,2026年5月7日時点で死亡3例,確定例5例を報告し,関与ウイルスをアンデスウイルスと明記している[1].

 アンデスウイルスは,げっ歯類由来感染を基本とするハンタウイルスの一種であるが,ハンタウイルスの中で例外的に,近接・長時間接触に伴う限定的なヒト-ヒト感染が確認されている[1,2].ここではでは,MV Hondius号事例を入口に,アンデスウイルスの位置づけ,症状経過,感染伝播,過去のアウトブレイク等をまとめた.

(1)ハンタウイルスの由来

 ハンタウイルス感染症は朝鮮戦争時に国連軍兵士の間で問題になった韓国出血熱が由来である.のちにこの疾患は,腎障害,低血圧,血管透過性亢進,出血傾向を中心とする腎症候性出血熱(hemorrhagic fever with renal syndrome,以下HFRS)として整理された.Hantaan virusは,韓国のハンターン川(漢灘江)周辺の流行地域にちなみ命名され,セスジネズミ(Apodemus agrarius)が主要宿主として認識された[4].

 Leeら[5]は1978年,韓国出血熱の原因病原体をセスジネズミ由来材料から同定した.これが,現在のハンタウイルス研究の基盤になる古典的論文とされる.

 ただし,このハンターンウイルスは,現在クルーズ船で問題となっているアンデスウイルスではない.ハンタウイルスという大きなウイルス群の中に,

  • 東アジアでHFRSを起こすハンターンウイルス

  • 欧州で流行性腎症を起こすプーマラウイルス

  • 都市ラット由来のソウルウイルス

  • 北米でHPSを起こすシンノンブレウイルス

  • 南米でHPS/HCPSを起こすアンデスウイルス

などが含まれる.
※HPS: ハンタウイルス肺症候群(hantavirus pulmonary syndrome)
米HCPS: ハンタウイルス心肺症候群(hantavirus cardiopulmonary syndrome)

(2)アンデスウイルスの位置づけ

 アンデスウイルスの特徴は,

  1. 南米のHPS/HCPS原因ウイルス

  2. ハンタウイルスの中で例外的にヒト-ヒト感染を起こし得る

の2点が重要となる.前者だけなら,北米のシンノンブレウイルスと同じく米州型HPSの文脈で読める.後者があるため,ANDVだけは接触者管理と医療現場での感染対策を一段慎重に考える必要がある.WHOや欧州疾病予防管理センター(以下ECDC)は,ハンタウイルスの中でヒト-ヒト感染が唯一報告されているのはアンデスウイルスであると明記している[2,6].

(3)増悪機序

 後述の通り,反対ウルスは潜伏期が非常に長いが,発症すると重症化まで非常に速いという,一見矛盾した特徴を持つ.これは,感染した内皮細胞を派手に溶かして壊すウイルスではないからである.

 初期は非細胞傷害的・免疫回避的に複製し,肺・内皮系へ広がるが,血管バリア破綻という臨床的イベントがなかなか起きないまま潜伏期が長くなる.そして肺微小血管内皮の透過性制御が閾値を超えて破綻することで発症に至り,VEGFR2/Src/VE-cadherin,RhoA,KKS/ブラジキニン,炎症性サイトカイン,血小板/凝固異常が重なり,血漿が肺に漏れて肺水腫・低酸素・ショックが短時間で進行する[17].

(4)症状経過

 アンデスウイルス感染症は,HFRSとしてではなく,HPS/HCPS(ハンタウイルス肺症候群/ハンタウイルス心肺症候群として進行する.

①潜伏期と初期症状

 CDCは,アンデスウイルス感染症の症状は曝露後4〜42日で出現し,初期症状はインフルエンザ様に見え得るとしている[3].具体的には,頭痛,発熱,筋肉痛,背部痛,悪心,嘔吐,下痢,咳,胸痛,食欲低下,呼吸困難などである[3].

 WHOの一般的なハンタウイルス資料では,HPS/HCPSは発熱,頭痛,筋肉痛,消化器症状などで始まり,その後,咳,息切れ,肺への液体貯留,ショックへ進み得ると整理されている[2].MV Hondius号事例でも,発熱,消化器症状,急速な肺炎,ARDS(急性呼吸促迫症候群),ショックが報告されている[7].

②HPS/HCPSの危険な点

 アンデスウイルスの臨床上の厄介な点は,初期症状だけでは重症化を予測しにくいことである.発熱,下痢,筋肉痛,頭痛だけを見れば,インフルエンザ,COVID-19(新型コロナウイルス感染症),市中肺炎,レプトスピラ症,デング熱,敗血症などとの鑑別が問題になる.

 一方で,HPS/HCPSでは,数日の前駆症状のあとに呼吸困難,低酸素,肺水腫,低血圧,ショックへ急速に進行する.今回のクルーズ船MV Hondius号事例のように,医療アクセスに遅れが生じる環境では予後に直結する.

③HFRSとの違い

 HFRSでは腎障害,低血圧,出血傾向,乏尿,多尿,回復期という腎臓型の流れが前面に出る.これに対して,アンデスウイルスでは肺血管透過性亢進,非心原性肺水腫,循環不全が中心になる.

 したがって,アンデスウイルス感染症疑いでは,「発熱+消化器症状+南米曝露+げっ歯類曝露またはアンデスウイルス疑い患者との近接接触」という組み合わせで,HPS/HCPSを早めに鑑別へ入れる必要がある.

(5)感染伝播

①基本はげっ歯類由来感染

 アンデスウイルスでも,基本の感染経路はげっ歯類由来である.WHOは,ハンタウイルス感染は感染げっ歯類の尿,糞,唾液への接触で起こり,清掃,農作業,林業,げっ歯類汚染住居での宿泊などが曝露リスクになる[2].CDCも,アンデスウイルスは感染げっ歯類やその尿,唾液,糞への接触,汚染表面に触れた後に口・鼻・目を触ること,まれに患者との近接接触で広がると説明している[3].

ここでいう空気感染・エアロゾル曝露とは,感染げっ歯類の排泄物を含む粉じんを吸い込むことであり,患者から広範に空間感染するという意味ではない.この区別が,アンデスウイルスのリスクコミュニケーションでは特に重要である.

②アンデスウイルスでの限定的ヒト-ヒト感染

 アンデスウイルスの例外性は,患者との近接・長時間接触でヒト-ヒト感染が起こり得る点にある.WHOやCDCは,ヒト-ヒト感染はハンタウイルスの中でアンデスウイルスでのみ報告されており,通常は病気の人と近接接触した人に限られ,家庭内接触者や親密な接触者など,近接・長時間接触に関連するとしている[2,3].

 ECDCは,アンデスウイルスのヒト-ヒト感染は近接・長時間接触後に記録されており,MV Hondius号事例では,閉鎖環境と共有空間・活動を考慮して,予防原則上,船内全員を接触者として扱うとした[8].一方で,容易には伝播しないため,感染予防策が実施されれば地域社会で広範に拡大する可能性は低いとも評価している[8].

③感染性のタイミング

 CDCは,アンデスウイルスでは通常,症状がある時期に感染性があるとしている[3].ECDCの資料では,アンデスウイルスの感染性は発症初日に高いとされ,発症1〜2日前の感染性もあり得るとされているが,無症状者が伝播に大きく関与する根拠は限られている[8].

 対応としては,濃厚接触者には症状モニタリングを行い,発熱,咳,息切れ,筋肉痛,嘔吐,下痢などが出た時点で,自己隔離,医療相談,検査へつなげる.ただし,無症状者を一律に高感染性と扱う必要がある,という意味ではない

(6)過去のアンデスウイルスのヒト-ヒト感染アウトブレイク事例

①1996年,アルゼンチン南部
 Padulaら[11]は1998年,アルゼンチンのHPSアウトブレイクについて,ANDVのヒト―ヒト感染を示す分子疫学的根拠を報告した.この論文は,ハンタウイルスでヒト-ヒト感染を考える上で最初期の重要文献となっている.それまでハンタウイルスは,ほぼげっ歯類由来感染として理解されていたが,遺伝学的解析により,単なる同じ環境曝露だけでは説明しにくい伝播連鎖が示された.

②2005年,アルゼンチンの複数クラスター

 Martínezら[12]は2005年,アルゼンチンの複数クラスターを解析し,アンデスウイルスのヒト-ヒト感染を報告した.同研究では,近接・長時間接触がある状況で伝播が疑われ,潜伏期は15〜24日と推定された.この報告で,アンデスウイルスのヒト-ヒト感染が「誰とすれ違っても起こる」という様式ではなく,近接した関係性,家庭内,親密接触,ケア提供などの文脈で問題になることが示された.

③2011年,チリ南部の家庭内・医療関連伝播
 Martínez-Valdebenitoら[13]は2014年,チリ南部の2011年アウトブレイクを報告した.この事例では,アンデスウイルス感染5例が記述され,2例は家庭内接触者,2例は医療従事者として曝露後に発症した.この報告は,アンデスウイルスを医療現場で扱う場合,標準予防策だけでなく,患者の体液,近接ケア,エアロゾル発生手技,患者搬送などの場面で,リスクに応じた防護を上乗せする必要があることを示唆している.

④2014年,アルゼンチンの3例クラスター
 Alonsoら[14]は2020年,2014年アルゼンチンの3例クラスターで,アンデスウイルスの全ゲノムシーケンスを用いてヒト-ヒト感染を確認した.以前の部分配列に基づく分子疫学よりも,伝播連鎖をより精密に検討した点が重要となる.同本研究では,ANDVはハンタウイルスの中でヒト-ヒト感染し得る特異な存在であり,感染は早期前駆期に起こる可能性があるとしている.

⑤2018〜2019年,アルゼンチン・チュブ州
 アンデスウイルスによるヒト-ヒト感染で最も重要な近年論文の一つが,Martínezら[15]が2020年にNEJM誌に報告した論文である.同研究では,2018年11月から2019年2月にかけて,アルゼンチンのチュブ州でアンデスウイルスのヒト-ヒト感染が発生し,34確定例,11死亡が報告された.

 このアウトブレイクでは,単一のげっ歯類由来導入後,3人の症候性患者が混雑した社会的イベントに参加したことが伝播を駆動したと解析された.18例が確認された後,確定例の隔離と接触者の自己隔離が実施され,流行制御に寄与した可能性が高いとされている.

(7)診断

 アンデスウイルス感染症を疑う契機は,症状だけではなく曝露歴である.発熱,筋肉痛,頭痛,消化器症状,咳,息切れがある患者で,南米滞在,げっ歯類曝露,小屋・倉庫・農村・森林・キャンプ滞在,げっ歯類汚染環境の清掃,アンデスウイルス感染症疑い例との近接・長時間接触,があれば,HPS/HCPSを鑑別に入れる.

 WHOは,ハンタウイルス感染症の初期症状は他の発熱性・呼吸器感染症と重なるため,げっ歯類曝露,職業・環境リスク,渡航歴,既知症例との接触歴の確認が重要だとしている[2].検査では,ハンタウイルス特異的IgM抗体,IgG抗体価上昇,急性期の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(以下RT-PCR)によるウイルスRNA検出が用いられる.

 今回のMV Hondius号事例でも,WHOはHPS診断として,IgMまたはIgG抗体価上昇を確認する酵素免疫測定法(以下ELISA),またはRT-PCRによるウイルスRNA検出を挙げている[7].ECDCは,症状がある人では血清検査またはPCRを行う一方,早期や潜伏期では陰性でも感染を完全に除外できないと注意している[8].

(8)治療・予防

 アンデスウイルスに対する特異的抗ウイルス薬やワクチンは,現時点で実用的に頼れるものはない.ハンターンウイルスに対する不活化ワクチンは1990年に承認されてはいるが,アンデスウイルスには有効ではない.このため,症状は急速に進行し得ることから早期医療が重要とされ,支持療法が主体となる[2,3].

 HPS/HCPSでは,呼吸不全と循環不全への対応が中心になり,酸素投与,人工呼吸管理,循環管理,昇圧薬,慎重な輸液,ICU管理が必要で,重症例では体外式膜型人工肺(以下ECMO)が検討されることもある.HFRSのように腎不全が中心となる病型では透析が必要になることがあるが,アンデスウイルスではまずHPS/HCPSとして呼吸循環不全を想定する.

【5/18追加】今回のクルーズ船MV Hondius関連アウトブレイクでは,英国からの要請を受けて日本から備蓄されているファビピラビル(高病原性鳥インフルエンザやSFTSに用いられるアビガン®︎)を提供している.ただし,これは標準治療薬としての提供ではない.

 ハンタウイルスに対するファビピラビルについてはまだ研究が少ない.2021年の細胞実験研究[18]では,リバビリンとファビピラビルはいずれもハンターンウイルス感染を強く抑え,IC50は約3 µM、IC90は約10 µM,併用では相加的な効果が示されている.ハムスター動物モデル研究[19]では,経口ファビピラビル100 mg/kg/dayを1日2回投与するとアンデスウイルス感染ハムスターでは100%生存を示した.ただし,ウイルス血症が出た後の遅延投与では防御効果がなく,早期投与に効果が限定される可能性も示唆された.

 一方でヒトでの臨床治験はまだ行われていない.今回のクルーズ船MV Hondius号関連アウトブレイクでは,欧州レベルで評価プロトコルを準備中とのことである.

(9)感染対策

 医療現場では,標準予防策を基本にする.WHOは,疑い例・確定例では標準予防策に加えて感染経路別予防策を用い,エアロゾル発生手技では空気予防策を用いるとしている[2].ECDCも,症状のある人をケアする医療現場では標準予防策と飛沫予防策を用い,エアロゾル発生手技では空気予防策へエスカレーションするとしている[8].

 具体的な待機・隔離・検査方針は国や地域の公衆衛生当局ごとに異なるが,対応期間としてはどの国も45日間または6週間を目安としている.

(10)引用文献

[1] World Health Organization. WHO’s response to hantavirus cases linked to a cruise ship. 2026 May 7.
https://www.who.int/news/item/07-05-2026-who-s-response-to-hantavirus-cases-linked-to-a-cruise-ship
[2] World Health Organization. Hantavirus. Fact sheet. 2026 May 6.
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus
[3] Centers for Disease Control and Prevention. About Andes Virus. 2026 May 7.
https://www.cdc.gov/hantavirus/about/andesvirus.html
[4] Page WF. Hemorrhagic Fever with Renal Syndrome. In: Medical Follow-Up Agency, Institute of Medicine. Health Consequences of Service During the Persian Gulf War. 1991.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK234463/
[5] Lee HW, Lee PW, Johnson KM. Isolation of the etiologic agent of Korean Hemorrhagic fever. J Infect Dis. 1978 Mar;137(3):298-308.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24670/
[6] European Centre for Disease Prevention and Control. Factsheet on orthohantavirus infections. 2026 May 4.
https://www.ecdc.europa.eu/en/infectious-disease-topics/hantavirus-infection/factsheet-orthohantavirus-infections
[7] World Health Organization. Hantavirus cluster linked to cruise ship travel, Multi-country. Disease Outbreak News. 2026 May 4.
https://www.who.int/emergencies/disease-outbreak-news/item/2026-DON599
[8] European Centre for Disease Prevention and Control. Hantavirus-associated cluster of illness on a cruise ship: ECDC assessment and recommendations. 2026 May 6. doi: 10.2900/6502463.
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/hantavirus-associated-cluster-illness-cruise-ship-ecdc-assessment-and
[9] Centers for Disease Control and Prevention. Statement on the M/V Hondius Cruise Ship. 2026 May 6.
https://www.cdc.gov/media/releases/2026-hantavirus-confirmed-cruise-ship.html
[10] World Health Organization. WHO Director-General’s opening remarks at the media briefing - 7 May 2026. 2026 May 7.
https://www.who.int/news-room/speeches/item/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing—7-may-2026
[11] Padula PJ, Edelstein A, Miguel SD, et al. Hantavirus pulmonary syndrome outbreak in Argentina: molecular evidence for person-to-person transmission of Andes virus. Virology. 1998 Feb 16;241(2):323-330. doi: 10.1006/viro.1997.8976.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9499807/
[12] Martinez VP, Bellomo C, San Juan J, et al. Person-to-person transmission of Andes virus. Emerg Infect Dis. 2005 Dec;11(12):1848-1853. doi: 10.3201/eid1112.050501.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16485469/
[13] Martinez-Valdebenito C, Calvo M, Vial C, et al. Person-to-person household and nosocomial transmission of Andes Hantavirus, Southern Chile, 2011. Emerg Infect Dis. 2014 Oct;20(10):1637-1644. doi: 10.3201/eid2010.140353.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25272189/
[14] Alonso DO, Pérez-Sautu U, Bellomo CM, et al. Person-to-Person Transmission of Andes Virus in Hantavirus Pulmonary Syndrome, Argentina, 2014. Emerg Infect Dis. 2020 Apr;26(4):756-759. doi: 10.3201/eid2604.190799.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32186494/
[15] Martínez VP, Di Paola N, Alonso DO, et al. “Super-Spreaders” and Person-to-Person Transmission of Andes Virus in Argentina. N Engl J Med. 2020 Dec 3;383(23):2230-2241. doi: 10.1056/NEJMoa2009040.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33264545/
[16] Centers for Disease Control and Prevention. How to Clean Up After Rodents. 2024 Apr 8.
https://www.cdc.gov/healthy-pets/rodent-control/clean-up.html
[17] Safronetz D, Zivcec M, Lacasse R, et al. Pathogenesis and host response in Syrian hamsters following intranasal infection with Andes virus. PLoS Pathog. 2011 Dec;7(12):e1002426. doi: 10.1371/journal.ppat.1002426. Epub 2011 Dec 15.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22194683/
[18] Mayor J, Engler O, Rothenberger S. Antiviral Efficacy of Ribavirin and Favipiravir against Hantaan Virus. Microorganisms. 2021 Jun 15;9(6):1306. doi: 10.3390/microorganisms9061306.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34203936/
[19] Brocato RL, Hooper JW. Progress on the Prevention and Treatment of Hantavirus Disease. Viruses. 2019 Jul 4;11(7):610. doi: 10.3390/v11070610.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31277410/

いいなと思ったら応援しよう!