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イラン戦争18日目〜踏み絵と通れないタンカー〜

前回、「問いの数が増えている」と書いた。

18日目。踏み絵が届いた。イランから。そしてアメリカから。


「敵以外は通していい」

3月14日、イランのアラグチ外相がMSNBCのインタビューでこう言った。
「ホルムズ海峡は開いている。閉じているのは我々の敵——我々を攻撃している者とその同盟国——のタンカーと船舶だけだ。他は自由に通れる」(NY Post、Hindustan Times、LiveMint、新華社、BRICS News)。

同じ日、インド船籍のLPGタンカー2隻がホルムズ海峡を通過した。インドの港湾・海運大臣が「早朝に安全に通過し、インドに向かっている」と確認している(Reuters)。

海峡は開いていると証明してみせた。ただし条件付きで。
「those who are attacking us and their allies」。問題はこの「allies」の範囲だ。アラグチは定義しなかった。日米安保条約がある日本は「同盟国」か。答えによっては、日本のタンカーはホルムズ海峡を通れない。

インドは通れた。日米安保条約のような軍事同盟をどの国とも結んでいない。NATOにもいない。イランにとってインドは、かつての原油顧客であり、チャバハル港を共同で開発するパートナーであり、BRICS加盟国でもある。2018年まではイラン産原油の主要な買い手で、米ドルを通さないルピー建て決済の枠組みまで構築していた。米国の制裁強化で原油輸入はほぼ止まったが、外交パイプは切れていない。モディ首相は開戦2日前にイスラエルのクネセトで演説し、ハメネイ師の弔問帳には署名しなかった。実態は米国寄りだと複数のメディアが指摘している。それでもイランはインドのタンカーを通した。「allies」の定義にインドは入らない。軍事同盟がないからだ。

日本にはある。

もう一枚の踏み絵

同じ3月14日の深夜、共同通信が速報を打った。
トランプがTruth Socialに書いた。「多数の国が軍艦を送ってくれるだろう。ホルムズ海峡を開放し、安全にするために」。別の投稿で日本、中国、韓国、英国、フランスを名指しした(47NEWS、Guardian、Kurdistan24)。
踏み絵が2枚重なった。

アラグチが「同盟国のタンカーは通さない」と言い、トランプが「軍艦を出せ」と言った。日本が艦船を出せば、イランから見て「同盟国」が確定し、タンカーは通れなくなる。出さなければ、トランプとの関係が壊れる。どちらに答えても損をする。

アラグチはこの構造を分かっている。同じインタビューで、トランプの要請を「begging(物乞い)」と呼び、近隣国に「外国の侵略者を追い出せ」と呼びかけた。

イランは軍事で劣る。空爆される島があり、壊される宇宙研究センターがある。だが外交で同盟にくさびを打つ手は失っていない。

45隻と24人

日本船主協会によれば、ペルシャ湾内に日本関連船舶45隻が留め置かれている。うち5隻に日本人船員24人が乗っている(毎日新聞、TBS、国交相会見 3/13)。

理事長の篠原康弘はこう言った。「船舶・貨物が人質にされ、戦争の道具になっている」(Yahoo!ニュース、TBS News Dig)。商船三井の船1隻は船体尾部が損傷している。全船と交信はできているが、動けない。ホルムズ海峡は閉まっていて、フジャイラの迂回路にも火がついた。

出せない法律

トランプは「軍艦を出せ」と言った。日本には出せる法律がほとんどない。
自衛隊がホルムズ海峡周辺で動くには、安保関連法上3つの道がある。存立危機事態の認定、重要影響事態の認定、海上警備行動の発令。いずれも過去に一度も使われたことがない。

存立危機事態は2015年の安保法制で新設された。安倍首相(当時)が国会で繰り返し例示したのが、まさにホルムズ海峡の機雷封鎖だった。機雷が敷設され、原油供給が途絶え、国民生活に「死活的な影響」が及ぶとき、自衛隊が掃海に出られる——という論理だ。ただし安倍自身が「現実的に想定しているわけではない」とも答弁している。認定には武力行使の新3要件を満たす必要があり、国会承認もいる。

高市首相は3月12日の衆院予算委で問われ、停戦合意前の機雷除去は「武力の行使に当たる可能性がある」と答弁した。自衛隊を派遣することは「想定できない」。翌13日にも「何ら決まっていない」と繰り返した。

海上警備行動なら国会承認は不要で、防衛大臣の命令で護衛艦を出せる。だが隊員が行使できるのは警察権だけで、武器使用は極めて限定的だ。政府筋は「攻撃されたらどうするのか」と否定的な見方を示している。IRGCの高速艇やミサイルが飛び交う海域に、警察権しか持たない護衛艦を出す。何のために。

2019年にも同じ問いがあった。トランプ政権がホルムズ海峡の有志連合(IMSC)への参加を要請した。安倍政権はイランとの関係を考慮し、有志連合には加わらなかった。代わりに「日本独自の情報収集活動」として護衛艦1隻とP-3C哨戒機を派遣。活動範囲からホルムズ海峡自体を外した。イランを刺激せず、米国の顔も立てる「妥協の産物」だったと当時報じられた。

あのとき海峡は開いていた。今は閉まっている。45隻が中にいる。同じ妥協は通用しない。

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