年金の「不都合な真実」〜250兆円積み上げても給付が減る理由
自民党がiDeCoの追加拠出枠拡大を提言した。対象は50歳以上、氷河期世代の老後支援が名目だ。
通常の制度設計なら現役世代全体に広げるはずが、この層に限定された。氷河期救済という体裁を取りながら、投票行動に直結する世代に絞った政治的判断が透けて見える。
政府がこういう制度を作るとき、裏にあるメッセージは大抵一つだ。「自分で備えてくれ」。
年金は「仕送り」の仕組み
日本の公的年金は賦課方式で運営されている。現役世代が払った保険料が、そのままその月の高齢者への給付に回る。積み立てではなく、仕送りだ。
対になる制度が積立方式だ。自分が払った保険料を自分の老後に受け取る仕組み。賦課方式は違う。払った金は今月の高齢者に消え、自分の老後は次世代に託される。
この設計は、人口が増え続けることを前提にしている。現役が多く、受給者が少なければ成立する。
少子化が確定した社会では、数学的に持続が難しい。1970年には現役9人で高齢者1人を支えていた。騎馬戦の構図だ。現在は2人で1人。2050年代には1.3人で1人、ほぼ肩車になる。
払う人が減り、もらう人が増える。給付水準を下げるか、保険料を上げるか、支給開始年齢を後ろにずらすか。政府が取れる手段はこの三つしかない。
実際、マクロ経済スライドという仕組みで給付は毎年実質的に目減りしている。
この仕組みは物価や賃金が上がっても、その分を給付に反映させない。名目額は据え置きでも、物価上昇の下では実質的に購買力が下がる。毎年少しずつ、気づかれない速度で。2004年の導入から20年。累積すれば給付水準は1割以上目減りしている計算になる。
支給開始年齢の引き上げ議論も定期的に浮上する。
250兆円の使い道
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用する積立金は、250兆円を超える。世界最大級の機関投資家だ。
2001年度の運用開始以来、累積収益は160兆円を超える。単年度で数十兆円の利益を出した年もある。株高の恩恵を受けて運用成績は近年悪くない。
それでも給付水準は抑制される。なぜか。
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