「議員の給料を成果で決めろ」が行き詰まる理由
1月16日夜のAbema Primeで、あおちゃんぺさんがこう言っていました。「議員によって給料を変えるべき」と。多くの視聴者が頷いたはずです。「働かない議員に高い給料を払いたくない」——その感情は、わかります。
では「成果」とは何か。
出席率? 座っていればクリアできます。質問回数? 形式的な質問を量産すればいい。法案成立数? 与党にいれば自動的に増える。どの指標も操作可能です。政治の成果を測る客観的な基準など存在しません。
もっと根本的な問題が残ります。誰がその成果を判断するのか。
第三者機関を作るとしましょう。その機関が議員の報酬を決めるなら、その機関こそが最大の権力者です。選ばれてもいない人間が、選ばれた代表を評価する。それは民主主義ではない。
イギリスの「成功例」は成果主義ではない
「イギリスには独立機関がある」という反論があるかもしれません。
2009年、イギリスでは議員経費の不正請求スキャンダルが発覚し、独立議会倫理基準委員会(IPSA)が設立されました。議会とは完全に別組織で、経費の審査と公開を担っています。すべての支出がオンラインで閲覧可能になり、国民の55%が「改善した」と評価しています。
ただし、IPSAがやっているのは「経費の透明化」です。「成果による報酬差」ではない。議員の給与は一律のまま。つまり、成果主義の成功例ではなく、透明性確保の成功例です。
日本で試みられた「成果報酬」の末路
実は日本でも、地方議会で成果主義が試みられたことがあります。
熊本県五木村は2010年、全国初の成果報酬制を導入しました。外部の評価委員が一般質問の内容などを三段階で評価し、「優秀」なら満額、「普通」ならゼロ。結果は——すでに廃止されています。
福島県矢祭町は2008年から日当制を導入しました。議会出席1日につき3万円。年間報酬は約100万円。「議員の働きを可視化する」という理念でしたが、2024年3月、月額制に戻しました。「なり手がいなくなる」「議員活動の妨げになる」という声に押されて。
成果で報酬を変える試みは、どちらも持続しなかった。
では、どうすればいいのか
議員を評価する仕組みは、既に存在しています。
選挙です。
気に入らなければ落とせばいい。4年に一度、あるいは解散のたびに、国民全員が評価権を行使できる。この権限が有権者全員に分散していること——それが民主主義の本質です。
「でも選挙では変わらない」という声もあるでしょう。
投票率を見てください。日本は55.9%。OECD36カ国中、下から7番目です。義務投票制のないスウェーデンは82%、韓国は78%。主権者教育や投票環境の整備で、高い投票率を維持している国はある。
投票率5割。半分の有権者が権利を放棄しているのに、「議員が民意を反映しない」と嘆く。筋が通りません。
本当の問題は「透明性」
成果主義より先に解決すべき問題があります。
国会議員には歳費(年間約2200万円)とは別に、月額100万円の「調査研究広報滞在費」が支給されています。旧名称は「文書通信交通滞在費」、通称「文通費」。長らく使途報告の義務がなく、「第二の給与」と呼ばれてきました。
2021年の衆院選後、在職わずか1日の新人議員にも満額支給されたことが問題化。2022年に名称変更と日割り支給への改正が行われましたが、使途公開は先送りされました。ようやく2024年12月、使途公開と残金返納を義務付ける改正法が成立。施行は2025年8月です。
イギリスのIPSAが示したのは、「成果主義」ではなく「透明性」の重要さでした。日本はその透明性すら、ようやく一歩を踏み出したばかりです。
成果主義の導入を求める前に、まず投票所へ行けばいい。評価する手段は、すべての有権者の手の中にあります。使っていないだけで。
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