2025年ニューヨーク市長選挙の結果分析〜マムダニ氏当選で何が変わるのか〜
2025年11月4日、全米最大の都市ニューヨークで歴史的な市長選が行われました。勝利したのは34歳の急進左派、ゾーラン・マムダニ氏。イスラム教徒として初、南アジア系として初、そして100年以上ぶりの若さでの市長誕生です。この結果は単なる地方選挙の枠を超え、米国政治の大きな転換点となるかもしれません。
選挙結果の全貌
マムダニ氏は50.4%の得票率で100万票以上を獲得しました。対抗馬の元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ氏は41.6%で約85万5,000票、共和党のカーティス・スリワ氏は7.1%で約14万6,000票でした。
注目すべきは投票総数です。200万票以上という数字は、1969年以来初めてこの数字を超えた選挙となりました。マムダニ氏自身も1969年以来初めて100万票を超えた市長候補です。
予備選の段階から勢いは明らかでした。6月の民主党予備選では、ランクチョイス投票の最終結果でマムダニ氏が56.4%、クオモ氏が43.6%。12ポイント差という明確な差をつけています。
マムダニ氏とは何者か
1991年、ウガンダのカンパラで生まれたマムダニ氏。母は映画監督のミラ・ナイール、父はコロンビア大学の学者マフムード・マムダニという知識人家庭の出身です。
7歳でニューヨーク市に移住し、名門ブロンクス科学高校を経てボウドイン大学でアフリカーナ研究の学士号を取得しました。2018年に米国市民権を取得しています。
政治家になる前は住宅カウンセラーとして働き、クイーンズ地区の低所得者向けに立ち退き通知への対応を支援していました。この経験が政治を志すきっかけになったといいます。
2021年からニューヨーク州議会議員(クイーンズ地区アストリア選出)を務めていますが、わずか4年の議員経験しかありません。トランプ大統領が「経験も実績もない」と批判したのも、この点を指しています。
「手頃な価格」を掲げた公約
マムダニ氏の政策は一貫して「アフォーダビリティ(手頃な価格)」に焦点を当てています。
家賃凍結が最大の目玉です。200万人以上が住む家賃安定化住宅の家賃上昇を完全に凍結します。ニューヨーク市内のワンベッドルームの家賃中央値は3,350ドル(約51万円)で、5年間で24%も上昇しました。年収の半分を家賃に充てざるを得ない層が多く、相対的貧困率は25%に達しています。
市営バスの完全無料化も打ち出しました。現在、片道約500円かかるバス運賃をゼロにします。推定コストは年間7億ドルです。
ユニバーサル保育の実現も約束しています。6ヶ月から5歳までの子供向けに無料保育を提供するというものです。
さらに最低賃金を2030年までに時給30ドルに引き上げ、各区に1店舗ずつ市営食料品店を設置する計画も示しました。
財源はどう確保するのか。法人税率を11.5%に引き上げて年間50億ドル、年収100万ドル以上の高所得者に2%課税して年間40億ドル、合計90億ドルの増収を見込んでいます。
経済学者が警鐘を鳴らす理由
日本経済新聞に掲載された学習院大学の鈴木亘教授のコメントが印象的でした。
「家賃規制は、経済学者が昔から、ダメな政策の典型的な例として挙げる有名なもの」だと指摘します。1960年代のサミュエルソンの経済学教科書にも記述があるほど、古典的な政策失敗例だというのです。
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