尿でがんがわかる?Science Advances論文の衝撃
2026年2月20日、Science Advancesに載った論文に驚きました。
何が発表されたか
東京科学大学、東京大学、名古屋大学を中心とした研究グループが、がん細胞由来の細胞外小胞が尿中に排出されることを実験的に証明した、という内容です。

細胞外小胞。すべての細胞が放出している直径30〜200ナノメートルほどの微粒子で、元の細胞のタンパク質やRNAを中に抱えています。エクソソームという名前の方がなじみがあるかもしれません。がん細胞もこれを出す。中身を読めれば、体のどこかにがんがあるかどうかの手がかりになり得ます。
こうした体液中の情報からがんを探る方法を「リキッドバイオプシー」と呼びます。主戦場はこれまで血液でした。
尿はどうか。採取は簡単で、痛みもなく、量も取れる。検体としては理想的です。尿中の細胞外小胞やマイクロRNAでがんを検出する試みも以前からありました。
ただ、ずっと引っかかる問題があった。
通れないはずのフィルター
腎臓の糸球体。血液から老廃物をこし取って尿を作るフィルターで、網目はおよそ6〜8ナノメートルです。がん由来の細胞外小胞は30〜200ナノメートル。サイズが全く合いません。
理屈では通過できない。
なのに尿からがん関連の分子が見つかるという報告は複数ある。本当にがんの細胞外小胞が尿に出ているのか、別の理由なのか。この問いへの明確な答えはなかった。
gRNAという目印
研究グループのアプローチは明快でした。CRISPR-Cas9で使うguideRNA(gRNA)を目印として細胞外小胞に搭載し、追跡可能ながん細胞を作った。これをマウスの脳に移植して、尿からgRNAが出てくるか調べています。
脳です。腎臓から最も遠い臓器のひとつ。しかも脳には血液脳関門(BBB)という独自のバリアがあります。脳の血管は他の臓器と構造が違い、内皮細胞同士が密着結合で隙間なくつながっている。血液中の物質が簡単には脳に入れないし、逆に脳から血液中にも出にくい。つまり脳腫瘍が出した細胞外小胞が尿に届くには、まずBBBを越えて血中に出て、さらに腎臓のフィルターも越えなければならない。二重のバリアです。
結果、その二重のバリアを越えて、脳の腫瘍から出た細胞外小胞が長期間にわたり尿中から検出されました。対照群では出ていません。
トランスサイトーシス
では、あの網目をどう通ったのか。
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