参院離反で中道改革連合は空中分解するのか
2月12日夜。立憲民主党の水岡俊一参院議員会長が記者団の前で言い切った。
「特別国会では公明党と参院の統一会派を結成しない」
明日13日は中道改革連合の代表選投開票日だ。階猛氏と小川淳也氏の一騎打ち。新しい代表が決まり、党の立て直しが始まる。そのはずだった。
前夜に参院が離反した。
4日で火がついた
投開票日の朝、私はこう書いた。「公明だけが生き残った」。
中道改革連合は167議席から49に壊滅。旧公明系28人は全員当選し、旧立憲系は144人が21人になった。同じ党の中で起きた出来事とは思えない明暗でした。
あの記事を書きながら、頭にあったのは参院のことです。
1月の段階でこう書いています。「衆議院は合流した。参議院は別々のままだ」「衆参で別々の行動を取り始めたら、分裂の火種になる」と。
4日です。火種が炎に変わるまで。
帰る場所
水岡氏の表明が何を意味するか。
参院に立憲民主党が残っている。そこが「合流しない」と言った。衆院の旧立憲議員21人にとって、帰る家があると公に示されたことになります。
亀井亜紀子氏は今日、日本海テレビの取材に「何らかのタイミングで立憲に戻りたい」と答えた。島根1区で敗れた彼女は、中道からの離党を示唆しています。参院に立憲がある限り、同じことを考える議員は増える。
参院の立憲議員たちは、衆院で何が起きたか全部見ていたはずです。比例上位を公明に独占され、小選挙区で旧立憲が壊滅し、望月記者に「乗っ取りだ」と言われた。あの船に乗る人間がいるわけがない。
水岡氏の判断は防衛反応でしょう。同時に、衆院に残った旧立憲21人への合図でもある。
代表選前夜の混乱
タイミングが露骨です。
明日が投開票。新代表が選ばれ、「ここから立て直す」と宣言する日。その前夜に「参院は別です」とぶつけてきた。誰が代表になろうと関係ない。構造の問題だ、と。
党内はすでに荒れています。今日の共同記者会見で、階氏は冒頭から謝罪に追われた。前日のぶら下がりで、公明党の選挙手法について「噂ベースですけど」と真偽不明の話を口にした件です。ネットでは「ヤバいこと言ってる」「それアカン話では」とトレンド入りし、告示日に火消しから始める羽目になった。
党名変更にも言及しています。結党から1ヶ月で看板を変える話が出ること自体、この新党が何だったのかを物語っている。
一方、旧公明の28人は沈黙しています。代表選への候補擁立を見送り、自主投票。49議席中28が旧公明出身で、数の上では過半数を握っている。それでも表に出てこない。
公明出身の当選議員はこう言っています。「うちはおとなしくしているしかない。ただでさえ立憲側の批判にあっているからね」。
おとなしくしている。矢面に立たず、旧立憲に代表の座を渡し、批判の盾にする。自公連立で自民の陰に隠れていた構図を、今度は中道の中で再現している。1月の記事で書いたことがそのまま起きています。
「うちが野党第1党」
小川氏は「強くて温かくて魅力的な野党第1党を建設したい」と語りました。
その言葉は2日前に玉木雄一郎氏に先を越されています。
2月10日、国民民主党の玉木代表が記者会見で言い切った。「衆参合わせるとうちが野党第1党。50議席を超える野党はうちしかない」。国民民主は衆院28、参院25。合計53。中道改革連合は衆院49で、参院には議員がいない。参院に残っているのは立憲民主党と公明党であって、中道ではない。
衆院だけ見れば中道49対国民民主28で、野党第1党は中道です。でも衆参合わせれば逆転する。しかも今日、参院の立憲が統一会派を拒否した。中道と参院立憲が別々に動くなら、「衆参合わせた野党第1党」は名実ともに国民民主になる。
小川氏が「野党第1党を建設したい」と言った時、その椅子にはもう玉木氏が座っていた。
公明の袋小路
1月に公明党の設計図を読み解きました。
選挙後、自民・維新が過半数を割る。そこで公明系議員がキャスティングボートを握り、与党に復帰する。比例上位を独占したのはそのための布石だった。
自民316。設計図は使い物にならなくなった。
2月に修正しています。「残された道は一つ。中道に留まるしかない」。
自民は公明を必要としていない。316議席で単独3分の2。高市首相が26年間の連立相手をわざわざ呼び戻す理由がない。維新や国民民主との接点もない。
その中道が足元から崩れ始めている。参院の立憲が離反し、衆院の旧立憲が離脱を考え始め、代表選は告示日から謝罪と内紛。公明側に止める手段はない。
28議席と創価学会票を持っていても、持っていく先がない。焼け太りしたはずの28議席は、行き場のない28議席でした。
「急がなくていい」
水岡氏の発言を正確に拾うと、「特別国会では」統一会派を結成しない、という言い方をしています。将来を完全には否定していない。参院選は来年だ。時間はある。急ぐ必要はない。そういう理屈でしょう。
ただ、この「急がない」がむしろ毒になる。
宙ぶらりんの時間が長引くほど、衆院の旧立憲議員は考える。参院が来ないなら、自分たちが戻ればいいのではないか。亀井氏はもう動き出している。新代表がどれだけ結束を訴えても、参院との合流が「いつか」のままでは、足元の流出は止まらない。
「急がなくていい」は、緩やかに党を溶かす言葉です。
来年の参院選
想像したくないが、想像せざるを得ない。
衆院には中道改革連合がある。参院には立憲民主党と公明党が別々にいる。このまま衆院からも旧立憲が離脱すれば、看板が三つになる。
来年の参院選。候補者は中道から出すのか、立憲から出すのか、公明から出すのか。連合はどこを支援するのか。創価学会はどこに票を入れるのか。三つの看板が同じ選挙区で食い合う。
自民316の対岸で、勝手に三つに割れて自滅していく。高市首相は何もする必要がない。
設計図の皮肉
一連の記事を振り返ります。
1月16日、「実態は公明による立憲の吸収」と書いた。
1月28日、比例名簿から「選挙後に旧立憲を切り捨てる布石」と読み解いた。
2月上旬、「自民大勝で設計図は無効化された」と修正した。
2月9日、「公明だけが焼け太りした」と書いた。
公明の設計は精緻でした。比例上位を押さえ、選挙後の選択肢を残し、新進党の失敗を繰り返さないよう主導権を握った。
想定していなかったのは、自民が勝ちすぎるという一点だけだった。
公明を必要としない自民。公明と組みたくない旧立憲。公明に興味がない維新と国民民主。28議席を持っていても使い道がない。振り回す側になるはずが、誰からも声がかからない。
明日の後
13日、新代表が決まります。
誰が選ばれても、この構造は変わらない。参院は別。衆院の旧立憲は帰りたがっている。旧公明は行き場がない。国民民主はとっくに「うちが野党第1党」と宣言している。
1月の記事で「困るのは、いつも旧立憲の側だ」と書きました。
今回は全員が困っている。
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とある地方都市の某外科医のひとり言
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