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コロナ後遺症「思い込み」報道に医師が感じた違和感

演歌歌手の女性がコロナ後遺症でほぼ寝たきりになったという報道があった。話題になっているのは、かかりつけ医が書いた紹介状。「コロナ後遺症だと思い込んでいる」「重度のうつ病」と記されていたという。

患者さんの苦しみは本物だと思う。1年半診てもらった医師にそう書かれたら、誰だって傷つく。

ただ、報道の切り取り方が気になった。


論文が示していること

コロナ後遺症の研究は進んでいる。2025年にNature Communications誌に掲載されたレビューでは、約1,466万人のデータを分析している。感染者と非感染者を比較すると、嗅覚障害は4.3倍、味覚障害は3.7倍、集中力低下は2.7倍。統計的には「後遺症」は存在する。

でも、これは集団の話。

目の前の患者さんが「コロナ後遺症かどうか」を判定する検査は、今のところない。画像を撮っても血液を調べても、証明する手段がない。

ワクチン接種者では後遺症リスクが低下するというデータも出てきている。変異株による違いも指摘されている。ただ、それも集団レベルの傾向であって、個別の診断には使えない。


精神症状の問題

精神面についても研究はある。Frontiers in Psychiatry誌のレビューによると、Long COVID患者ではうつ症状が20〜25%、不安症状が16〜31%、睡眠障害が27〜30%と報告されている。

数字だけ見ると多い。

ただ、このレビュー自体が限界を認めている。ほとんどの研究はコントロール群を置いていない。評価は自己申告の質問票。COVID-19の重症度と精神症状に関連は見られなかった。

ウイルスのせいなのか。隔離生活のストレスか。もともとの傾向か。切り分けができていない。


「証明できない病気」は昔からある

こうした問題はコロナに限らない。

慢性疲労症候群、線維筋痛症。どちらも患者さんは強い苦痛を訴えるが、客観的な検査で証明できない。「気のせい」「精神的なもの」と言われ続けてきた歴史がある。

コロナ後遺症も、同じ構図に入りつつある。


診断がつかない苦しさ

患者さんは病名を求める。診断がつけば、自分の苦しみに説明がつく。周囲にも伝えやすくなる。

それだけではない。診断がなければ傷病手当金は出ない。障害認定も受けられない。働けないのに収入が途絶える。「コロナ後遺症です」という診断書がほしい理由は、心理的なものだけではない。生活がかかっている。

でも、医師は根拠のない診断書を書けない。そこに構造的な矛盾がある。


後遺症外来でも「診断」は難しい

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