逆ザヤは会計問題ではない〜このカテは使うなと言われる現場〜
7月22日の中医協で、逆ザヤの議論が始まった。
特定保険医療材料の償還価格が、市場実勢価格を下回っている。1314の機能区分のうち460、全体の35%がその状態にある。厚労省の材料価格調査で、H30に22%だった数字が、23、26、31、そして35へと、一度も下がらずに上がってきた。しかも前半より後半の伸びが急だ。当日資料によれば材料費は年間1.5兆円規模、対国民医療費比率で3%あまり。逆ザヤは医療費の隅で起きている例外ではなく、この規模の上で毎年広がっている。
ここまでは会計の話に見える。実際、中医協のテーブルもそう回っている。厚労省は逆ザヤを二つに分類した。(A)コストは低いが販売側の価格交渉力が強い場合、(B)コストが償還価格を上回る場合。ニプロの守田委員は「うちの肌感では多くが(B)」と言い、原材料費の高騰、置き在庫の費用、改良のたびにかかる設計・薬事の費用を挙げた。営業利益は平均8.5%、それでは足りない、と。
供給側のコスト構造の話だ。筋は通っている。
だが厚労省が配ったその図を、僕はもう一度見た。(B)のケースで、実勢価格と償還価格の差額に、はっきりこう書いてある。「医療機関等の損失」と。
厚労省自身が、この逆ザヤで損をするのは病院だと、公式資料の図に明記している。
別途取れる材料だけが標的になる
まるめ(包括払い)られた材料は、もう仕方がない。技術料の中に構造的に埋まっていて、単価がどう動こうと請求額は動かない。最初から病院が飲むと決まっている固定費に近い。諦めがつく。
問題はその技術料に乗っかる特定保険医療材料のほうだ。制度上は出来高で別途取れる建前になっている。取れる建前なのに、その償還価格が実勢を割っている。すると本来「使えば回収できる」はずの材料が、「使うほど回収しきれず持ち出しになる」材料に化ける。
まるめ材料と違って、こちらは使うか使わないかを現場が選べてしまう。選べるからこそ「使うな」が成立する。
診療科によっては、このカテは使うな、と今まさに言われている。血管内治療の材料はまさに特定保険医療材料の本丸で、償還が実勢に追いついていなければ、一本使うごとに確定で赤字が乗る。
中医協の資料でいう(B)類型、「医療機関等の損失」と図に明記されたそれが、病院の会議室で使用制限の運用に翻訳された瞬間だ。
カテを絞ると術式が変わる
制限は本数だけにとどまらない。術式選択そのものを歪める。
コイル治療が割に合わないなら、開頭クリッピングへと力が働く。医学的にはコイルが適応の瘤でも、経営の論理が開頭に寄せる誘因を生む。開頭のリソースもなければ、うちでは診ないで他院搬送になる。未破裂ならまだしも、破裂くも膜下出血で搬送時間が延びるのは、そのまま予後に直結する。再破裂までの分単位の時間が、伝票の都合で削られていく。
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