ジェネリック関税200%が意味するもの〜アメとムチの二重構造〜
外来で処方したくても「日本未承認です」と弾かれる。その次に来るのが「限定出荷です」だ。
7月21日、トランプ大統領がTruth Socialで後発医薬品への関税を発表した。2026年8月から適用、ただし当初は2年間0%。2028年8月に100%、2029年に200%。特許医薬品は原則100%だが、日本を含む貿易合意国向けは15%、希少疾病用医薬品は対象外になっている。
数字を見て、まず思ったのは無理だということだった。
2年で工場は建たない
医薬品の新規製造ラインは、FDAの査察とプロセスバリデーションを含めて通常3〜5年かかる。製剤工場でこれだ。原薬(API)工場になると、化学プラントの建設に加えて原薬の品質を証明するための安定性試験に年単位を要し、さらに長くなる。米国内は熟練工も設備サプライヤーも空洞化している。金を積んでも物理的に間に合わない。
大統領は、生産拠点を米国内に移す準備期間として2026年8月から一旦ゼロにすると説明した。準備期間が2年。建たない。
では発効したらどうなるか。後発薬は薄利多売だから、関税を価格転嫁した瞬間に採算が消える。メーカーは米国市場から撤退し、品目が消える。米国で慢性的なジェネリック不足と薬価急騰が起きる。トランプが最も避けたいはずの結末だ。
自分で自分の首を絞める政策に見える。経済政策として読めば、破綻している。
降ろす前提の数字
読み方を変える。この数字は、実行するために置かれていない。
200%は脅しの水準だ。企業に工場立地を約束させ、インド・中国への原薬依存を切らせるための圧力。実際、対米投資を発表した企業を個別に除外する運用がすでに行われている。関税をかけることではなく、関税を口実に投資を引き出すことが目的なら、投資表明が並んだ時点で本体は骨抜きにしてよい。
第一期政権でも同じ型があった。極端な関税率を発表し、相手国や企業が動いたところで個別除外や猶予延長を重ね、当初の数字はいつのまにか消えている。発表の瞬間が最大出力で、そこから下げていく。
成果は関税収入ではない。米国内に工場を作らせたという政治的な勝利だ。
しかも設計に時間差がある。0%スタートで2028年発効。2026年秋の中間選挙も、2028年の大統領選も過ぎた後に痛みが出る。ツケが回る頃には、自分の選挙は終わっている。
数字の非現実性は欠陥ではない。本気で発効させる気がないというシグナルとして機能している。
希少薬を外した意味
特許薬15%、希少疾病用医薬品は対象外。この差に、政権自身の認識が出ている。
希少疾病用医薬品を外したのは、供給が途絶えれば直ちに患者の死に直結するからだ。代替薬がなく、止まれば人が死ぬ。そこには関税をかけない。裏を返せば、関税が供給を止めるだけの破壊力を持つと政権が知っている。だから死に直結する品目だけは、あらかじめ手前で除いた。
後発薬全体には、その配慮がない。破壊力を承知の上で、200%を乗せている。
ここから先は、なぜ「本丸」が関税ではなく別のところにあるのか、そして日本にどう跳ね返るかという核心に入ります。
本丸はMFN
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