森林再生は木を植えるだけでは足りないのか――根圏共生系から見直す炭素・リン・窒素循環とネイチャーポジティブ
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森林再生は、気候変動対策と生物多様性保全を同時に進める手段として期待されている。だが、その議論はしばしば、何本植えるか、どれだけ地上部バイオマスを増やせるかといった、目に見えやすい指標に寄りがちである。実際には、森林の機能は地上部だけで決まるわけではない。樹木の根のまわりでは、菌根菌、根圏細菌群、自由生活性窒素固定菌、分解者、土壌動物、そして根から放出される代謝物が複雑な相互作用をつくり、リン獲得、窒素循環、炭素蓄積、病害抑制、ストレス耐性、生物多様性回復を支えている。本稿では、この地下の相互作用を「根圏共生系」として捉え、その再建という観点から森林再生を見直す。特に、現時点で研究蓄積が厚く、地下の機能連関を論じる足場として有効な菌根共生を中核事例に据えつつ、リン、窒素、炭素、生物多様性をつなぐ地下ネットワークの意味を整理したい。最終的には、森林再生を単なる植栽事業ではなく、地下と地上をつなぐ生態系機能の再建として読み替えることで、ネイチャーポジティブと気候対策をより実質的に接続できる可能性を論じる。
問題設定と本稿の視点
森林再生は気候変動対策と生物多様性保全の両方に資する手段として広く期待されている。しかし現実の議論では、再生はしばしば「何本植えるか」「地上部バイオマスをどれだけ増やせるか」という指標で語られやすい。こうした見方は分かりやすい一方で、森林が実際には地上部だけで成立する生態系ではないことを見えにくくする。樹木は土壌の中で、菌根菌、窒素循環に関わる細菌群、分解者、さらには根から放出される多様な有機化合物を介して組み立てられる地下の共生系に深く依存している。したがって、森林再生を木の本数や樹冠の回復だけで評価すると、再生の成否を左右する肝心の地下機能を取り落とす危険がある[1][2]。
近年の研究が面白いのは、この地下の共生系を単なる補助要因ではなく、森林機能そのものを支える基盤として捉え始めている点にある。ただし、ここで注意したいのは、研究知見が厚いことと、生態系の中で実際にどれが最も中核的に働いているかは同じではない、ということである。根圏には、菌根菌、細菌、分解者、自由生活性窒素固定菌、内生菌、土壌動物、根からの分泌物に応答する多様な微生物群が存在し、未解明の相互作用もなお多い。したがって、生態系機能としての根圏共生系は菌根共生だけで尽くせるものではない。その意味では、菌根共生も根圏共生系を構成する重要な一要素である。しかし同時に、現時点で最も研究蓄積が厚く、森林再生、元素循環、炭素固定、土壌機能を結びつけて論じやすいのも菌根共生である。そこで本稿では、主題を根圏共生系に置きつつ、菌根共生を中核事例として議論を進める。こうすることで、炭素固定だけに閉じない元素循環とネイチャーポジティブの議論を広く扱いながらも、論の足場を失わずにすむ[1][2][3]。
以下では、まず根圏共生系とは何か、なぜそれが森林再生で注目されているのかを整理する。そのうえで、菌根共生を中核事例として位置づけながら、リン獲得、窒素循環、炭素蓄積、病害抑制とレジリエンス、生物多様性保全へと論を進め、地下の共生系が森林機能をどう支えているのかを見ていく。最後に、それをネイチャーポジティブの観点から位置づけ直し、森林再生を「木を植える事業」から「地下と地上をつなぐ生態系機能の再建」へと読み替える視点を提案したい。
根圏共生系とは何か、なぜ森林再生で注目されているのか
まず整理しておきたいのは、ここで言う根圏共生系が何を指すのかである。根圏とは、植物の根の表面とその周囲のごく限られた土壌空間に形成される、きわめて活動的な相互作用の場を指す。そこでは、根そのものだけでなく、菌根菌、自由生活性の細菌群、窒素固定に関わる微生物、分解者、土壌動物、そして根から放出される糖、有機酸、アミノ酸、フェノール類などが複雑なネットワークをつくっている。現場のイメージとしては、一本の細根の表面から糖や有機酸がにじみ出し、それに引き寄せられるように微生物群が集まり、菌糸が根の外へ伸び、周辺の有機物や鉱物表面で分解や養分動員が進み、その結果として根の周囲だけ化学環境も微生物組成も周囲のバルク土壌とは別物になる、と考えると近い。図1は、この「根のまわりだけが別の生態系として立ち上がる」感覚を視覚的にまとめたものである[1][3][8]。したがって根圏共生系とは、単一の共生相手を指す言葉ではなく、根のまわりで物質循環と生態系機能を支える生物相互作用のまとまり、と考えた方がよい。

この領域が近年強く注目されているのは、森林機能のかなり大きな部分が、この地下の相互作用の上に乗っていることが分かってきたからである。森林再生は従来、苗木の生存率、初期成長、地上部被覆率、樹冠の回復といった地上部指標で評価されがちだった。しかし、そうした指標だけでは、再生地が本当に自律的な養分循環を回復しているのか、病害や乾燥にどの程度耐えられるのか、長期的な土壌炭素形成がどの方向へ向かうのかまでは分からない。樹木は地上で光を受けて成長しているように見えても、その成長は地下でのリン獲得、窒素利用、病害抑制、水分調節、分解とのバランスに深く依存している。だからこそ、森林再生を木の本数や樹冠回復だけで語ると、成否を左右する地下の機能再建を見誤る危険がある[1][2][4]。
実際に、根圏で知られている機能はかなり多い。菌根菌は、菌糸ネットワークを介してリンや窒素、水分の獲得を助ける。根圏細菌は、リンの可給化、窒素固定、病害抑制、植物ホルモン様物質の産生などを通じて植物の生理を変える。分解者は有機物の分解を通じて無機養分の供給を支え、土壌動物はその物質循環と土壌構造形成に関与する。さらに、根から放出される代謝物は、どの微生物群が優占するかを選び、結果として病害抑制的あるいは養分獲得的な根圏環境をつくり出す。実際の森林土壌を思い浮かべるなら、落葉や枯死根が分解される場所、鉱物表面にリンが吸着している場所、細根の先端が新しい土壌へ入り込む場所、病原体が侵入しようとする場所が、根圏のごく近い距離で同時進行している。根圏共生系は、そうした小さな空間スケールの出来事を束ね、結果として炭素・リン・窒素の流れ、ストレス応答、土壌炭素形成、生物多様性回復までをつなぐ地下の機能インフラとして理解した方が実態に近い[1][8][12]。
その中で菌根共生は、根圏共生系の中核事例として位置づけられる。菌根共生とは、植物の根と菌類が形成する共生関係であり、樹木は光合成で得た炭素の一部を菌類へ供給し、その代わりに菌類は土壌中からリンや窒素、水分などを獲得して植物へ渡す。教科書的にはこれで説明できるが、実際の森林生態系ではもう少し複雑である。外生菌根菌とアーバスキュラー菌根菌では、資源獲得戦略も、分解との関わり方も、土壌炭素形成への寄与の仕方も異なる。しかも、菌根菌は単独で働くのではなく、根圏細菌群や根からの代謝物と結びつきながら、根圏全体の微生物群集を組み替える。そのため近年は、菌根共生を単一の共生関係というより、根圏という場で成立する多層的な共生ネットワークの主要な結節点として扱う視点が強まっている[1][2]。
この問題意識から、近年のレビューは、森林再生の対象を「樹木」から「植物―菌根菌―根圏マイクロバイオーム」へ拡張する必要を強調している。Li らは、植物と菌根菌の多様性を組み込むことで、森林炭素と多機能性を両立する再生が可能になると論じた。そこでは、菌根型の違いが土壌中の粒子状有機物と鉱物結合有機物の形成経路を変え、生態系多機能性に差をもたらすことが重要な論点になっている[2]。つまり、どの木を植えるかだけでなく、どの根圏共生系を再建するかが再生の質を左右するのである。そして、その根圏共生系を具体的に論じる入口として、現時点では菌根共生が最も有力な中核事例になっている。
リン獲得を支える地下の採集システム
根圏共生系の価値を考えるうえで、まず押さえるべきなのがリンである。ここでも、最も知見が厚い入口は菌根共生だが、実際に働いているのは菌根菌だけで閉じた単独機構ではなく、根、菌、細菌、酵素活性が結びついた複合系である。森林土壌では、リンは多くの場合、絶対量が少ないというより「存在していても植物が利用しにくい形で固定されている」ことが問題になる。鉄やアルミニウムとの結合、カルシウムとの沈殿、有機態リンとしての保持などのため、土壌分析上の全リン量が一定あっても、その大部分はすぐに植物が使えるわけではない。そこで土の中では、細根から伸びた菌糸が根毛よりもはるか外側の微小空間へ入り込み、鉱物粒子の表面や有機物片の近くでリンを探す。場合によっては、根や微生物が有機酸や酵素を放出し、鉱物に結合していたリンや有機態リンを少しずつほどいていく。その結果、植物が直接は届かない場所にあるリンが、菌糸ネットワークと根圏微生物の協働を通じて流れてくる[5][6]。この過程は見た目には何も起きていないように見えるが、実際には根の周囲数ミリから数センチの範囲で、探索、溶出、取り込み、再配分が絶えず起きている。

この点を裏づける研究として、2025年の BMC Plant Biology 論文は、亜熱帯森林遷移の過程で根形質と菌根群集の双方が窒素・リン制約に応じて変化し、植物が単に根を増やすのではなく、菌根ネットワークを含めた資源獲得戦略を組み替えていることを示した[6]。また、2025年の研究では、根圏のカルボン酸放出とアーバスキュラー菌根共生がリン獲得を分担し、植物は直接的な有機酸動員と菌根経由の探索をバランスさせていることが示されている[5]。図2は、この探索から可給化、吸収、植物体への移送までが切れ目なくつながることを示すために置いている。重要なのは、リン獲得が「根が頑張る」か「菌根菌が頑張る」かの二択ではなく、根と菌と根圏微生物が協働して組み立てる複合的な機能だという点である。
森林再生の文脈で言えば、これは非常に重要な意味を持つ。劣化地や攪乱地では、土壌表層の有機物が失われ、リンの可給性が落ち、菌根菌群集も単純化していることが多い。そこに苗木だけを入れても、地下のリン採集システムが回復していなければ、初期活着後の成長が伸び悩む可能性がある。逆に、適切な菌根ネットワークと根圏条件が整えば、施肥依存を少し下げながら森林の自律的な栄養循環を回復できる可能性がある。つまり、リン獲得の観点から見た根圏共生系は、単なる成長促進剤ではなく、再生地の地下インフラを組み直す機構と考えた方がよい。
窒素固定そのものではなく、窒素循環を組み替える場としての根圏
窒素の話は、このテーマを根圏共生系へ広げるときに特に重要である。菌根共生の議論だけに閉じると、窒素固定そのものをどう扱うかが曖昧になりやすい。実際、菌根菌そのものが一般的に窒素固定を行うわけではない。窒素固定の中心は根粒菌や自由生活性窒素固定菌、シアノバクテリアなど別の微生物群にある。しかし、だからといって菌根共生が窒素と無関係なわけではない。根圏を広く見れば、樹木の根と菌根菌は、窒素固定菌を含む周辺微生物群の組成や活動を大きく左右する。ここで重要なのは、「菌根菌が窒素固定するか」ではなく、「根圏共生系が窒素固定と窒素利用の条件をどうつくるか」である[1][8]。

2025年の Soil Biology and Biochemistry 論文は、亜高山帯針葉樹林の土壌で、根圏が自由生活性窒素固定の強いホットスポットであることを示した。根圏土壌の窒素固定速度はバルク土壌より一桁高く、土壌体積のわずかな割合しか占めないにもかかわらず、全体の窒素固定フラックスの約半分近くを担っていた[8]。図3は、この議論を、根からの炭素供給が窒素固定や無機化、硝化を局所的に活性化する流れとして見せる役割を持つ。これは、森林土壌の中で細根のまわりだけが、窒素固定にとって特別に活発な微小空間になっていることを意味する。イメージとしては、根からしみ出る炭素化合物が局所的なエネルギー源となり、その周囲に自由生活性窒素固定菌が集まり、空気中の窒素を利用可能な形へ少しずつ変えていく。その生成物がすぐに樹木へ渡るとは限らないが、根圏全体の窒素経済を底上げする方向へ働く[8]。さらに 2024 年の Nature Communications 論文では、根からの代謝物放出が土壌微生物群を変え、自由生活性窒素固定と共生窒素固定の双方を促進しうることが示された[9]。したがって、森林再生における窒素問題は、施肥の有無だけでなく、根圏共生系が窒素固定と窒素利用をどう引き出すかという観点から見直す必要がある。
この見方は、人工施肥依存からの脱却や、窒素過剰環境での共生破綻の理解にもつながる。窒素が豊富すぎる環境では、植物は菌根菌へ炭素を渡してまで栄養を得る必要性を相対的に失い、共生の利益が小さくなることがある。最近の研究でも、窒素条件が菌根共生の有効性を左右し、森林炭素や土壌機能にまで波及することが示されている[10]。つまり、根圏共生系は窒素固定を含む窒素循環全体の文脈で見たときに初めて、その意味が見えてくる。ここでも再生は、単に木を植えることではなく、地下の窒素経済を再構築することだと言える。
炭素固定は結果であって、入口ではない
根圏共生系を気候変動対策の文脈で扱うと、どうしても炭素固定の話が前面に出やすい。もちろん、その観点は重要である。菌根型の違いが植物バイオマスと土壌炭素の配分に影響しうること、植物―菌根多様性が森林の炭素蓄積と多機能性の両方を高めうることは、近年の研究が強く示している[2][11]。ただし、ここで注意が必要なのは、「樹木の成長が上がる」ことと「長期の炭素固定が増える」ことを同一視しないことである。
外生菌根菌が樹木成長を押し上げても、その結果として土壌中へどの形の有機物が入るのか、分解速度がどう変わるのか、鉱物結合有機物と粒子状有機物の比率がどう変わるのかは別問題である。2023年の Nature Climate Change 論文は、外生菌根菌が植物バイオマスの増加と土壌炭素の増加を必ずしも同方向に動かさない可能性を示した。植物バイオマスが増えても、土壌全体の炭素プールは単純には増えず、むしろ分画ごとのバランスが変わることが重要だというのである[11]。この点は、炭素クレジットや自然ベースの気候対策で非常に重要である。地下の共生系を利用した再生は魅力的だが、その気候効果を過大評価しないためには、樹木成長、土壌炭素分画、分解動態を切り分けて考えなければならない。
したがって、根圏共生系を気候対策として論じるなら、炭素固定は入口ではなく結果として扱う方がよい。まず地下の栄養循環、資源獲得、微生物相互作用、ストレス応答を理解し、その結果として炭素蓄積がどう現れるかを見る方が、科学的にも論理的にも筋が通る。そうすると、炭素固定を過大に約束する記事にはならず、むしろ地下生態系を再建することがなぜ気候対策とも接続しうるのかを丁寧に説明できる。
病害抑制、ストレス耐性、回復後の安定性
根圏共生系の価値は、栄養塩獲得だけではない。むしろ、菌根共生を中核事例としつつも、それ以外の相互作用まで視野に入れることで、はじめてこの系の広がりが見えてくる。根圏微生物群は、病原菌の侵入抑制、乾燥や塩ストレスへの耐性向上、土壌構造の安定化などにも関与する。2025年の樹木根圏マイクロバイオーム総説は、根圏微生物を養分循環、炭素隔離、ストレス耐性、病害生物防除を結ぶ中核として位置づけた[1]。また 2024 年の Nature Communications 論文では、病原体由来のフザリン酸が植物根の代謝物分泌を変え、その結果として病害抑制的な根圏微生物群が組み立てられることが示されている[12]。ここで思い浮かべると分かりやすいのは、病原体が根圏へ侵入しようとしたとき、植物は受け身ではなく、分泌物の組成を変えることで周囲の微生物群を組み替え、結果として病害抑制的な環境をつくりうるという点である。つまり根圏は単なる「資源獲得の場」ではなく、攻防が起き、防御が組み立てられる動的なインターフェースでもある。
森林再生にとって重要なのは、再生地が初期に脆弱であることだ。乾燥、栄養塩不足、病害、攪乱の再発にさらされる環境では、苗木の成長率以上に、どれだけ安定して生残し、次の遷移段階へ進めるかが重要になる。根圏共生系が病害抑制やストレス耐性に寄与するなら、その価値は単なる「よく育つ」ことより大きい。地下の微生物群集は、森林再生のスピードだけでなく、再生後の安定性と回復力を左右する可能性がある。
ネイチャーポジティブの観点から何が見えるか
ここまで見ると、根圏共生系は炭素固定の補助線というより、森林再生の目的そのものを広げる概念だと分かる。図4は、その広がりを、炭素・リン・窒素・生物多様性・病害抑制が同じ地下ネットワークの中で結びつく構図として整理したものである。しかも重要なのは、ここで扱ってきた機能の多くが、菌根共生だけではなく、菌根共生を含むより広い地下の相互作用網の中で立ち上がっている点である。2025年の Nature Reviews Biodiversity は、森林再生で生物多様性を「副産物」ではなく主要成果として扱うべきだと論じた[13]。この視点に立つと、地上部の樹木多様性だけでなく、地下の菌類、細菌、根圏相互作用の多様性まで視野に入れた再生こそが、ネイチャーポジティブに近い。つまり、単に二酸化炭素を吸わせるための植林ではなく、生態系機能を担う生物相そのものを回復させることが問われる。
このとき、根圏共生系はネイチャーポジティブを具体化する媒介になる。なぜなら、そこでは炭素、リン、窒素、生物多様性、病害抑制、ストレス耐性といった複数の機能が、別々に存在するのではなく、同じ地下ネットワークの中で結びついているからである。森林再生を地上部だけで見れば、炭素か生物多様性かという二者択一に見えがちだが、地下の共生系に注目すると、両者は資源循環と生態系機能を通じて接続しうる。もちろん、何を回復すべきか、どの微生物群集を問題設定としてよいのか、地域固有の生態系をどこまで人為的に設計してよいのかという難問は残る。しかし、その難しさがあるからこそ、根圏共生系はネイチャーポジティブの議論を抽象論から具体論へ引き下ろす鍵になる。
おわりに
森林再生は、木を植えるだけでは足りないのか。この問いに対する現時点での答えは、おそらく「足りない可能性が高い」である。樹木の根のまわりでは、菌根菌、窒素循環に関わる細菌群、分解者、根の代謝物がつくる複雑な相互作用が、リン獲得、窒素利用、炭素蓄積、病害抑制、ストレス耐性、生物多様性回復を同時に支えている。そして、この全体像を理解するには、菌根共生を重要な中核事例として扱いつつも、それを根圏共生系全体の中へ位置づけ直す必要がある。森林再生を地上部だけの事業として設計すると、再生の本質である地下の機能再建を見失いかねない。
ただし、ここで過度に楽観するべきでもない。根圏共生系は重要だが、その機能は場所、樹種、土壌履歴、栄養条件、攪乱履歴によって大きく変わる。菌根接種をすれば解決するという単純な話ではなく、地域に即した樹種選定、土壌条件づくり、地下生物多様性の保全といった、より繊細な設計が必要になる。炭素固定を強調しすぎれば過大評価になり、生物多様性だけを語れば機能的な検証が弱くなる。重要なのは、その両方をつなぐ地下の共生系を、測りながら、比較しながら、慎重に再建していくことだ。
根圏共生系という視点は、森林再生を「植える」から「つなぎ直す」へ変える。図1から図4までを通して見ると、その「つなぎ直し」が、根と菌だけの話ではなく、元素循環、病害抑制、生物多様性、ネイチャーポジティブを束ねる地下の機能再建であることが見えてくる。菌根共生はその中核事例として非常に有用だが、それだけがすべてではない。炭素、リン、窒素、生物多様性、レジリエンスをばらばらの指標として追うのではなく、それらを地下の相互作用の中で束ねて考えることで、森林再生はネイチャーポジティブと気候対策をより実質的に接続できるかもしれない。いま問うべきなのは、何本植えるかだけではなく、どの地下生態系を取り戻すのか、である。

参考文献
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