ある実験とその結果が教えてくれること
1972年から1992までの20年間という長期間にわたり、アフリカのベナンにおいてとても興味深い実験が行われました。土壌劣化はサハラ以南アフリカで大きな課題となっており、ベナンも例外ではありません。そのベナンで綿花とトウモロコシの長期間輪作を利用した大規模な実験が行われたのです。この実験は今まで論文として公開されていませんでしたが、それがこのたび日の目に当たったということになります。
この実験は2つのフェーズに分かれていました。
枯渇フェーズ(1972-1980): 異なるレベルの化学肥料(窒素, リン酸, カリウム)と有機物投入量で土壌肥力を意図的に低下させる。
再生フェーズ(1981-1992): 全区画に十分な化学肥料+有機物(作物残渣保持+追加バイオマス)を投入して回復を図る。
つまり、わざと土を枯渇させてからもう一度再生させることは可能か?という実験を行ったのです。
まず、枯渇期(1972–1980年)の8年間は畑によって与える化学肥料と有機肥料の量に差をつけながら管理しました。比較のため、わざと肥沃な土と痩せた土の畑を作ったのです。そして再生期(1981–1992年)ではそれら全区画に十分な量の化学肥料と有機物の添加が行われました。
途中、1973年、1974年、1982年、1989年に0〜20cmの深さ(作土層)で土壌を採取し、肥沃度の変化を評価しました。定期的に土がどう変化していってるかの記録を取ったのです。
この結果、興味深いことがわかりました。
枯渇期(1972-1980年)に肥料・有機物投入が少なかった区画では、再生期(1981-1992年)に全区画へ十分な管理を行った後も、特に綿花の種子収量で長期的な低下効果が残りました。回復のために十分な対策をしたにもかかわらず、ずっと収量が上がらなかったのです。反面トウモロコシは変動が大きく、一貫した傾向はありませんでした。
この古い未発表論文の分析は、
土壌肥沃度管理が回復しても、長期的な土壌枯渇効果が持続することを明らかにし、一種の「土壌の記憶」を示しています。
簡単に言うと、一度臨界点を超えて枯渇してしまった土壌は、そのあといくら鉱物肥料と有機物を投入しても、復活しないことがわかったのです。
この結果は、劣化の臨界点を超える前に再生を開始する必要があることを示唆しています。
土壌の診断をするにあたって、2種類の考え方があります。
ひとつは予防診断と言います。まだ問題が起こる前に土の状態を分析し、今後問題が発生しそうな懸念があった場合に、先に対処しておこうというものです。人間で言えば健康診断のようなものです。
もうひとつは対策診断と言います。実際に何らかの問題が発生してしまった土壌を分析し、問題点を洗い出すことで対処しようというものです。これは人間で言うなら投薬だったり手術だったりですね。
上記の実験では、一度わざと土壌に問題を起こしてから、この対策診断をしてるわけですが、それも限界があるんだということです。人間で言えば、健康状態が悪化しすぎて手の施しようが無くなった状態です。薬を飲もうが何をしようが、思ったような改善が見られなくなった状態ですね。
全てのことには、不可逆な臨界点というものが存在します。よく言う「一線を越えてしまった」の一線です。この線を超える前なら、まだ何らかの対処ができたけど、ここ越えちゃったらもうダメだよというラインです。
アマゾンの森林は長い期間にわたって奇跡的な生態系が維持されてきたわけですが、無計画な焼き畑などによって大きく生態系が崩れています。そしてそれが今、越えてはならない一線を越えてしまったと言われています。
もう、とんでもない年月をかけなければ自然に復活することが無いラインを超えてしまったのです。
今の人口を維持するには慣行農業が必要ですが、それだけでは立ち行かなくなっています。自然農だけでこの人口を支えることは今の時点では難しいですが、きっとその解決策はあると思っています。うまく言えないんですが、いいとこどりする方法があるんじゃないか?そういうことを日々考えてます。
そのためには私は知らないことが多すぎるし、時間も足りないし、できることが限られすぎてます。でもできないことはどうあがいてもできないわけで、そんなことに愚痴を言ってる余裕もありませんし、できることをチマチマと積み上げていくしかありません。
これからもチマチマ農法でやっていきたいと思います。
最期までお読みいただきありがとうございました。
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