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生成AI勉強会を開いた。数週間後、現場ではほとんど使われていなかった

生成AI勉強会を、一過性で終わらせない

──業務定着まで伴走する支援のつくり方

勉強会から一か月ほど経った時点で、情報システム部門がまだ回収できていない確認項目があります。

  • 問い合わせ対応で、生成AIを最初に試したのは誰だったか

  • 試さなかった人は、どの場面で手を止めたのか

  • その人は、何を入力してよいか、どこまで確認すべきかを誰に聞いたのか

  • 試した結果は、次に同じ仕事をする人へ渡る形で残っているか

受講者アンケートの満足度や、ライセンスの利用回数では、この四つは埋まりません。

議事録の要約、問い合わせ対応、資料検索、新メンバーの受け入れなど、勉強会では試したい業務が挙がります。受講中には、生成AIで文章が整うことや、情報探索が速くなる可能性も見えます。それでも、日常の仕事へ戻った後に「最初の一回」が起きたかどうかは、別に追わなければ見えてきません。


問い合わせ対応で、利用はどこで止まるのか

たとえば、社内や顧客から届く問い合わせに対して、過去の対応履歴やFAQを参照しながら回答案を作る場面を考えます。

勉強会では、問い合わせ文を要約し、必要な情報を探し、回答文の下書きを作ることを試せます。受講者にとっても、自分の仕事に引き寄せやすいテーマです。

実務では、同じようには進みません。

問い合わせには、利用者の所属、過去のやり取り、社内の運用ルール、案件固有の前提が含まれます。回答案を作る前に、その情報を生成AIへ渡してよいのか、参照する文書は現在も有効なのか、回答案のどこを自分で確認すべきかを判断する必要があります。

この時点で、利用者の手は止まります。

生成AIの機能を知らないからではなく、自分の業務のどこまでを試してよいのかが決まっていないからです。

IPAは、クラウドAIへの営業秘密の入力や、RAGで扱う情報の無自覚な混在に注意を促しています。現場で使う人にとって切実なのは、注意点を知ることより、目の前の問い合わせで何を入力し、何を避け、迷ったときに誰へ聞くかが分かることです。

問い合わせ対応なら、どの種類の依頼で試し、どの情報を使わず、回答を誰が確認し、判断に迷ったときにはどこへ戻すかを、仕事の流れの中に置く必要があります。

用途不明は、アイデア不足ではなく「最初の一回」の不在として現れる

「何に使えばよいか分からない」という声は、生成AIの可能性を知らないという意味とは限りません。

使い道が多すぎるために止まることがあります。メール、資料作成、検索、要約、分析、問い合わせ対応と候補が広がるほど、忙しい利用者は、自分の今日の仕事に入れる場所を決められなくなります。

問い合わせ対応を例にすると、最初の一回は、回答をすべて任せることではありません。

問い合わせ文から確認事項を分ける。過去の対応履歴を探す。回答案に含めるべき事実と、確認が必要な点を分ける。利用者へ返す前に、参照元を見直す。作業を小さく切ることで、生成AIを使う範囲と人が確認する範囲が見えます。

役割別研修やハンズオンは、ここで意味を持ちます。

利用者には、実際の仕事に近い題材で、最初の一回をどう始めるかを考えてもらう。管理職には、部下の利用結果を見たとき、何を確認し、どの業務へ広げるかを考えてもらう。情報システム部門や推進担当には、入力情報の境界、相談の受け方、利用状況の見方を整理してもらう。

同じツールの説明を繰り返すより、同じ問い合わせ対応を、それぞれの役割から一周させる方が、研修後の利用へつながりやすくなります。

ディーシステムでは、勉強会の後に役割別研修とハンズオンを設計し、議事録、問い合わせ対応、新規参画時の情報探索、新メンバー受け入れといった業務別の場面で、利用者が自分の仕事の入口を見つけられるようにしています。

相談先が決まっていないと、最初の試行は一度で終わる

問い合わせ対応で生成AIを使おうとすると、三種類の相談が同時に発生します。

「この内容は生成AIへ渡してよいか」という情報管理上の相談。
「この回答案は誰が確認するか」という業務上の相談。
「この使い方を他の担当者へ共有してよいか」という運用上の相談です。

最初の試行で期待した結果が出なかったとき、利用者は質問の仕方を変えるべきなのか、参照元が足りないのか、その業務には使わない方がよいのかを切り分ける必要があります。そこを本人だけで抱えると、次の試行は起きにくくなります。

Microsoftは、Copilotの展開前に組織目標、ユースケース、成功指標を定めるよう案内しています。また、利用を支えるチャンピオンや、質問・事例共有の場を設けることも位置づけています。ライセンスを配布した後、実務の中で生じる迷いを受け取る経路が必要になるためです。

「この問い合わせでは何を入力してよいか分からなかった」という相談が続くなら、ルールそのものが不足しているのか、利用者向けの説明が業務に結び付いていないのかを見直します。「回答案はできたが、確認に時間がかかった」という声が増えるなら、生成AIの出力よりも、参照元の整理や確認手順に課題があるのかもしれません。

翌月の記録には、生成AIで下書きを作ったものの最終回答へ採用しなかった問い合わせと、その理由も残しておきます。

利用回数ではなく、問い合わせ対応の流れを観察する

生成AIの利用状況を把握するために、利用回数やアクティブユーザー数を見ることには意味があります。

部署ごとの利用の偏りや、特定の機能が使われ始めた時期を知る手がかりになるからです。Microsoft 365 Copilotの利用状況レポートも、組織やグループごとの採用状況、利用、継続利用、機能への関与を確認するためのものとして提供されています。

問い合わせ対応で定着を見ようとするなら、回数とは別の記録も必要になります。

最初の利用は、どの種類の問い合わせで起きたのか。生成AIは、情報探索、論点整理、回答案の作成、履歴の記録のどこで使われたのか。利用者は、どの時点で相談したのか。人が確認する作業は減ったのか、それとも確認する場所が変わったのか。試した結果は、次の担当者が同じ場面で参照できる形になったのか。

こうした情報がなければ、利用率が上がったときに何が変わったのかも、利用率が伸びなかったときにどこを直すべきかも分かりません。

一人の試行を、次の利用者へ渡す

問い合わせ対応で生成AIを試した人がいても、その経験は放っておくと個人の中で終わります。

「この種類の問い合わせでは、過去の対応履歴を探すところまで使えた」
「回答案は作れたが、参照元の確認に時間がかかった」
「この情報は入力せず、要点だけを渡した」
「この場合は、管理職に確認してから利用者へ返した」

こうした記録が共有されると、次の人は、成功例だけでなく、使う条件や止まる場所も知ることができます。

活用事例の共有は、華やかな成果を集めるためのものではありません。業務の中で実際に起きた迷いを、次の利用者が避けたり、より早く相談したりできる状態へ変えるためにあります。

ディーシステムでは、活用事例の共有と、相談・学び合いのためのコミュニティ運営を支援設計に含めています。個人の試行を個人の工夫で終わらせず、次に同じ業務へ向かう人が参照できるようにすることが、研修後の利用を支えます。

研修後30日で、まだ答えが出ていない四つのこと

  1. 誰が、どの業務で、最初の一回を試したのか。

  2. 問い合わせ対応のどの場面で、利用者の手が止まったのか。

  3. 止まった人は、情報の扱い、出力の確認、業務上の判断を誰へ相談したのか。

  4. その試行と相談は、次に同じ業務を担う人が参照できる場所へ残ったのか。


生成AIの研修後、業務別の使い方、相談導線、活用記録、利用状況の観察方法を整理したい企業へ。ディーシステムは、生成AIを日常業務へ組み込むための研修後の設計を支援しています。

参考資料

  • IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」
    生成AIへの情報入力とRAG利用時の注意確認用。

  • Microsoft Learn「Rollout Microsoft 365 Copilot to your organization」
    組織目標、ユースケース、成功指標の設計確認用。

  • Microsoft Learn「Microsoft 365 Copilot usage report」
    利用状況、継続利用、機能別利用の確認用。


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