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『国宝』感想 日本版「さらば、わが愛 覇王別姫」なのか



導入


私はお金と時間のかかっている作品が大好きです。何度撮り直したのか想像できないほどの美しい画角、そのためだけに作られる煌びやかな衣装、リハーサルを何度も重ねたであろう豪快かつ複雑なシーンの数々は観賞中の満足度を大きく引き上げる重要な要素です。

ところで、私は「さらば、わが愛 覇王別姫」という映画がとても好きです。そんな私が年明けに映画館で見た「国宝」という映画の予告、直感的に覇王別姫と似ていると感じました。そして本日鑑賞してまいりましたので、覚えている範囲で覇王別姫との相違点についてここに記そうと思います。

「さらば、わが愛 覇王別姫」の簡単な紹介

京劇の俳優養成所で兄弟のように互いを支え合い、厳しい稽古に耐えてきた2人の少年――。成長した彼らは、程蝶衣(チョン・ティエイー)と段小樓(トァン・シャオロウ)として人気の演目「覇王別姫」を演じるスターに。女形の蝶衣は覇王を演じる小樓に秘かに思いを寄せていたが、小樓は娼婦の菊仙(チューシェン)と結婚してしまう。やがて彼らは激動の時代にのまれ、苛酷な運命に翻弄されていく…。

「男子2人」「伝統芸能」「社会からの圧迫」「女形」など国宝で扱われたテーマと似ています。

原作を書いた吉田さんは実際に歌舞伎の黒子として3年ほど働いてこの作品を書いたそうですね。歌舞伎への理解の深さや表現の美しさが強く印象に残りました。

実際映画を見て似ている点も異なる点も多くあったので、覚えている限り書いていきます。国宝は1度しか見てなく覇王別姫も最近しっかり見ていないので誤った情報や解釈をしている場合がございます。ネタバレも盛大にしています。ご了承ください。

両作品を見て違う点

覇王別姫は小豆子が女形である虞美人、石頭が覇王を演じるため2人で男女カップルのコンビとしてスターの道を駆け上がります。それで小豆子は自分と役の境目が曖昧になり、元から石頭に抱いていた恋愛感情を加速させてしまうというのもあるのですが……
小豆子は世間からの評判というより自分がどう虞美人という役に向き合うか、石頭と演じられるかということが言動の軸であると思うので、ポスターにある「夢のような永遠の一瞬をあなたと歩んだ_」という言葉が余計に心に響きますね。

逆に国宝は2人がライバルとして描かれていました。キクオの抜擢によりシュンは舞台から去り、その後シュンの復活のころにはキクオは墜落、そして最後にやっとキクオが舞台に戻ったときにシュンの糖尿が激しくなるという歌舞伎界のスターをめぐる大きなすれ違いは見ていて非常に辛かったです。ポスターの「ただひたすらに共に夢を追いかけた_」も帰りに見てとても切なくなりました。

また国宝の終盤で再度登場した、京都に置いてきた娘である綾乃も良かったですね。
「人間国宝になるまでどんなたくさんの犠牲があったと思う?……だけど、その芸を見るだけでお正月が来たみたいな夢のようなそんな気分になれる。日本一の歌舞伎役者になったね。」
というような今までの芸一筋で戦ってきたキクオを救ってあげるような、映画を見てる観客まで救ってくれるような良い言葉でした。最初のシーンが新年会での舞いだったので、最後に「お正月」という言葉を持ってきた展開が最高でした。

石頭と一緒に覇王別姫を演じたかった小豆子、芸の道で強くあるために血統が欲しかったキクオ。似たような芸という世界で生きながらも果たしたかったことは正反対な気もします。


似ている点・シーン

まず伝統芸能×幼いころからの成長×2人の物語という視点から作られた物語ということに引き付けられます。また、2人の性格の違いもとても似ています。

覇王別姫→小豆子(内向的)、石頭(調子が良く行動的)
国宝→キクオ(寡黙、内向的)、シュン(口が達者で明るい性格)

また、吉沢亮の憂いのある表情がレスリーチャンに本当に似ていました。特に旦那さんの代役が決まって練習するときの、心中を決めた少女が憑依するような演出は素晴らしかったですね。虞美人と自分が分からなくなる小豆子を思い出してしまいました。女形の状態で横浜流星と並んでいても、どっちも美形なのは確かなのですがやはり吉沢亮に目が行くんですよね。
光を強く当てているとか大きく映しているとかもしかしたらあるかもしれませんが、とにかく吉沢亮の芸の道で生きる「覚悟」みたいな覇気が観客を引き付けていたのかもしれません。横浜流星の少しどこか余裕のある感じもシュンの性格に合ってて、女性らしさを持つ軽い羽根のような舞いとの相性がとても良かったですね。

ところで、個人的に両作品似ていると思ったカットについてお話させていただきます。間違っていたらごめんなさい!!

・新聞記者の取材シーン
→左に小豆子、右に石頭で写真を撮られるシーンがあるんですね。確かインタビューを受けていた気がするのですが、それが国宝での2人の新聞取材のシーンに雰囲気がそっくりでした。どちらも新進気鋭のスター!というような内容でした。

・屋上で舞うシーン
→予告で見てこれこれ!となったシーンです。覇王別姫では確か中庭で舞台化粧のまま月光のもとで刀を手にするシーンがありましたよね。雰囲気というか情景がとても似ているように感じました。化粧が落ちているのかと思ったらたぶん痣であったのには驚かされましたが……(涙)

・体を反らせる画角
→終盤のどこかの舞台で見せた一瞬の角度が、虞美人としてよく映されていた角度そっくりでした。一番辛い角度が一番美しいというのはよく言われますが、女形ならではの色っぽさというか魅力が出るカットでした。

なんかあと2つくらい似てると思ったシーンがあった気がするのですが忘れてしまいました。国宝の熱が収まったころにまた見に行くつもりです。


結論 『国宝』は日本版「さらば、わが愛 覇王別姫」なのか

状況や設定が似ているだけで、主人公の求める夢はそれぞれ全く異なるものでした。覇王別姫の虞美人として覇王と生きたかった小豆子、血統が欲しいと思いながら実力で芸の道を進むしかない喜久雄。激動の時代を芸という道で生き抜いた、それぞれの力強さがありました。


個人的感想

・花井家体調管理しっかりして!!!!!!
・序盤にあった、せりが上がる演者目線のカットとても良かった
・吉沢亮、どのシーンでも美しい
・幼少期演じた黒川君と越山くんの舞いの柔らかさが素晴らしい
・シュンの、遊んでいるお坊ちゃん感とその中のナイーブさのコントラストが良い
・1年半の稽古でこれできるのすごすぎ、横浜流星はべらぼうもやってるよね?スケジュールどうなってるの
・とにかくものすごい費用と手間がかかっている作品を1500円で見ていいはずはない
・キクオはメンヘラっぽい女の子、シュンは純粋な女の子を演じているように見えた
・重すぎる作品あるある、ベッドシーン逆に安心して見れる
・綾乃との対話シーン、吉沢亮のまつ毛の量が多すぎて初老とは思えなかったが、遠くから映したときの佇まいに老人感があって驚いた

3時間という超大作を新作として、映画館のスクリーンで見れて幸せでした。どちらの作品も様々な視点から考察したいポイントが多すぎるのでまだまだすべてを書ききれていないのですが、少なくとも自分の感想を整理することができました。素晴らしい作品に出会えたことに感謝をして、この記事を締めとさせていただきます。

p.s. パンフレット売り切れで買えませんでした


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