最後に守る大切なもの
あんたは自分のTODOリストを眺めてため息を付きたくなるような瞬間ってあるかい?
よく急ぐか急がないか。大切か大切じゃないかで作業順番を決め、急ぐ大切なことの次にやるべき内容はなんだなんて話があるじゃんか。
どうやら「急がないけれど大切なこと」をやるという意識を持つことで、いろんないい面が出てくるって話らしい。
急がないけれど大切なことってのは、急には成果は出ないけれど、高確率で将来への対応力がつく。
つまり、そういう作業は「資産」だって感覚もあるんだよな。
ただ、その前に立ちふさがる「急ぐけど大切じゃないこと」。
こいつが実に厄介だ。
今回はこの急ぐけれど大切じゃないことについて考えてみる回だ。
ちっと、自分のキャパと相談して理想の自分ってのを思い描いてみようぜ。
そもそも「大切」ってなんだ?
この大切って言葉を考えたときにセットで考えないと軸がぼやける物がある。
それはなにか。
それは「誰にとって」大切なのかって話だ。
自分にとってか。
家族にとってか。
仕事の成功に向けてか。
友人にとってか。
この「誰にとって」一つ考えても絞り込むのって並大抵のことじゃない。
結局全部が大切なことなんだからって言うんで、そこに取捨選択の余地があるってことすら忘れちまう。
この誰にとって大切なことをするかっていう取捨選択こそが「急がないけれど大切なこと」なんだと思うんだよね。
ぶっちゃけ「捨てる」って覚悟を決める事が出来るヒトはそうそういるわけじゃない。
進撃の巨人のアルミン・アルレルトが何かを成し遂げることが出来るヒトは大切な何かを捨てる事が出来るヒトだって感じのこと言ってたじゃんか。
逆説的に言うなら凡人には出来ねぇんだよ。「捨てる」なんて覚悟を決めることなんて。
でもやらなきゃならない。
結局、全部を守ろうとして全部中途半端にするのが凡人コース。
凡人に出来ることは限られていて、多くの大切なことを結果的に失ってしまう。
俺たちは天才じゃあない。
全てをこなしきることは不可能に近いんだ。
だからこそ“せめてどの役割で何を守るかだけは、自分で決めようぜ”って話になる。
決められない自分なら
もし、あんたが決められないっていうなら、一つ方法がある。
「決められるあんたを演じろ」
ここでもう一つ俺の好きな言葉を書き残しておく。
龍はただのトカゲだが火を吹かねばならぬから火を吹く。
空を飛ばねばならぬから空を飛ぶ。
負けられないから最強なのだ。
高機動幻想ガンパレード・マーチの中ででてくるセリフの一つだな。
俺たちもただのトカゲかもしれない。
でも持っているものを捨てて一番大切なヒトを優先順位の最初に置く。
そして順番に並べてみろ。
あんたのTODOの中で、最も後回しになっていることって「自分にとって大切なこと」だったりしないか?
それって、あんたにとってあんたが一番大切じゃないってことか?
違うだろ?
決められるあんたを演じるために必要なもの。
それはあんたのエゴ。素のあんた。あんたのスキのコアだ。
そのなんの役割も持っていないあんた自身に聞いてみろ。
「誰が大切なのか」ってな。
とあるトラブル現場の話
じゃあ実際に“決めた自分を演じた”ときの話をひとつ、聞いてくれ。
また思い出話かよとか言わないでくれよ?
まあ、そうなんだけれどさ。
とあるトラブル現場に俺が突っ込まれた時の話だ。
徹夜作業で20人近くのヒトが必死に眠気と戦いながら足掻いていた。
朝の7時だったかと思う。
早朝の状況棚卸しを顧客とマネージャークラスが話をする時間だ。
しかし、決定的な部分がまだ出来上がっていない。
俺が担当している部分だ。
あと10分。いや、5分あれば形にできる。
でも時間はあと3分。
俺はマネージャーに行った。
「行ってください。こいつはなんとかしますから!」
脇目もふらずに作業に没頭していたと思う。
その瞬間、俺が必死で守ろうとしていたもの。
つまりいちばん大切なものってなんだったのか。
たぶん「自分の誇り」だったんだと思う。
俺は仲間のためでも上司のためでも顧客のためでもない。
ただ「俺には出来る」と言う俺にすがった。
つまり俺にとっていちばん大切なのは「俺自身の矜持」ってやつだったんだ。
この体験はいわゆる「緊急かつ重要なこと」の話だ。
このただ中にあったときには「緊急ではない重要なこと」を選択する余地がない。
大切なのは、こういう体験をしたあとに、「なぜあのトラブルは起きたのか」を自分なりに考えることだと思うんだ。
それこそ「緊急ではない重要なこと」としてね。
そこから得た回答は、あんたの財産になると思うんだ。
今になってあのことを思うと、技術的なフレームワークの軽視ってのがあったと思うんだ。
みんなが好き勝手に作った結果、いざ性能が出ないとかの局所的な対応が出来ない。
例えばマイクロサービスとしてシステムを構築していれば、無茶な結合が「本当に必要な業務要件だったか」を設計段階で気づけたんじゃないか?
そういう振り返りってあんたのためだけのものじゃない。
次の奴らにとっても財産になると思うんだよ。
役割を剥ぎ取った自分のスキのコア
結果としては、なんとか間に合った。
顧客も上司も、安堵したように笑ってくれた。
けど、あの朝の帰り道で俺がいちばん覚えているのは、「やっぱり俺はやれた」という自分への安堵だけなんだよな。
今ならどうするかって?
さっきも書いた通り、マイクロサービスの塊として設計を施し、本質的に必要な要件と、多少のデータ不整合に耐えうるシステムを設計したと思う。
もちろんそれに伴う運用負荷を顧客と合意したうえでね。
でもその時の俺にはそんなことを考える余裕はなかったし、起きてしまったトラブルをどうにかするというミッションが最重要課題だった。
俺は、その時のあらん限りの力を全部使って考えて作ったと思う。
自分勝手の極みで俺はプロジェクトを首の皮一枚でつなげた。
では、俺は大切なもののために何かを捨てられたのか?
否。
捨てられたんじゃない。捨てさせられたんだ。
上司に、顧客に、仲間に俺は導かれたんだ。
なんて矛盾した話なんだ。
俺はみんなのために自己中心的になっていたってわけだ。
今でも思う。
俺は自分から自分の矜持を守ろうと出来るだろうか?
きっと「そうなってから」じゃ遅いんだ。
計画立案の時点で自分たちが「拾わないもの」「捨てるもの」を明確にしておいて、それを顧客に「捨てなければならない」ことを説得するしかない。
あのトラブルは要件定義の肯定ですでに作り込まれていたと言っても過言じゃない。
俺たちが捨てる覚悟を決めるのは、物を作り始めるずっと前にしかチャンスがないんだ。
そのチャンスをみすみす逃す手はないだろ?
では逃さないためには何が必要か。
顧客のため、自分のため、最も守らなければならないもの。
「スキのコア」だ。
それを意識して日々を過ごしていく。
そうしないと顧客の要望という名の闇鍋に引きずり込まれるだけだ。
筋を通す。
そのためのあんたの「スキのコア」。
マイクロサービスの適用というのはアイディアに過ぎない。
問題は、顧客の要望を自分の「スキのコア」で翻訳できるところまで顧客の要望を把握したのかって話だ。
もっと言うならあんたの「スキのコア」に顧客の要望のコアを巻き込むことが出来るかって戦略の話だ。
コレには相当な胆力と先見性が求められる。
あんたの「スキのコア」を通すってのは、それだけ大変だがそれに見合う価値を生み出すもんなんだよ。
なに?俺には出来そうもないって?
諦めたらそこで試合終了だぞ。
最初は演じるだけでいい。
自信たっぷりにあんたの「スキのコア」を顧客に伝わるように翻訳すれば良い。
その演技はあんたを化けさせるはずだ。
なあ、あんたはどうだい?
あんたは、究極に追い詰められた状況に置かれて、それでも「自分のコア」=「スキのコア」を守る覚悟を決めることが出来るかい?

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