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【すっぱいチェリーたち🍒】スピンオフ田中健一編#2

あんたも誰かの企画に乗っかって何か書くことってあるかい?

前にこの企画に乗っかって書いてみたんだ。

企画ページそのものはこっち。

前回のはこれ。

で、俺のオリジナルキャラクターを混ぜてやろうという意地汚い大人の感情の赴くまま書いたわけだ。

多分目次からのが読みやすいから気になったら読んでみてくれよな。

今回は、ちゃぼぱちさんのこの記事に出てくる茶保先生と絡ませてみる回だ。

まあ、ちっと眺めていってくれよ。


話し相手

あんたには気の合う飲み相手ってのがいるかい?
いるとしたら、あんたは相当運が強いと思う。

飲み相手が出来るにはいくつか条件がある。
・飲み屋に行けるという環境
・そこで話が合うヒトと出会うこと
・そしてそのヒトに話しかけること

幸いなことに俺には運があるみたいだ。
仕事の力関係も何もなくて、それでも話をすることが出来る。

大人になってそんな時が出来るってホント奇跡じゃないか?

今回はそんな飲み仲間との他愛のない話だ。

まあ、飲み話だと思って気楽に聞いていってくれよ。

話し相手のいる場所

俺には行きつけのスナック「葵」ってのがある。
ママは聞き上手だし、なんやかんやで絡む奴らも俺にとっては魅力的だ。
なにより安酒がいっぱい置いてあるから懐に優しい。

父子家庭なんで、ホントだったらそんなにスナックに行けるわけもないんだ。
若くして妻と出会い、子をなしたが、そのまま妻は帰らぬヒトとなった。

その後めちゃくちゃシンドい思いをしたものの、息子は立派に育って来年には就職して働くってことになっている。
まあ、高校の頃から起業を考えるくらいに頭が切れる息子なので「ホントに俺の息子か?」とか思ったけれど、周りから「まんま田中さんじゃん」とか言われる感じなので、まあ、俺の血をついではいるんだろう。

で、その息子が家事全般をそれなりにこなしてくれるので、俺はスナックなんぞにちょいちょい来ることが出来るってわけだ。
誰だ?そこでダメ親父とか言う定型文をぶつけてるのは。
まあ、そうなんだけどね。

カランコロン

いつものようにドアベルが鳴る。
やっぱアナログのベルの音って良いよな。

「いらっしゃい。あら田中さん、ちょっとお久しぶりね」

お久しぶりって先週来てただろうが。
とか心のなかでつぶやきながらいつもの席につくこうとして、その途中で声をかけられる。

「あら田中さんお久しぶり」

なんだデジャブか?
その声の方向を見たときに顔見知りの女性の顔が見えた。
「お、ちゃぼさんか、久しぶりだな」

珍しい苗字なんだけれど、飲み仲間くらいの間柄だ。
どう言う字を書くのかとか知らない。
ちゃぼさんも俺のファーストネームなんて知らないだろうし、まあそういうもんだと思う。

ちゃぼさんの悩み

「で、あんたんところはどうなんだい?景気が良いのかい?」
「ここでは仕事の話はナシでしょ?」

まあ、それはそうだ。
ここは仕事の悩み相談所じゃないし、なおかつ他人に必要以上に踏み込むところじゃない。

「まあ、そりゃそうだ。
 だがまあ、仕事に限らずぐちをこぼしたくなることって誰にでもあるじゃんか」

なんとなくガキっぽく反論してみる。
意味は無い。
ただの言葉をかわす遊びだ。
相手もそれは分かっている。

「ぐちねぇ。そんなの毎日聞き飽きるくらい聞いてるわよ」

まあ、ちゃぼさんならそうなんだろうな。
ママに劣らず「聞き上手」の基本みたいなのがあるんだろう。
その基本マニュアルを見てみたいと思って、「いや、そんなのがあったら俺の中が誰かの悩み事でいっぱいいっぱいになっちまう」と思い直した。

「ほほう、その武勇伝を聞いてみたいもんだね」
そんな俺の言葉を聞いてすこし皮肉っぽく微笑みを浮かべながらこう返してきた。

「惚れた腫れただの、そんなんばっかりよ」
「ちゃぼさんは恋愛猛者扱いなんだな」
「そうよ?あたしほどの恋愛経験者はそうはいないわよ」

それを聞いて
「羨ましいこった」
と返しながら、そいつが悲劇の連続だってことは俺にも分かっている。
恋愛の数が多いってことは、それだけ多くの別れを経験したってことだもんな。
そこで、絶妙のタイミングでママが声をかけてくる。

「今日は何から?いつものI.W.ハーパー?」

ああ、それで。
と言いかけて俺はちょっと考えてこう答えた。

「いや、レモンサワーにしてくれるか?」
ママはちょっと驚いたような表情で聞き返す。
「あら、珍しい。田中さんがサワーだなんて」

そう言われて俺はまた少し考えて答えた。
「ほんの少し青春に触れてきたんでね」

ママは「はい」とだけ言って微笑みをたたえながら作り始める。

それを聞いてちゃぼさんは聞いてきた。
「どんな青春?」
「何のことはないさ。どこにでもある当たり前の青春ってやつだ」
「ふ~ん」

気のない返事のあとにちゃぼさんは一言付け加えた。

「そういうのって忘れたくないよね」

俺は「そうだよな」と返して出来上がったレモンサワーを一口すすった。
すっぱいなぁ。
まあ青春ってそういうことなんだろうと黙って飲んだ。
あのゴリラ顔の少年を思いながら。

#すっぱいチェリーたち
#歌えないオッサンのバラッド

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