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手紙を書く、ということ〜文学フリマ京都9参加報告

noteにアップした記事を"再演"した宝塚観劇本『牧童日記』を携え、このたび文学フリマ京都9に参加しました。文学フリマ自体は買い手として何度か足を運んだことがありましたが、売り手としてブースの内側に入るのは初めての経験でした。お越しいただいた皆様、まことにありがとうございました。

当日はちゅいんぐゎさんの本も置かせていただきました


ブースの内側という安全圏から、こちらに関心を向けることなく次々と流れていく人々の横顔をただただぼーっと眺めているだけであっという間に時間が過ぎていくし、留守番をひとに任せていつものように会場を回遊していてもいつでも帰ることのできる拠点があるというだけで心強いものです(気になったけど人垣が出来ていて近寄れなかったブースに後ろ髪を引かれたりしながら喧噪をかき分けていると見知った顔がぱっと目に飛び込んできてたちまち人心地)。なるほど、文学フリマに売る側として参加するために本を作るのだという動機もありうるのだなあ、ということがよく実感されました。

文学フリマ京都9の開催日が花組『エンジェリックライ』『Jubilee』東京公演大千穐楽とかぶってしまったのは痛恨の極みではありました。とはいえかぶっていることに気づいたのは申し込んで参加料を支払った後なのですでに後の祭り。今回の花組公演は通えば通うほど享楽が加速度的に増殖していく性格のもので、永久輝せあ星空美咲という夢に描いたような(ごくごく個人的で偏った印象を記するなら、00年代アニメ・ゲームコンテンツの土から生まれ、水で育ち、空気を纏ったかのような)トップコンビのお披露目であり、その体制に綺城ひか理が居合わせるたった一度の貴重な機会ということもあって、できればこの花組のこの面子が居並ぶいまこの瞬間、この作品世界のただ中に永遠に閉じ込められてしまいたい、できれば永遠に閉じ込められていたかったと後々ことあるごとに回顧しどうしようもなく幸福な喪失感に胸が締め付けられてしまう、自分にとっては雪組『幕末太陽傳』以来の体験であることは間違いありませんでしたし、もちろん9月の公演初日の翌日から宝塚大劇場へは毎週のごとく通い詰め、ほぼ満足したとおのれに言い聞かせられるくらいの濃い歳月を過ごしはしたものの、わが愛しき『ゴールデン・リバティ』観劇に精を出しながらも、あるいは『宝塚110年の恋の歌』に一喜一憂しながらも、『エンジェリックライ』『Jubilee』の残滓が生活のなかのあらゆる細部に潜み、ひとたび指を伸ばせばたちまち謳いはじめる日々を送っていたわけでしたので、後日タカラヅカニュースにて放送された千穐楽映像のダイジェストを見て、公演を無事走りきったという達成感とはまた別の、はじまりそして終わりゆく"はじまり"のときを皆で悼み、慈しみながらあらゆる感情を総ざらいするかのような異様な濃縮と高テンションを目の当たりにし、やっぱりどうしても(配信で)居合わせたかった! と歯噛みをしてしまいました。

とはいえ事前に日付がかぶっていることに気がついていたら「文フリ」ではなく「宝塚」を取ったのかといわれればそれはわからない。無駄に悩むというコストを支払わずに済んだとも言えますし、どちらかを選びどちらかを選ばなかったのだという苦い事実を世界に刻まずに済んだとも言えるでしょう。むしろ同日だったことに奇縁すら感じる余裕ができました。

どうしても綺城ひか理さんが退団する前に本に仕立て上げてしまいたい、という思いがありました。切実さというより、辻褄を合わせるという意味で。noteに二年ほどえっちらおっちら書き綴ってきた観劇メモをもとに一冊の本をでっちあげようと決めたのがいつだったかはおぼえていません。『牧童日記』に詩を寄せてくださった住田別雨さんから「とうぜん本にするんだよね?」と言われ、意想外の言葉に「えっ」と困惑しながらも、その手があったか……と心の膝を打ち、うっすらそのことを意識しながら2024年を過ごしていたときに舞い込んできたのが綺城ひか理さん退団の報だったのでした。『アルカンシェル』『ドン・ジュアン』を経て、いよいよあかさんにお手紙を出す機運が高まってきたな、と便箋や封筒のことを考えはじめていた矢先のことです。いやいや相手役ひとこと観測=媒介者みさきの三つ巴で新生花組を営んでいくんやないんかいという思いと、まあしかし新生花組のあるべき構図にはあかさんは「邪魔」かもだよね、という思いが同時に去来したものでした。

あかさんにお手紙を出したいと思ったのは、綺城ひか理さんに対して自分が、ひょっとしたら自分だけが言えることがあるかも知れないと思ったからです。それはもちろん自分にユニークな視点が具わっているだとか、表現力が豊かだとか、批評眼が卓越しているだとかいうことではまったくなく、”わたし”の座る席には”わたし”以外座ることが出来ない、ということでしかありません。そして”わたし”の席から見えることを誰も言っていないように思えるのなら、思ってしまったのなら、それはもう自分で言うしかないのではないでしょうか。自分はそういう動機でしかお手紙を書くことが出来ませんでした。

そしてそれはnoteの観劇メモも同じです。そもそもnoteに一番初めに載っけた瀬戸花まりさんについての記事は、具体的な記述は違えど書かれていることはおおむね瀬戸花まりさんに三通ほど出したお手紙に書いたのと同じような内容なのでした。じゃあ時間的にも気持ち的にも脳の容量的にも余裕がとれそうにないので、いっそ綺城ひか理さんにお手紙を書くのはやめにして、本をこの世界に送り出すことに注力することでその代わりとしようかな、と思うに至ったわけです。だから綺城ひか理さんが退団する前に仕上げないと「辻褄が合わなくなる」わけです。

『牧童日記 2022年1月から2024年7月までの宝塚歌劇』はnoteに書き綴ってきた観劇メモを、記事によって多寡はありますが、大幅に加筆修正して綴じ込めた本です。章を割いた作品は『今夜、ロマンス劇場で』『夢介千両みやげ』『めぐり会いは再び next generation―真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)―』 『グレート・ギャツビー 』『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』『BONNIE & CLYDE』『鴛鴦歌合戦』『アルカンシェル』 『ETRENAL VOICE 消え残る想い』で、観た作品のすべてではないですが、何か言えることがあるなと思った作品のすべてではあります。普段より「娘役こそが宝塚である」と嘯いて憚らない人間ですが、「でもこの本、結局トップコンビの話が多いよね」という指摘をいただきました。まあ、でもそれってつまりは同じことだよなあ、というのがこの本の趣旨といえば趣旨となります。

より多くのひとに手に取っていただきたいという一心でイベント参加をこれからもしていくつもりですし、BOOTHでの販売もはじめました。

『牧童日記 2022年1月から2024年7月までの宝塚歌劇』
著者:想映ゆい
A5サイズ  91ページ
2024/11/29(金)発行
価格:900円+380円(あんしんBOOTHパックにて匿名発送)

文学フリマ京都9にて一緒に売らせていただいたちゅいんぐゎ『櫂と櫓』も取り扱っております。『牧童日記』とのセットも作ってみましたので、よろしければ!


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