AIも部下も動かない原因は「いい感じに」だった
「いい感じにまとめておいて」——この一言で、AIも部下も迷わせていたのかもしれません。
会議メモの要約、報告資料のたたき台、上司向けの説明文。
生成AIに頼める仕事は増えました。
でも、実際に使ってみると、こんなことが起きます。
「思っていた回答と違う」
「長すぎる」
「短すぎる」
「そこをまとめてほしかったんじゃない」
私も最初は、生成AIに対してそう感じていました。
「このツール、やっぱり使えないな」と。
でも、何度か使っているうちに、少し嫌なことに気づきました。
これは、部下への指示でも同じことをしているのではないか、と。
「いい感じにまとめて」は、ほとんど伝わっていない
私は、以前よくこう言っていました。
「いい感じにまとめておいて」
「わかりやすく整理しておいて」
「ざっくりでいいから出しておいて」
言っている側としては、そんなに難しいことを頼んでいるつもりはありません。
でも、受け取る側からすると、かなり困る指示です。
何をもって「いい感じ」なのか。
誰にとって「わかりやすい」のか。
どのくらいの粒度なら「ざっくり」なのか。
そこが伝わっていなければ、相手は自分の感覚で埋めるしかありません。
そして、出来上がったものを見て、こちらが思うわけです。
「そうじゃないんだよな」と。
でも、冷静に考えると、相手が悪いとは言い切れません。
完成形を伝えていなかったのは、こちらだからです。
AIは、こちらの曖昧さをそのまま返してくる
生成AIは、空気を読みません。
「この人はたぶん、こういう資料がほしいんだろう」と忖度してくれるわけでもありません。
こちらが、
「昨日のミーティングの内容をまとめて」
とだけ伝えれば、AIはAIなりにまとめます。
でも、その時点では、判断材料が足りません。
誰向けの要約なのか。
何に使うのか。
どのくらいの長さがよいのか。
箇条書きなのか、文章なのか。
専門用語は使ってよいのか。
結論だけでよいのか、背景も必要なのか。
ここを伝えないまま、「思っていたものと違う」と感じていたのです。
たとえば、こう伝えるとどうでしょうか。
「昨日の営業会議の内容を、来週の部長報告用にまとめてください。A4半分程度で、結論を先に書き、重要な決定事項を3点、未決事項を2点に分けてください。専門用語はできるだけ使わず、次に確認すべきことも最後に入れてください」
ここまで伝えると、返ってくる内容はかなり変わります。
変わったのは、AIの性能ではありません。
こちらが渡した情報が変わっただけです。
そしてこれは、部下への依頼でもまったく同じです。

部下もAIも、自分の「普通」で動いてしまう
たとえば、部下に資料作成を依頼するとします。
「役員会議用の資料をまとめておいて」
これだけだと、相手は自分の経験で考えます。
ある人は、詳細な説明資料を作るかもしれません。
ある人は、要点だけの簡単な資料を作るかもしれません。
ある人は、背景説明を厚くするかもしれません。
ある人は、数字中心で整理するかもしれません。
どれが正しいかではありません。
最初にこちらが、何を求めているかを伝えていないだけです。
本来なら、こう伝える必要がありました。
「役員会議用なので、A4一枚に収めてください。目的は意思決定です。背景説明は最小限でよく、選択肢ごとのメリット・デメリット、費用感、リスク、判断してほしいポイントを入れてください。専門用語は避けて、数字の根拠があるものは必ず記載してください」
ここまで言えば、相手はかなり動きやすくなります。
逆に言えば、ここまで言わないまま「わかってくれるだろう」と思っていた場面が、私にはありました。
AIを使い始めて、それが見えるようになりました。
指示に必要なのは、才能ではなく「前提」です
生成AIにうまく指示できないとき、つい「プロンプト力がない」と考えてしまいます。
でも、難しいテクニックの前に、まず必要なのは前提を渡すことです。
私は、最低限この4つを意識するようにしています。
1つ目は、目的。
何のために使うのか。
報告なのか、判断材料なのか、説明なのか、議論のたたき台なのか。
目的が違えば、必要な情報も変わります。
2つ目は、読み手。
誰が読むのか。
上司なのか、役員なのか、現場メンバーなのか、顧客なのか。
読み手によって、言葉の選び方も、情報の粒度も変わります。
3つ目は、完成形。
どのくらいの長さか。
箇条書きなのか、文章なのか。
表にするのか、要点だけでよいのか。
完成形が見えていないと、相手は自分の「普通」で作ります。
4つ目は、制約。
入れてはいけないことは何か。
専門用語を使わない。
主観を入れない。
未確定情報は断定しない。
数字の根拠がないものは書かない。
こういう制約があるだけで、アウトプットのズレはかなり減ります。

これは、AIへのプロンプトでも、部下への指示でも同じです。
「伝えたつもり」は、AIには通用しない
人間相手の場合、こちらの指示が少し曖昧でも、相手が補ってくれることがあります。
過去のやりとり。
職場の空気。
上司の好み。
会議の流れ。
そういうものを読んで、何とか形にしてくれる。
だから、指示する側の曖昧さが見えにくい。
でも、生成AIにはそのごまかしが効きません。
こちらが伝えていないことは、基本的に伝わりません。
だからこそ、AIへの指示は、自分の指示の癖を見る練習になります。
「この指示で、相手は迷わず動けるか」
「完成形は伝わっているか」
「読み手は明確か」
「やってはいけないことまで言えているか」
AIに投げてみると、足りない部分がかなり見えてきます。
返ってきた回答がズレているとき、それはAIの問題だけではありません。
こちらの指示の抜け漏れが、そのまま出ていることがあります。
生成AIは、指示出しの練習相手になる
部下への指示を、いきなり完璧に変えるのは難しいです。
相手もいます。
関係性もあります。
忙しい現場では、丁寧に整理してから伝える余裕がないこともあります。
でも、生成AI相手なら何度でも練習できます。
雑に頼めば、雑な回答が返ってくる。
条件を足せば、回答が変わる。
目的を伝えれば、構成が変わる。
読み手を指定すれば、言葉が変わる。
この反応の早さが、自分の指示を見直す練習になります。
私は、生成AIを使うようになってから、部下や関係者に依頼するときも、少し立ち止まるようになりました。
「今の依頼で、相手は何を作ればいいかわかるだろうか」
「自分の頭の中にある完成形を、ちゃんと言葉にできているだろうか」
「あとから“そうじゃない”と言う前に、先に伝えられることはないか」
こう考えるようになったのは、AIに何度もズレた回答を返されたからです。

「AIが使えない」の前に、指示を見直してみる
もちろん、生成AIにできることには限界があります。
すべてを任せればよいわけではありません。
出てきた内容を確認するのは人間です。
判断するのも人間です。
責任を持つのも人間です。
でも、生成AIは、自分の指示の曖昧さを見つける相手としては、とても使いやすい存在です。
AIに伝わらない指示は、部下にも伝わりにくい。
AIでズレる依頼は、仕事の現場でもズレやすい。
そう考えると、生成AIの活用は単なる時短ではありません。
自分の仕事の頼み方を見直す機会にもなります。
次に必要なのは、「聞き方」と「確認の型」
この記事では、AIへの指示と部下への指示は、実はかなり似ているという話を書きました。
では、もう一歩進んで考えるとどうなるか。
部下やベンダーから、
「順調です」
「問題ありません」
「予定通りです」
と言われたとき、こちらは何を確認すればよいのでしょうか。
この問いは、私自身がかなり悩んできたテーマです。
「順調です」と言われて安心していたら、後から問題が出てきた。
「問題ありません」と聞いていたのに、実はリスクが見えていなかった。
「進んでいます」と言われていたのに、成果物の方向性がズレていた。
そういう経験がありました。
そこで私は、生成AIを壁打ち相手にして、
「順調です」の裏にあるリスクをどう確認するか
「何かありますか?」以外に、何を聞けばよいのか
週次報告で、どんな項目を書いてもらえばよいのか
を整理しました。
有料記事では、そのプロセスを具体的に書いています。
無料部分では、私が「順調です」を信じて失敗した経験と、マネジメントで見落としやすい6つの落とし穴を整理しています。
有料部分では、生成AIとの壁打ちを使って、確認の盲点をあぶり出すプロンプト、部下やベンダーに聞くための具体的な質問、週次報告フォーマットの考え方までまとめています。
「AIへの指示を見直す」だけで終わらせず、実際のマネジメントやプロジェクト管理にどう使うか。
そこまで知りたい方は、次の記事も読んでみてください。
「いい感じに頼む」から、「迷わず動けるように伝える」へ。
そして、
「順調ですか?」から、「何を確認すればリスクが見えるのか」へ。
生成AIは、その練習相手になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事が、「AIへの指示」や「部下への伝え方」を少し見直すきっかけになればうれしいです。
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また、今後も「生成AIを仕事でどう使うか」「業務改善やマネジメントにどう活かすか」を、実務目線で書いていきます。
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#生成AI #AI活用 #プロンプト #マネジメント #仕事術
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