「分かってくれるはず」が危険だった|生成AIで鍛える“伝わる指示力”|生成AI×マネジメント練習帳
「部下が動かない」のは、あなたの指示が「独り言」になっているからかもしれない
部下に指示を出したあと、こんな経験はありませんか。
返ってきた成果物を見て、「そこじゃないんだよな……」と心の中で呟いてしまう瞬間。
あれだけ伝えたつもりなのに、意図が届いていない。
どこがずれているのか、自分でも言葉にできない。
だから、また同じことが繰り返される。
何かが違う、とは分かっている。でも、何が問題なのかが見えない。
実は私自身も、まったく同じでした。
この記事では、そのもどかしさを解消するための方法をお伝えします。
AIを「文章の代行者」ではなく、「自分の指示の穴を見つけてくれるコーチ」として使う、という考え方です。難しいことは何もありません。今日から使えるプロンプトも合わせてご紹介します。
AIを「代行者」ではなく「文章コーチ」として使う
「いい感じに」という言葉を、私たちはある種の魔法だと思い込んでいます。
でも、その魔法が解けたあとに残るのは、部下の困惑と停滞だけです。
AIへの指示でも、同じことが起きました。
曖昧な言葉には、曖昧なアウトプットが返ってくる。
最初は「AIの限界だ」と思っていたのですが、実は「自分の指示の限界だった」と気づいたとき、少しだけ背筋が伸びました。
まず試してほしいのが、指示した内容、メールやチャットの文章を一つAIに見せて、こう聞くことです。
「この文章のどこが分かりにくいですか? 目的・主語・期限の観点で指摘してください」 返ってくる指摘は、けっこうグサっときます。
目的が曖昧で「結局、相手に何を求めているのかが見えない」と言われる。
主語が抜けていて「誰が、いつまでにやるのかが分からない」と指摘される。
「しっかり」「早めに」を多用していると、「これは書き手の願望であり、指示ではありません」と返ってきたこともありました。
正直、初めてやったとき、少し恥ずかしかった。
「分かりやすく書けている」という自己評価が、根拠のない思い込みだったと気づいた瞬間でした。
重要なのは、AIの修正案をそのまま使わないことです。
「なぜ修正後のほうが伝わるのか?」を自分の頭で一度考えてみる。
それだけで、翌日の指示の出し方が、少し変わります。
プロンプトを書く練習は、そのまま「部下への指示」の練習になる
AIへの指示(プロンプト)の質が、アウトプットの質を左右する——これは、部下へのアサインメントとまったく同じ構造です。
効果的なプロンプトに含めるとよい要素として、
・目的(何のためか)
・対象(誰向けか)
・形式(どんなアウトプットか)
・制約(文字数・納期・トーン)
の4点があります。
この4点が揃っていない依頼は、AIに対しても、人間に対しても、同様に「解けないパズル」を渡していることになります。
こんな添削プロンプトを、自分用に一つ持っておくと便利です。
以下の文章を、部下にとって『やることが一意に分かる指示文』に直してください。
目的・期限・担当・成果物が明確になるよう修正し、改善ポイントも教えてくださいAIへの指示を磨く練習が、そのまま部下への依頼を磨く練習になる。二度手間ではなく、一石二鳥です。
「この指示、入社1年目に伝わる?」をAIに確認する
マネジメントで一番難しいのは、「自分には当たり前のことが、相手には当たり前じゃない」という非対称性です。
あるとき、自分が書いた会議招集メールをAIに「入社1年目メンバーの立場で読んでください」と依頼しました。
返ってきた指摘は、「『例の件について』という表現は、何の件を指すのか分かりません」というものでした。
私にとっての共通認識が、文章の中には一切書かれていなかったのです。
こう問いかけるだけで、AIは自社の文脈を知らないインターンのような視点で、あなたの言葉の死角を教えてくれます。
このメールを、入社1年目メンバーの立場で読んだとき、分かりにくい点と誤解が起きそうな表現を指摘してください部下視点・上司視点・1年目視点、それぞれに立場を変えて読ませると、自分では絶対に気づけなかった「暗黙の前提」が次々と浮かび上がってきます。
まず「毎日1行」だけ、始めてみる
表現の癖は、一朝一夕には変わりません。難しく考えなくて大丈夫です。
まず「毎日」だけ、試してみてください。
【毎日】重要なメッセージを送る前に、AIで簡易チェック。
「簡潔か、目的が明確か」だけ確認する。
【毎週】週次報告や議事録をAIに「3行でまとめると?」と聞かせてみる。
自分の意図とズレがあれば、文章の論理構成を見直すサインです。
【毎月】1か月分の指示メールをAIに分析させ、「よく使う曖昧表現」をレポートしてもらう。
このルーティンを始めてから、私自身は指示の出し直し(手戻り)が明らかに減りました。
「分かりやすく書けた」という自信が、少しずつ根拠のあるものに変わっていく感覚です。
鏡に映った自分の言葉を、丁寧に磨く
「いい感じに」という言葉を飲み込んで、一文字でも簡潔に、一重でも論理的に。
言葉を整えることは、一見遠回りに思えます。
でも最近、その手間を惜しまないことが、相手の時間を尊重するということだと思うようになりました。
部下の成果物が期待と違ったとき、まず自分の言葉を見直してみる。
AIが的外れな回答を返してきたとき、まず自分の指示を確認してみる。
「生成AIは、最も正直な鏡である」
鏡に映った自分の言葉の「濁り」を、AIと一緒に一つひとつ取っていく。
今すぐ1分で試せます
部下への指示、メールやチャットの文章を一つ開いて、ChatGPTまたはClaudeなど生成AIに貼り付け、こう聞いてみてください。
この文章のどこが分かりにくいですか? 目的・主語・期限の観点で指摘してください返ってきた内容が、あなたの「指示の現在地」です。
「AIにグサっと言われた経験」や「試してみた感想」があれば、コメントで教えていただけると嬉しいです。
あなたの経験が、次の誰かの気づきになります。
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