プレイリストは本棚に反映される5
【ギリシャだ!SF だ!なぜ!?!?】
全ての道はローマに通ずる。では全ての物語はどこへ通ずるのか。
数えきれない回答が生まれるであろうこの問を、「ギリシャへ通ずる」としてみよう。
なぜかって?そこにギリシャがあるから!
【乾いた風が吹く】
ふざけた前置きはさておき、ギリシャといえば多分多くの人が「神話」の国、と答えるだろう。かくいう私も小学生の頃はギリシャ神話にどハマりし、たくさんの神話を読み漁った記憶がある。
が、意外にもギリシャは神話だけでなく、SFに関しても土壌が豊かな国である。
行き過ぎた化学は魔法と見分けがつかないが、途方もつかない神の時代と行き過ぎた近未来は、意外ではなく帰結して当然のものなのかもしれない。
ありとあらゆるカルチャーに影響を与えたのだか、ギリシャ神話に著作権も利用料もなく、一時期は財政危機にあった。が、それも堅実に立て直しを図られつつあるとのこと。

【冷たい水の中をきみと歩いていく】
さて、本題のギリシャSFだ。
『ノヴァ•ヘラス』である。
これは以下感想文で取り上げた海外のSFシリーズのうちの1つである。
収録作品を見る限り、ギリシャにおける近未来は希望のある世界ではない、というのが根底にある。
ただし、神話の時代みたく人間の時代は終わらない。以下は本書の「はじめに」からである。
主人公たちは、つねに生き延びて立ち直り、つねによりよい明日を求めるギリシャの歴史そのものを、そして、おそらくいくぶんかは、逆境のなかでも敵(それが軍事独裁者だろうと)に抗してしぶとく前進するギリシャSFの頑強さを、両ながら映し出しているといえるだろう。(中略)影を落としながらも明々と燃ゆるたゆみないプロセスの描写、それこそが、この『ノヴァ•ヘラス』なのだ
その中でも、とりわけ絶望のなかにも確かな幸福もまた存在している、ということがわかる一遍がある。
エヴゲニア•トリアンダフィル作「われらが仕える者」だ。
主人公のマノリはサント島でホテルのフロント業を長年勤めている。古い友人のアミーリアは30年以上毎年バカンスでサント島を訪れ、マノリと過ごす時間を楽しんでいる。
だが、マノリは10年前から人造人間に置き換わった。オリジナルのマノリは海底でスリープ中だ。そのことをアミーリアはしらない。他の人間からも決して気付かれることはない。何か不審な動きをしようとすると、脊髄から電気信号がながれ、動きを止めるからだ。
年々地盤崩壊の足音が響くサント島で今年もアミーリアと、バカンスを過ごす、というのがあらすじだ。
私がこの一遍を読んで1番に頭に浮かんだのはこの曲だった。
谷山浩子作詞作曲「冷たい水の中をきみと歩いて行く」である。1990年リリースの曲だが公式が近年収録したApple Musicしか見つからず…
私は父親のCDを聴きました。
冷たい水の底を永遠に愛した人と生きるうちに、自分は透明になる…というキラキラした物悲しい幻想的な歌だ。私はこの曲を聴くと、いつも遠い日の決して戻ることはない夏を思い出す。
物語の最後、アミーリアはまるでマノリがアンドロイドであることに気づいているかのように、彼のアンドロイドとしての制限を解除する。2人は約束した蝶の島へ向かっていく…。
私は冷たい水の底を歩く2人のイメージが強く脳裏に閃いた。やがて海に溶けるかもしれないし、アンドロイドの自壊を迎えるかもしれない。ただおそらくアンドロイドに幸福の時間が訪れたことを他人は否定することはできない。
ギリシャのカラッとした陽気のような、夏の眩しさと夏にしか感じられない静寂を感じられる一遍だった。
【おわりに】
どんな終末を迎えたとしても、絶望に満ちていようとも、少しの希望や幸福、また安寧は確かにある、という話が好きです。
自分もそうありたいと思います。
