『続グッド・バイ』告発(一)
田島は、アツ子との決別により、最も重い道徳的な負債から解放された。しかし、その解放感こそが、彼に残る愛人たちを無造作に扱う、最大の油断となった。愛人処理の手順が、あまりに画一的になりすぎていたのである。
六人目の愛人、ミヨは、劇団の端役として活動する、華やかだがどこか影のある女性だった。彼女は、田島から別れの手紙を受け取った。その内容は、新しい妻と共に極貧の生活を始めるため、迷惑をかけられないという、まるでアツ子に送った手紙と酷似したものであった。
その数日後、ミヨは、別れの手紙を受け取り、将来への不安に駆られながら、他に頼る場所が見つからない中で、以前田島から接待によく使うと聞かされていた料亭を訪れた。
そこで、その料亭の若女将、ハツと顔を合わせた。ミヨは、顔を合わせたハツに、切り出すように尋ねた。
「実は、田島様という方がよくこちらを利用されていると伺ったのですが...」
ハツは、ミヨのその一言に、すぐに反応した。
「ああ、あの田島さんですか」
ハツが口にしたこの一言から、話が始まった。
「あの人、最近どうもおかしいんです。突然、とんでもない美人を妻にして、貧乏生活を始めるなんて、まるで小説みたいなことを言い出して。」
ミヨの言葉に、ハツは一瞬、顔色を変えた。
「ちょっとお待ちください。あなたも、田島さんとお付き合いを…?」
「ええ、あなたも、そうなんですか?」
二人は、信じられないものを見るように互いの顔をまじまじと見つめ合った。そこには、ライバルに対する憎しみよりも、全く同じ嘘を吐かれた者同士の、裏切られた者特有の奇妙な連帯感が先に立っていた。若女将であるハツの目には、ミヨの不安定な職業と、田島に依存していた影が見て取れた。一方、ミヨは、格式ある料亭を仕切るハツにまで、田島が同じ手をかけていたという事実の広さに、眩暈を覚えた。
「まさか、奥さんの話まで、同じなんですか。」ハツは静かに尋ねた。
「ええ。極度の美人で、純粋で、そのために私は身を引くべきだと。……あの人は、一体私たちを何だと思っているんでしょう!」
「あの人が、極貧ですって? それでいて、極度の美人を連れて? そんなに都合の良い話が、この世にあるはずがないでしょう!」
ハツは、客を相手にする商売柄、人の裏表を見抜くことに長けていたが、この虚構のあまりの露骨さに、自らの客を見る目が欺かれていたことに激しく憤った。ミヨもまた、深く息を吐いた。
「そうなの。それに、あなたも『君はまだ若いから幸せになってくれ』という、あの、しらじらしい説教をされましたか?」
「全く同じです! あの人は、私たちに道徳的な責任を押し付けて、自分だけが美しい物語の中で罪を清算しようとしている。こんなに醜い別れ方があるかしら!」
ハツは、若女将という立場から、田島の無責任な態度に憤りを感じていた。二人は、田島の別れの言葉が、あまりにも手馴れていること、そして「新しい妻」の存在だけが奇妙なほどに強調されていることに、深い違和感を超えた確信を抱いた。
【続】
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【原作】
太宰治『グッド・バイ』(新潮文庫、1972年)
【小説/画像】
Geminiで生成しました。
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