『続グッド・バイ』虚勢(三)
サチコの応接間は、白と金で統一された、まるで展示品のようなサロンだった。彼女の生活の隅々まで、夫の社会的地位と経済力を誇示するためだけに存在しているように見えた。田島は、これほどまで「虚勢」を地で行く女と付き合っていた自分自身に、改めて軽い吐き気を覚えた。
三人は、それぞれの役割を演じるように椅子に座った。サチコは、正面に座る田島と、その隣で彫像のように静止しているキヌ子を、交互に、そして注意深く観察した。
「ずいぶん突然のご訪問ですこと。お隣の奥様も、私たちをご覧になっていましたわ。この方は、本当にお仕事のパートナーなの?」
サチコは、キヌ子を指差すことなく、しかし、その存在を否定するように田島に問いかけた。その声音には、田島が連れてきた女は、自分よりも地位が低い者に違いない、という無意識の確信が滲んでいた。
田島は、この女の傲慢さこそ、自分が別れを告げるべき理由だと、強く心に念じた。
「君に尋ねる義理はない。そして、君が知るべきことは、私は今、このキヌ子さんと生活を共にしている、ということだけだ。」
田島は、最大限に冷たく、そして誇らしげに言い放った。キヌ子は、まるでその言葉を一切聞いていないかのように、ただ真正面を向いたまま静止している。その完璧な沈黙と美しさが、田島の言葉に嘘偽りがないという、決定的な説得力をサチコに与えていた。
サチコの顔から、わずかに笑みが消えた。彼女は、キヌ子の美しさが自分の想像を遥かに超えていること、そして田島が以前とは比べ物にならないほど、自信に満ちた(ように見える)態度でいることに、動揺し始めていた。
【続】
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【原作】
太宰治『グッド・バイ』(新潮文庫、1972年)
【小説/画像】
Geminiで生成しました。
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