思考力を深めたい方へ【読書録】具体と抽象
今週は細谷功さんの本、「具体と抽象-世界が変わって見える知性のしくみ-」をピックアップ。
同じく細谷さんの著書「『具体⇄抽象』トレーニング」は読んだことがあったのですが、より基礎的なところから「具体と抽象」について学びたく、本書を購入。
「トレーニング」を読んだときは難しい、、と思いながら読んだ印象があったのですが、「トレーニング」で「具体と抽象」の概念を学んでいたのと、様々な本を読んでいることもあってかとても入ってきやすかった。
「具体と抽象」、この世界は本当に面白い。「トレーニング」もまた改めて読んでみたいと思う。
「具体と抽象」という対立概念
一般的には、具体=わかりやすい、抽象=わかりにくいという概念で認知がされており、わかりにくい・実践的ではないといった否定的な形で用いられていることが多いかと思います。
しかし、本書ではそんな「抽象」の概念を覆し、知ることによって世の中の見え方を変えてくれます。
「抽象化を制するものは思考を制す」といっても過言ではないくらいにこの抽象という概念には威力があり、具体と抽象の行き来を意識することで、間違いなく世界が変わって見えてきます。
人間が頭を使って考える行為は、実はほとんどが何らかの形で「具体と抽象の往復」をしていることになります。つまり、「具体化」と「抽象化」が、人間しか持っていない頭脳的活動の根本にあるということなのです。
このように、「抽象化」は思考を広げてくれる重要な概念なのです。
「具体と抽象」それぞれの特徴は下記の通り。

具体は一つ一つの個別事象に対応したもので、抽象はそれらを共通の特徴で一つにまとめて一般化したもの。
具体的な表現は、解釈の自由度が低く、人による解釈の違いがほとんどありません。
対して抽象的な表現は、解釈の自由度が高いため、人によって解釈が異なることがあります。抽象の最大の特徴は、自由度が高く応用が利くことにあります。
本書では「具体と抽象」がイメージできるように具体例を用いたり、抽象化したりして「具体と抽象の往復」をしながら概念そのものを解説されています。
抽象化とは幹を見ること
抽象化とは一言で表現すれば、「枝葉を切り捨てて幹を見ること」。
「共通の特徴」が幹、「それ以外の特徴」が枝葉ということになります。
抽象化における「幹」と「枝葉」は目的によって異なります。
ただし人間のこだわりは目的によって変えるのが難しいために「枝葉にこだわっている」人が多いように見えます。
「神は細部に宿る」という言葉があるように、細部へのこだわりが重要なこともありますが、常に何が目的かを考え、適切な「幹」と「枝葉」を見極められるようにしたいですね。
「具体」か「抽象」かはお互いの関係性によって変わる
何か具体で何か抽象かというのは絶対的なものではなく、お互いの関係性で成り立つものであり、「具体と抽象」は相対的な関係性を表しています。
そして手段と目的の関係も、全て相対的なものです。
目的一つに対して手段は複数という形で階層が成立しますが、目的はつねに、さらに抽象度の高い「上位目的」が存在します。
例えば、「レビューすること」が目的と考える部下Bさんに対して「投資の意思決定をするため」とさらに上位目的で考える上司Aさんは単なる手段の一つにすぎないと捉えています。
このように「抽象度の低い」目的と(抽象度の高い)「上位目的」の関係は、普段どこを見ているかによって、変わって見えるということです。
そのため、見ている目的が違うと会話のズレや行き違いが起こってしまうことがあります。
議論が噛み合わない理由
「永遠の議論」が噛み合わない理由は、「抽象度のレベル」が合っていない状態にあります。
「具体と抽象」は、「表面的事象と本質」といった言葉にも置き換えられます。
例えば、「顧客の言うことを聞いていては良いものはできない」に対して、「顧客の声が新製品開発の全ての出発点である」という議論。
ここでいう「顧客の声」とは、「今あるものの改善」という具体的な顧客の声を指しています。
このような具体的なレベルの要望は本質的な改善には繋がりません。
ヒット商品を作るには、「顧客の心の声」を先読みした「抽象度の高い」レベルでの顧客の声を反映する必要があります。

斬新な製品や革新的な仕組みを作り上げるためには抽象度の高いレベルの議論が求められ、今あるものを改善していくためには具体性の高い議論が必要になります。
自由度をポジティブに捉えるか
「こんな感じで適当にやっといて」と言われて、「いい加減な『丸投げ』だと不快に思う人は、具体レベルのみの世界に生きる「低い自由度を好む人」です。
こういうタイプの人に、自由度の高い仕事の依頼をしたあとに、「たとえばこんな形で」と具体的なイメージの例を伝えてしまうと、それを「たとえば」にならず、文字どおり「そのまま」やってしまいます。
「たとえば」によって抽象度を下げて上位の概念を伝えようとしている意図が、まったく伝わらないからです。
逆に、自由度の高い依頼をチャンスと捉え、「好きなようにやっていいんですね?」とやる気になる人が、「具体↔︎抽象」の往復の世界に生きる「高い自由度」を好む人です。
これはとても納得。
私自身も人材の仕事をしている中で「細かい指示なく自主的に動いてくれる人に来てほしい」と要望されることが結構あったのですが、とてもしっくりきました。
そしてこのような環境では、マイナスに感じる人もいます。
「抽象度」や「自由度」という視点で、仕事を考える人なのか。
このような特性を把握した上で人員配置や採用に活かしたり、指示の仕方を変えることは大事なのだと感じました。
抽象の世界は「質」重視
具体の世界は「量」重視であるのに対して、抽象の世界は「質」を重視します。そして量が少なければ少ないほど、あるいはシンプルであればあるほどよい世界です。
端的に表現すると「複雑で分厚い本」に価値があるのが具体の世界、「シンプルに研ぎ澄まされた一枚の図」に価値があるのが抽象の世界です。
抽象の世界での「単純化」とは、短絡的思考とは全く対極にあります。
対象が複雑であればあるほどよく、それをいかにシンプルにするか。
まさに具体と抽象とのギャップの大きさを追求することです。
一方の「短絡的な思考」は、具体の世界だけで一つのサンプルを見て、「〇〇人は× ×だ」というような結論を簡単に出してしまうようなことを指します。
「二項対立」はものごとを考える方向性や視点
相対する二つの概念を比較して考える手法を「二項対立」といいます。
抽象レベルで二項対立を捉えられていると、「考える視点」が出てきます。
しかし、具体レベルでのみ見ていると二項対立も「二者択一」に見えてしまい、「考え方」として言っていることが通じないことがあります。
ネット上の主張でも「〇〇は× ×だ」と「言い切る」のは、そこで「抽象レベルの方向性」を示しているだけで、「(具体レベルの)すべてがそうだ」と言っているわけではありません。ところが具体レベルのみでとらえる人は、それに対する例外事項をあげはじめて「反論」します。これは、まったくレベルがかみ合っていない議論といえます。
この考えもとても納得で、あくまで考え方のひとつという視点を持つことは大事だなと思っています。
抽象化して話せる人は「要するに何なのか?」をまとめて話すことができる
具体レベルでのみで考えている人は、例えば500ページの本を3分で説明してほしいといった時に「時間がないので最初の3章だけ」「各章のはじめの部分だけ」を抜き出すという選択肢しかありません。
抽象化して話せる人は膨大な情報から「構造」を抽出し、何らかのメッセージを読み取り、「要するに何なのか?」を話すことができます。
具体レベルでしか考えていないと人は「要するに何なのか」「かいつまんで話せ」と言われることが苦手です。一つ一つ目にみえる事象が重要なため、「切り捨てる」ことができないのです。
一方で抽象化して考えられる人は場面場面での目的に応じて「幹」と「枝葉」を見分けることで、要点をつかんで効率的に情報処理をしています。
そして必要に応じて必要な領域についてだけ、徹底的に具体レベルにまで下りていくことができます。
まずは大雑把に全体像を理解した上でどこを詳細に考える必要があるかを判断しているのです。
私が今やっている読書録も抽象化のトレーニング。
場面によって構造化して伝える力を磨いていきたい。
本質レベルで共通点を探す
高い抽象レベルの視点を持っている人ほど、一見異なる事象が「同じ」に見え、抽象度が低い人視点の人ほどすべてが「違って」見えます。
抽象化して考えるためには、「共通点はないか」を考えることが重要。ここでいう「共通点」とは、「抽象度の高い共通点」のことを指します。
経験した世界が狭ければ狭いほど、他の世界のことがわからないにもかかわらず、自分の置かれた状況が特殊であると考える傾向があります。多種多様な経験をすればするほど「ここの部分は違うが、この部分は同じだ」というふうに共通部分にも目が向けられるようになってきます。
もちろん一方で、「何が何でもすべてのものに当てはまるはずだ」というのも暴論です。そこで重要なのは、他人や他社の成功なり失敗なりが本質的に何に起因しているのか、抽象度を上げた特性を探り当てることです。そのうえで「同じ」なのか「違う」のかを判断するのです。
具体レベルの見た目や表面的な相違をもって「違う」と言っていては、「一を聞いて十を知る」という抽象化の威力を発揮させることができません。
抽象レベルを上げ、視野を広げて考える。
表面的な類似性ではなく、関係性や構造レベルでの共通点と相違点に常に目を向けて考えることで抽象化というツールを最大限活かすことができ、豊富なアイデアを生み出すことができるでしょう。
「具体」と「抽象」両方を使いこなせる力が必要
抽象と具体のいずれか一方だけでは不完全で、「具体」と「抽象」のそれぞれの特徴と長所・短所を知った上でうまく使い分け使いこなす力が必要です。
具体と抽象は常にセットで全体を見て、それらを連携させた上で計画と実行のバランスをとっていくことが重要なのです。
抽象化は「シンプルであればあるほど良い」と記述したにも関わらず、残しておきたいことがたくさんあり、ボリューミーになってしまいました。
とはいえ、元々「具体と抽象」の考えを知らない方からすれば、私が記載した内容だけでは「?」となってしまう方も多いことでしょう。
この考えを知って、ものごとの視点が変わる良いきっかけになりました。
ぜひご自身で「具体と抽象」の世界観を体感してみてください!
これらの考えを活かして日々アウトプット頑張っています。
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