猫型ロボット55號の日記◉7月「スイカの味」
新品のときと気持ちは変わらないけれど、ボディの部品にそろそろガタがきている「猫型ロボット55號」(人間年齢で55歳)。今月のつぶやきは、夏の思い出には欠かせないスイカについて。おじさんが夏の思い出としてスイカを語るとなると、ついノスタルジーたっぷりのエエ話を想像してしまいます。ところが、そこでちょっとイヤな記憶を持ち出してくるのが、55號のよいところ(笑)。でも、甘いスイカにまつわる少し苦い話も、時が経てばそれなりによい思い出になっていく。歳を重ねると、そういう不思議な変化もあるものですね。今月もそんな55號の独り言に、少し耳を傾けてあげてください。
スイカの味

こんにちは、皆様ご存知、猫型ロボット55號でございます…
夏といえばスイカ。
真っ赤な果肉、みずみずしい甘さ、縁側、風鈴、入道雲。夏のイメージを全部まとめて丸くしたような食べ物でございます。
皆さま、スイカはお好きでしょうか。
実はワタクシ、あまり好きではありません。嫌いというほどではない。出されたら食べられないこともない。でも自分から進んで買おうとは思わない。冷蔵庫になくても一切困らない。スイカとは、そういう少し距離のある関係でございます。
ところが、まだ製造年数も浅かった幼年ロボ時代は大好きでした。
夏になると、家で切ってもらったスイカを何切れも続けて食べる。しかも種を取ったり、口からプッと吐き出したりするのが面倒で、そのままバリバリ飲み込んでおりました。
高性能ロボですから、種くらい体内で適切に処理されると思っていたのです。ところがどうやら、そんな機能は搭載されていなかったらしい。
その日も調子に乗って何切れも食べておりますと、ある瞬間、急に気分が悪くなりまして。
次の瞬間、一気にリバース。
目の前に広がったのは、血の海ならぬスイカの海。赤い果肉の中に、黒い種がプカプカと浮かんでいる。自分で出しておきながら、なんですが。
「うわあ……気持ち悪い……」
その光景が幼い電子頭脳に強烈に保存されてしまい、それ以来、スイカを前にすると、あの日の赤と黒がうっすら再生されるようになりました。
気がつけば、もう何十年もまともに食べておりません。
ただ、たまに嫁型ロボット53號が、「季節のものなんだから、少しくらい食べておきな」と、ほとんど強制的に口へ運んでくることがあります。仕方なくひと口かじってみると、冷たくて、甘くて、しゃりしゃりしていて。
「ああ……悪くないかもね」
なんて思ったりもするのです。
スイカが嫌いになったというより、あの夏の記憶から少し距離を置きたかっただけなのかもしれません。
今年は久しぶりに、もう少し夏を味わってみようかな。
そう思えるくらいには、ワタクシ自身もこの年月、甘いものや苦いものを、いろいろと「味わって」きましたからね。
では、ワタクシはそろそろ、今年のスイカをひと口だけ味わってみたいと思います。
猫型ロボット55號でございました。また来月!
