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不運続きの私を救ってくれた上司の一言

ついてないにもほどがある

転勤後、私を襲った相次ぐ不運

私は30年近く会社勤めをしましたが、新卒入社後数年経ち、営業部門に居た頃の話です。
定期異動で転勤になったのですが、やっと引継ぎの挨拶が終わった頃から
立て続けに大口の案件キャンセルが起きたのです。
一件あたりの受注金額が大きい上に短期間でキャンセルが3件も続いたので、エリア全体の業績にも影響を与える激震でした。

事態打開に奔走も力及ばず

理由はいずれも不可抗力に等しいものでしだが営業担当として責任はあり、何とかキャンセルを防ごうと奔走したものの力及ばず。
連日の顧客への交渉に疲れ果て部長からも詰問され、落ち込んで休憩室でしばらく呆然としていたある日のことです。

「人の運なんて誰しも一定量さ」

上司の一言で変わった景色

何も仕事をする気が起きずぼんやり外を眺めていると上司が入ってきました。浮かぬ顔の私を見かねたのか私にかけてくれた一言、

「ついてないねえ、でも…」
人の運なんてしょせん誰しも一定量さ」
「腐らず努力していれば必ず運が向いてくるよ」

その一言をかけられた瞬間、外の鈍色の景色に一瞬光がさしたように思えてきました。

不運に見舞われてからというもの夢遊病者のように出社していましたが、上司から言葉をかけられた翌日から私は行動を変えました。
ひとことで言うと毎日の行動量を増やしたのです。
朝が弱い私ですが他の社員より早く出社して、夕方は今までより一社でも多く訪問という具合に。
そうするうちに業績はだんだん回復して翌年には見違えるように成績が上がり、次の異動では遅ればせながら昇進を果たすことができました。
もし、あのとき上司の一言がなければ毎日の出勤は苦痛でしかなく、ひょっとしたら敗北感に打ちのめされて会社を辞めていたかもしれません。

確率的には運は一定量

出典は定かではありませんが、ある程度人口に膾炙した話として、
「運は一定量」というのは統計学的根拠が確かにあります。
「大数の法則」と言いますが、確率論や統計学における基本定理で、試行回数を増やすと確率が一定値に近づくという法則です。
サイコロを振ってたまたま同じ目が続けて出ることはありますが、振る回数を増やすほど、どの目も6分の1に近づきます。

考え方や能力、行動、受け継いだ資産等の違いは人それぞれであっても、「運」は誰しも一定であり平等なのです。

「私」の運ではなく「時」の運

それでも経験則として、ついてない人とついていない人は確かにいるような気がするよ、という方は結構いらっしゃるでしょう。私もそう感じることがあります。
確かに短い時間軸では同じ運気が続くことがあります。ひとりの人生というサイコロの試行回数はあまりに少なく「大数の法則」が働くには人生はあまりに短いからです。
本質的には「私はついてる、ついてない」のではなく「だれしもついているとき、ついていないときがある」に過ぎません。
しかし残念ながら、限られた人生という試行回数では巡り合わせで「ついてるときの巡り合わせが多い人と、ついてないときが多い人がいる」ということになるのでしょう。

天運は一定なれど人生は短し、挑戦あるのみ

運を味方につけるのは挑戦の数

それではどうするか?
天運を味方につけるには「しょせんは運」と嘆くのではなく、ひたすら挑戦による試行回数を増やすしかありません。

一度の挑戦で成功するのは困難

仕事でヒット商品の事例、成功した企業のベンチマーキングをしたことがあります。その結果わかったのは、
一度目の挑戦で成功した企業は少なく、むしろ初回の大失敗にめげずに改良を続け大成功した例が多い
という事でした。

ボートは後ろ向きで未来へ進む

要は「やってみないとわからない」「やってみた結果から学習することが大切」ということです。

「人は後ろ向きに未来へ入っていく」

ポール・ヴァレリー「歴史についての講演」(11巻 文明批評)『ヴァレリー全集 1~12巻』筑摩書房,p237

フランスの詩人ポール・ヴァレリーがそう語ったと言います。
ボートを漕ぐ人の目に見えるものは過去と現在のみ、航跡は見えるが前は見えませんが、航跡を頼りに未来への航海を修正することはできます。

おわりに

人には挑戦する自由もあれば、挑戦しない自由もあります。
それは自分が決めること。
しかし死に際して「もっとああすれば良かった」という後悔だけはしたくないものです。
挑戦してみた結果は自ら受け容れられるものですが、やらなかった後悔は死の床では一層深く悲しいものでしょう。
明治の初め、若者の青雲の志をかき立てた書物である
サミュエル・スマイルズの『自助論』(当時の和訳書名は『西国立志編』*注)の巻頭には有名な
「天は自ら助くる者を助く」という格言が述べられています。
天運は挑戦する限り全ての人に平等なのです。
私も齢も重ねるばかりで拙い身ながら挑戦を続けたいと思っています。

今回の記事をお読みいただきありがとうございました。

イーハピネス株式会社 代表取締役 松島紀三男

*注)サミュエル・スマイルズ『自助論』(株)三笠書房,1985,p11
#心に残る上司の言葉


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