【note初稿】ディープテックスタートアップ起業という“正しい無謀”に挑む
自己紹介:総合商社→外資系コンサル→スタートアップ経営、上場準備中
ディープテック系スタートアップ経営者のE. 真井(さない)です。大学卒業後、総合商社に勤務、海外のMBA取得。外資系コンサルへ転職し、その後ディープテック系スタートアップを起業。ベンチャーキャピタルなどから10億円以上の資金調達にも成功し、現在上場準備中です。日経新聞掲載やワールドビジネスサテライト出演経験もあります。
以前日経新聞か何かで見たのですが、会社が10年以上残る確率は約6.8%と言う記事を見ました。
10年以上のスタートアップというとびっくりされるかも知れませんが、ディープテック系は開発にも市場への浸透にもとても時間がかかります。
資金調達は世界的に有名な大手企業や著名な個人投資家から合わせて10億円以上の調達に成功していますが、チャンスがあれば、一筋縄ではいかないディープテック系スタートアップ企業の資金調達についても赤裸々にリアルを御伝えしたいと考えています。
このnote記事は私の初投稿です。いくつか書いてみたいなということを列挙していますが、続きを読んでみたい、という方が多くいらっしゃいましたら、コメントなどをいただけたら継続して投稿していきたいと思います。皆様、よろしくお願いいたします。
はじめに:なぜ、いま“ディープテック起業”を語るのか。【モノづくり大国日本】復活の為に
「ディープテックには夢がある。でも現実には、やるべきじゃない。」 これは、私がこの領域で10年以上にわたり起業・経営を続けてきた中でたどり着いた、偽らざる実感です。
「社会課題を解決する技術」「国からの支援」「ESG文脈で注目される」——そんな“正しすぎる物語”の裏で、私たちは何度も資金が尽きそうになり、事業拡大の途中でつまづき疲弊し、人が去っていき、出口が見えない夜を過ごしてきました。
複数の投資家(本物ならまだいいですが、ど素人のCVC担当者)や明らかに経験不足のビジコン審査員にも結構な失礼なことも言われてきました。
それでもディープテックに挑み続けたのはなぜか? このnoteでは、その過程と“やってみなければ見えなかったリアル”を綴っていきたいと思います。
また「人」については大企業など、会社の大きさにかかわらず、非常に大事なことですが、特にスタートアップの「人」については、よく「IPOまでにメンバーが3回入れ替わる」と言われています。
「スタートアップはIPOまでに3回メンバーが入れ替わる」と言われる理由について、非常に重要なことなのでその3段階(フェーズ)と入れ替わる背景を含めてわかりやすく整理してご説明したいのですが、少し長くなるので別の記事にしたいと思います。これも読みたい方はコメント等いただけたら幸いです。
第1章 ディープテックはなぜ魅力的に映るのか?
1. 技術=競争優位と勘違いされやすい構造
「独自技術があるから市場で勝てる」と思いがちだが、 実際には顧客獲得力、製造・スケール力、ビジネスモデル構築力がなければ意味を持たない。
特許出願件数=市場優位ではない。特許だけでは市場が動かない。
例:
画期的な新素材を開発したが、量産化コストが高すぎて商用化できなかったケース。
医療デバイスの革新技術が、規制審査に10年以上かかり、事業が頓挫したケース。
2. 社会貢献と事業収益の非対称性
「人の役に立つ=市場で売れる」とは限らない。
本当に社会的意義が高い領域ほど、払える顧客(Paying Customer)が不在になりがち。
ボランティア精神では起業は成立しない。
例:
低価格浄水装置が発展途上国で「社会貢献性」は評価されたが、現地では購入資金がない。結果、持続的な事業にならなかった。
地球温暖化対策向けの新技術が、政策支援なしでは価格競争力を持てず、普及できなかった。
3. VC・行政・アカデミアの支援構造が“一見いけそう感”を演出する
VC、行政、大学支援などが一斉に賞賛・サポートすると、 「世の中から期待されている=成功する」と錯覚してしまう。
しかし、VCも補助金も初期リスクマネーに過ぎず、事業継続を保証するものではない。
技術評価はあっても、ビジネス評価がないまま資金だけが流れ込み、PoC止まりになる危険。
例:
実証実験までは国や自治体の支援で回ったが、その後自走できず撤退したエネルギーテック企業。
大学発ディープテックが華々しくプレスリリースされたが、民間資金調達には失敗し、製品化に至らなかった。
4. なぜPoC(実証実験)止まりになってしまうのか
PoC(Proof of Concept)=「技術的にできることの証明」に過ぎない。
本当に重要なのはPoC後に商用導入(Commercialization)に乗せるプロセス設計だが、ここでつまずく。
理由は主に3つ:
① 単価が高すぎる/運用コストが現実的でない
② 顧客側に組織内調整コスト・リスクが高い
③ 売った後のサポート・メンテ体制が欠如している例:
スマート農業センサーが、実証までは好評だったが「現場が使いこなせない」「通信費がかかる」といった理由で導入拡大に至らなかった。
脱炭素系技術が、大企業とのPoCで成功しても、全社導入には至らず、パイロット止まりになった。
この章で読者に伝えたいメッセージ
ディープテックは、外から見ると「社会に良いことをするすばらしい挑戦」に見える。
だが、中に入ってみると「技術力だけでは何一つ動かない」現実が待っている。
本当にディープテックを成功させるには、
「技術」×「市場適応」×「事業構築」×「資金設計」すべてを同時に動かす必要がある。
第2章 なぜディープテック起業は「やるべきでない」と言われるのか?
1. 資金調達が極めて難しい
VCは「明確な短期リターン」が見込める案件を好むため、
ディープテックのような時間軸が長い・リスクが高い案件は敬遠されがち。また、「製造業は、上場してもPERが低い」とキャピタルゲインの事しか考えないようなさみしいVCも多いです。CVCも事業シナジー優先であり、シード〜アーリー期では動きづらい。
結果、補助金(行政支援金)頼みになりやすく、市場が本当にあるかの検証が遅れる。
【具体例】
環境テック企業が助成金を頼りにPoCを重ねたが、商用化直前で資金ショートし解散。
バイオ系スタートアップが大型助成金に通ったが、次ラウンドのVC資金調達に失敗して停滞。
2. 技術だけではビジネスにならない
「すごい技術だ!」という専門家評価と、
「お金を払ってでも欲しい!」という顧客評価は全く別。顧客課題に直結していなければ、技術の価値は顕在化しない。
特にディープテックは「技術起点でプロダクトを作ってしまうリスク」が大きい。
【具体例】
医療機器のイノベーション製品が、「現場医師の手間が増える」との理由で採用されず。
超高精度センサーを開発したが、顧客の許容誤差に対して“精度過剰”で、コスト対効果が悪かった。
3. 必要な人材が集まらない
CTO(開発責任者)・PM(製品設計責任者)・セールス(営業開拓)といった重要3職種がすべて欠かせないが、 創業初期は「全部できる人」を1人で担うしかないケースも多い。
ディープテック領域は特に、技術理解+事業開発経験を持つ人材が希少。
【具体例】
技術者しかいないチームでプロダクトは作れたが、営業も資金調達も進まず撤退。
経営者が開発・営業・資金調達を全部背負い、バーンアウトしてしまった事例。
4. スケールに10年かかる
プロダクト完成(技術開発成功)
→ 実証実験(PoC)
→ 量産体制構築
→ 制度適合・法規制クリア
→ 市場浸透・社会実装
というプロセスを踏まなければならず、各段階に数年単位の時間がかかる。結果、投資回収まで10年かかることも普通。
【具体例】
新型エネルギー装置が技術的には完成しても、法規制認可に5年かかり、市場投入できなかった。
次世代医療デバイスが臨床試験フェーズで予想以上にコスト・期間を要し、シリーズD以降も赤字継続。
5. Exit(出口)が遠い
市場自体が小さい、または未来に存在するか不確実な場合、IPOもM&Aも狙いづらい。
そもそも、買い手(M&A候補)や引受先(証券市場)がディープテック領域に強くない。
【具体例】
極地開発向け特殊ドローン開発スタートアップが、ニッチすぎて買い手が見つからず清算。
CO2回収スタートアップがIPO直前で成長戦略に懸念を持たれ、上場取り下げ。
この章で読者に伝えたいメッセージ
ディープテック起業は、「社会的に意義がある」「技術的に誇らしい」だけでは続かない。
資金・人材・事業構築・時間・出口という五重苦を乗り越える覚悟がなければ、「正しい挑戦」であっても、事業として成立しない可能性が高い。
第3章|それでも挑戦する意味
1. 他にない「社会実装価値」を創造できる
ディープテックは、単なるプロダクト開発ではない。
社会構造そのものを変える可能性を持つ。水・エネルギー・食料・医療・環境といった「人類共通の基盤」領域に挑める。
【例】
低コストの海水淡水化技術が、世界の水不足問題を解決する
カーボンリサイクル技術が、産業界の脱炭素化を実現する
2. 技術から産業を生み出す快感と達成感
既存市場にアプローチするのではない。
まだ存在しない市場・価値を作り出すことができる。0から1を生み出す醍醐味は、ディープテックならでは。
【例】
「CO2は排出されるだけ」という常識を覆し、CO2を資源に変える産業を作ったCarbon Recycling企業群
難治性疾患に挑むバイオスタートアップが新たな治療法を確立し、業界そのものを変革
3. 成功すれば未来のインフラとなりうる影響力
成功すれば、その技術は国家レベル、世界レベルで使われる「未来の標準」になる。
巨大な産業(社会インフラ、エネルギー、医療、通信など)への入り口に立てる。
【例】(完全な主観ですが)
Tesla:単なるEVメーカーではなく、エネルギー社会変革企業に進化
SpaceX:宇宙開発の既存産業構造を根本から変えた
4. 長期的にみれば、「真の資産」を築くことができる
短期Exit型スタートアップとは違い、 技術と産業を持続的に育てることで、長期的な価値創造ができる。特にディープテックは言語レスなプロダクトが多いので、グローバルに売って出やすく、企業価値を上場後も大きくしやすいと言える。
10年、20年かけて「自分たちが作った技術で世界が変わる」を実感できる。
5. 本当に挑戦できる人は限られているからこそ、希少価値が高い
ディープテック起業家は「少数精鋭」。
圧倒的な難易度を超える存在は、社会においても希少なレジェンドクラスの存在になれる。
【例】(完全な主観ですが)
日本で言えば:ユーグレナ(出雲充氏)など
海外で言えば:SpaceX(イーロン・マスク)
この章で読者に伝えたいメッセージ
ディープテックは、簡単な道ではない。
だが、世界を本当に変えることができる数少ない領域だ。
そしてそれに挑む者には、
他のどんなキャリアでも得られない「社会実装価値」と「未来への影響力」が待っている。
第4章|ディープテック起業家の資質
1. 燃え尽きない体力と、めげないマインド
ディープテックは、3年・5年では芽が出ない前提で挑む領域。
資金ショート、実証失敗、規制変更、チーム解散…何度も「終わりそうな瞬間」が訪れる。
そのたびに折れず、立て直して走り続ける耐久力が不可欠。
【具体例】
資金繰りが半年先も見えない中で、国プロ採択に踏み込み、突破口を作ったバイオベンチャーCEO。
3回実証に失敗しながらも、4回目で初めて市場導入に成功したエネルギーテック起業家。
2. 技術とビジネスを行き来できる柔軟な思考
技術者脳(精度追求)とビジネス脳(市場性・顧客志向)を、行き来できる柔軟性が必須。
技術のすごさを語るだけでなく、「誰にどんな価値を生むか」を翻訳して伝えられる人材。
【具体例】
難解な物性理論を、素人にもわかる「電気代が半分になる」ストーリーに落とし込んだスタートアップCEO。
論文ベースだったバイオ技術を、「患者の入院日数を30%減らす」というビジネス価値に転換したチーム。
3. 自分でやらずに「共創」できるセンス
ディープテック起業家は、自分ひとりで全てを完遂できない。
企業・行政・大学・顧客を巻き込んで「一緒に作る力」が必要。
「任せる勇気」「共有する胆力」がなければスケールしない。
【具体例】
大企業と連携し、製品開発から量産・営業チャネル構築まで共創で進めたスタートアップ。
地方自治体と連携し、現地実証から制度設計提言まで一気通貫で社会実装した事例。
4. 長期視点を持ちつつ、短期実行を繰り返せるバランス感覚
ビジョン(10年後の社会実装)を持ちながら、 「今週、何を達成するか」を着実に積み重ねる力。
夢想家だけでも、現場主義だけでも失敗する。
常に「長期の旗」と「短期のToDo」を行き来できる人が強い。
【具体例】
「2030年に世界水準の脱炭素技術を確立する」と公言しながらも、毎週の営業訪問数と新規商談KPIを愚直に管理するCEO。
5年後の上市を目指しつつ、3ヶ月ごとに成果検証と軌道修正を徹底して進めたディープテック創業チーム。
この章で読者に伝えたいメッセージ
ディープテック起業家は、単なる「研究者」でも、「起業家」でも足りない。
必要なのは、マラソンランナーの体力、翻訳家の思考、プロデューサーの巻き込み力、職人の短期集中力。
そんな「異能のバランス」を持った者だけが、この長い挑戦を完走できる。
第5章|ディープテック投資家が見ている3つの軸
1. Protectability(技術の防衛力)
いくら画期的な技術でも、簡単にコピーされたら意味がない。
知財(特許)やノウハウ蓄積、規制参入障壁など「守り」がどれだけ強いかが超重要。
特許の有無だけでなく、どこまで事業上のボトルネックを押さえられているかを見られる。
【具体チェックポイント】
核心技術は特許で守られているか?(出願中含む)
製造プロセスやデータなど、ブラックボックス化できる部分はあるか?
規制・標準化の主導権を握る余地があるか?
【具体例】
製造プロセス自体を社内独自に最適化し、外注できない領域を確保しているクリーンテック企業。
業界標準化委員会に入り、自社技術を新規格のベースに据えたバイオベンチャー。
2. Path to Market(市場導入のシナリオ)
技術がすごいだけでは資金調達できない。
実証→初期導入→スケール拡大までのロードマップが具体的かどうかを厳しく見られる。
PoCだけでなく、その後の商用契約、量産体制、販路設計まで想定できているか。
【具体チェックポイント】
最初の顧客候補(アーリーアダプター)を明示できているか?
実証終了後、すぐに商用契約につながるプランがあるか?
製造・運用スケール時のコスト試算が現実的か?
【具体例】
自治体とのPoCを、翌年から本契約に持ち込むロードマップを提示できた水処理スタートアップ。
最初の販売チャネルを特定企業グループに絞り、1年間で導入拡大フェーズに持ち込んだ素材系ベンチャー。
3. Team Resilience(チームの耐久力)
技術・市場仮説はほぼ必ずズレるため、 そのズレを 「やり直しながら立て直せるチーム」 かどうかが超重要。
スタートアップの最大リスクは「技術」ではなく「チーム崩壊」。
【具体チェックポイント】
CEO+CTO+BizDevのコアチームがバランスよく組めているか?
リーダー層が信頼関係を築けているか?(揉めたときのプロトコルがあるか?)
危機時の過去対応例(資金ショート・実証失敗・主要メンバー退職)などを持っているか?
【具体例】
シリーズA直後に売上不振が発覚しても、短期で営業モデルをピボットしV字回復したエネルギー系スタートアップ。
技術責任者が抜けた危機を乗り越え、逆にチームの結束を強めたロボティクスベンチャー。
この章で読者に伝えたいメッセージ
ディープテック領域では、「夢がある」「技術がすごい」だけでは資金は集まらない。
本当に選ばれるスタートアップは、
守る力(Protectability)
売る道筋(Path to Market)
耐え抜く力(Team Resilience)
の3つを確実に押さえている。
第6章|ディープテックの始め方
1. 顧客仮説を先に立て、「誰が金を出すのか」を最初に考える
技術開発から入るのではなく、まず「お金を払うリアルな顧客像」を明確にする。
「困っている人がいる」だけでは足りない。「その課題解決に対して払える/払いたい人」を設定する。
特にディープテックは、高額プロダクトになりがちなので、 政府・自治体・大企業・制度補助金など「誰が財布を握っているか」設計が必須。
【具体チェックポイント】
顧客の“ペイン”だけでなく、“支払い能力と意思”を把握できているか?
顧客インタビュー段階から「導入時の意思決定プロセス」まで聞いているか?
【具体例】
水処理スタートアップが、民間企業ではなく地方自治体のインフラ更新予算をターゲットに切り替えて受注加速。
工場CO2削減技術を、大企業CSR部門ではなく「生産部門の省エネKPI達成ニーズ」にヒットさせた成功事例。
2. 実証のための実証に陥らず、“導入前提のPoC”設計を意識する
多くのディープテックは、PoC(Proof of Concept=技術実証)にとどまり、商用化に至らない。
最初から「このPoCは、成功すればそのまま導入契約につながる」ことをゴールに設計すべき。
そのためには、顧客の導入条件(コスト・性能・サポート要件など)をPoC開始前に握っておくことが超重要。
【具体チェックポイント】
PoCの「評価指標(KPI)」と「合格基準」を事前に顧客と握っているか?
「PoC後の契約検討条件」が文書(覚書やLoI)で残せているか?
【具体例】
エネルギー系スタートアップが、PoC開始時に「成果基準に達すれば3年契約締結」の条件付きで始めた成功パターン。
バイオ素材スタートアップが、PoC後の価格条件・ロイヤリティ条件まで仮合意し、量産化投資を引き出した事例。
3. 最初から複数CVCを視野に入れた資本戦略を設計する
ディープテックは、資金需要が長期にわたり、高額になりやすい。
単一VC依存ではリスクが高いため、最初から「複数のCVC・事業会社出資」を戦略的に組み込むべき。
単なるお金だけでなく、販路開拓・実証場所提供・量産体制支援など事業支援リソースも意識してアライアンスを組む。
【具体チェックポイント】
出資先候補のCVCが「事業リソースも提供できるか」を見極めているか?
「金融CVC(リターン重視)」と「事業CVC(シナジー重視)」をバランス良く組み合わせているか?
【具体例】
水処理テックが、エンジニアリング会社系CVC+物流会社系CVC+インフラ企業系CVCの3社から同時出資を受け、スケール加速。
次世代素材スタートアップが、総合商社CVCと化学メーカーCVCからダブル出資を受け、市場開拓・量産投資を同時並行で実施。
この章で読者に伝えたいメッセージ
ディープテック起業は、「技術を磨いていれば誰かが評価してくれる」ものではない。
最初から、
誰が金を出すか
どう導入を取りにいくか
どう資本を組むか
を冷静に設計できるかどうかで、未来が決まる。
第7章|社会実装を実現する共創戦略
1. 大企業とのPoCは「PoCの先」を明示しないと次に進まない
大企業は、PoC(実証)を「リスク回避のための検証」として扱うため、 成功しても、次フェーズ(導入・契約)への動きが鈍いことが多い。
だからこそ、PoC開始時点から「その先(導入・事業化)」のシナリオをセットにして提案することが必須。
【具体チェックポイント】
PoC完了後の「導入基準」「拡大条件」を事前に握れているか?
部署単位のPoCではなく、経営層・事業責任者レイヤーまで巻き込めているか?
【具体例】
環境エネルギー系スタートアップが、PoC開始時に「成功時は全国拠点展開」のロードマップを提示し、全社導入につなげた。
バイオ系スタートアップが、PoC成果を「新規事業計画」のKPIにリンクさせ、社内稟議を通しやすくした。
2. 自治体連携は政策サイクルと連動させることが鍵
自治体は単年度予算・中期計画(3年・5年)という政策サイクルで動いている。
このサイクルに合わせてアプローチしないと、「タイミングが合わず不採択」「予算ゼロ」となりやすい。
重要なのは、次年度・次中期計画をにらんで、最低1〜2年先を見越して仕掛けること。
【具体チェックポイント】
自治体の次期中期計画(例:○○市脱炭素計画2025〜2030)を把握しているか?
自治体議会や予算審議のスケジュールを押さえて動いているか?
【具体例】
水道インフラスタートアップが、地方創生関連の中期計画に合わせて提案し、2年越しで大型採用されたケース。
環境対策スタートアップが、自治体の「ゼロカーボン宣言」翌年に事業予算化され、実証採択された事例。
3. 技術ロードマップとCVC・事業部の戦略を同期させる
スタートアップ側の技術開発スケジュールと、 CVC・事業部側の中期経営計画(3年/5年単位)を意識的に同期させることが重要。
この「事業部の投資ストーリー」に乗せることができれば、中長期的に“待ってもらえる状態”を作れる。
【具体チェックポイント】
出資CVC・協業事業部の「中期重点領域」「2030ビジョン」をリサーチできているか?
「技術成熟予測(例:TRLレベル)」と「事業部の投資タイミング」を同期できているか?
【具体例】
素材スタートアップが、大手化学メーカーの「2027年新規素材開発目標」に合わせてPoC開始・共同開発入りした事例。
次世代エネルギースタートアップが、総合インフラ企業の「カーボンニュートラル2030ロードマップ」に技術ロードマップを合わせ、長期伴走型投資を得た事例。
この章で読者に伝えたいメッセージ
ディープテックスタートアップは、単独で社会実装を達成するのは難しい。
成功するためには、大企業・自治体・CVCの“組織サイクル”を理解し、事前に「巻き込む設計」をしておくことが不可欠。
「技術ができたから売りに行く」のではなく、技術ができる前から仲間を増やしておく戦略こそが、未来を切り拓く。
終章|報われるまでやりきる挑戦
1. ディープテックは「やれば報われる挑戦」ではない
どれだけ技術的に優れていても、
どれだけ社会的に意義があっても、
簡単に評価されない。売れない。理解されない。成功するかどうかは、本人の努力や信念だけでは決まらない。
規制、産業構造、タイミング、資金調達環境——数多の外部要因に左右される。
2. だが、それでも挑戦する価値はある
ディープテックが成功すると、その影響力は個人・企業レベルではない。 社会構造、生活インフラ、国策レベルにまで影響を及ぼす。
小手先のプロダクト改良や、バズワードに乗った流行ビジネスでは絶対に到達できない世界。
【具体例】(完全な主観ですが)
ユーグレナ(ミドリムシ事業)
最初は「ミドリムシ?食べ物になるの?」と嘲笑されたが、今ではバイオ燃料開発、食品・医療・環境分野にまで展開し、日本を代表するディープテック企業へ成長。SpaceX(イーロン・マスク)
当初は「民間で宇宙開発など不可能」と言われたが、今やNASAの有人飛行まで担う宇宙産業の主役に。
3. 成功のカギは「報われるまでやりきれるか」
資金が尽きかけても、
チームが分裂しかけても、
技術が思うように進まなくても、
世の中に理解されなくても——
それでも諦めず、改良し、耐え、時を待つ。
成功するディープテックスタートアップは、例外なくこの「しぶとさ」「粘り強さ」を持っている。
最後に伝えたいメッセージ
ディープテックは、華々しい成功談の裏に、数え切れない屍(失敗)が横たわる世界です。
「簡単じゃない」という現実から目を逸らしてはいけない。
それでも、
あなたが「この技術は社会を変える」と本気で信じているなら、
その挑戦は、必ず未来につながる。
報われるまでやりきる覚悟を持つ者だけが、
世界を一歩前に進めるのだと、私は信じています。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします!
チップを頂けたら励みになり、より投稿を頑張れます!!この記事は noteマネー にピックアップされました

