「刺すキック、抜けるスネア」 佐藤奏は、“曲の呼吸”でドラムを叩いていた エリックマーティン ライブレポ!
経歴と知名度。でも・・・
Eric Martin のライブに行く前、正直に言うと、ドラムに関してそこまで情報を入れていなかった。
もちろん、佐藤奏 の名前は知っていた。
11歳で世界コンテスト優勝。
フュージョン界隈では有名な若手天才ドラマー。
YouTubeでも話題。
経歴だけ見れば、“すごい人”なのは分かる。
でも、ライブって結局それだけじゃない。
「上手い」と「ライブを動かす」は、別の話だ。
そして実際に観た佐藤奏は、“天才少女ドラマー”というイメージとは少し違っていた。
派手に暴れるわけでもない。
必要以上に前へ出るわけでもない。
なのに、ライブ全体の呼吸を握っていた。
スネアが“ダン”じゃなく“ターン”
最初に驚いたのはスネアだった。
普通、HR/HM系のドラマーって、
スネアを“ダン!”と前に叩きつける人が多い。
潰して、押し出して、壁みたいに前へ飛ばす。
でも佐藤奏は違った。
音が“空に抜ける”。
感覚的には、“ダン”じゃなく“ターン”。
たぶんリムショットの当て方や、
ヘッドの鳴らし方がかなり繊細なんだと思う。
音圧はあるのに、壁にならない。
むしろ、空気を押し広げていく。
だから音数が多くても窮屈にならない。
バンド全体が呼吸できるスペースを、
ドラムが作っていた。
バスドラムが「突き」
そして、もうひとつ印象的だったのがバスドラム。
メタルのキックって、
“踏む”とか“殴る”感覚で語られることが多い。
低音で押し潰す感じ。
でも佐藤奏のキックは違った。
「点」で刺してくる。
重低音で埋めるんじゃなく、
アタックが前へ飛ぶ。
剣道で言えば、“面”ではなく”突き”。
一点をスッと貫くような感覚。
これが気持ちいい。
だから演奏全体が重くなりすぎず、
それでいて推進力が消えない。
前へ、前へ進んでいく。
手数が多いのに派手じゃない
若いドラマーって、どうしても“見せる”方向へ行きやすい。
速いフィル。
派手なアクション。
「どうだ!」という超絶技巧。
でも佐藤奏は、そこが少し違った。
彼女のフィルは、
“自己主張”ではなく“曲の呼吸”になっていた。
簡単ではないフレーズを叩いているのに、
聴いていて引っかからない。
むしろ自然に流れていく。
「あ、ここで空気を変えた」
「あ、ここでギターを押した」
そんな感覚で入ってくる。
結果として、
「この人がライブを引率している」
そんな感覚になる。
「Addicted To That Rush」の推進力は彼女だった
特に圧巻だったのが、Addicted to That Rush のインストゥルメンタル。
ギターとベースのバトルは言うまでもなく凄まじい。
でも、その熱量を成立させていたのは、間違いなく佐藤奏のドラムだった。
決して簡単ではないフィルを、呼吸するように入れてくる。
そして、そのフィルが合図になる。
「行くぞ」
そんな空気が生まれた瞬間に、ギターとベースが走り出す。
しかも、あの Pat Torpey のドラミングを、
ただ再現するだけでは終わっていない。
敬意を残しながら、自分の呼吸で鳴らしていた。
これは本当に凄かった。
エリック・マーティンの“ロックの呼吸”
今回のライブは、ただテクニカルなだけでは成立しなかったと思う。
エリック・マーティンの歌って、
“人間臭さ”と“ロックの揺れ”が核にある。
そこに、クリックに完璧すぎる現代的ドラマーが入ると、
逆に噛み合わない可能性もある。
でも佐藤奏は違った。
演奏精度は高い。
でも、“ロックの呼吸”をちゃんと残している。
少し前へ転がる感じ。
生身の熱。
ライブならではの揺れ。
だから、エリックの歌がちゃんと生きていた。
癖のある3人をまとめ上げた天才ドラマー
今回改めて感じたのは、
Vo、Gt、Bの3人があれだけ自由に暴れられたのは、
佐藤奏の安定感があったからだということ。
歌は揺れる。
ギターは暴れる。
ベースは動き回る。
でも、バンドは崩れない。
それどころか、どんどん前へ進んでいく。
派手に支配するわけじゃない。
でも確実に、ライブ全体の呼吸を握っている。
佐藤奏は、そんなドラマーだった。
そして何より面白かったのは、彼女がまだ若いということ。
これから先、どこまで“ロックの呼吸”を深く掴んでいくのか。
このドラマー、まだまだ化けそうで楽しみです😊
