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『夢の続きは、ここにあった』エリック・マーティンと嬢メタルが鳴らした“Mr.Bigの未来”

2025年、ついに完全終演を迎えた Mr. Big 。

あのバンドは、もう戻ってこない。
そう理解していたはずなのに、今回の Eric Martin 来日公演には、どこか期待している自分がいた。

ただ、会場へ向かう道中で感じていたのは、“高揚感”よりも“寂しさ”だった。

でも、ライブが終わる頃には、その感情は完全に変わっていた。

これは懐古ライブじゃない。
追悼ライブでもない。

“Mr.Bigの夢の続きを、日本の若いメタルミュージシャンたちが鳴らした夜”だった。

佐藤奏 Li-sa-X エリックマーティン わかざえもん

寂しさを感じながら向かった会場

正直、チケット発売の頃から少し感じていた。

「……人気、落ち着いてるな」

SNSでは宣伝投稿がかなり多く、当日券販売の案内も流れてくる。
スタンディングエリアにも、かつてのような争奪戦の熱はない。

2025年で Mr. Big は完全終演。
それはつまり、“リアルタイムの物語”が一区切りしたということでもある。

会場へ向かう電車でも、それを感じた。
客層はかなり高め。

今のライブシーンは、サブスクとSNS時代。
若年層が集まるライブとは、空気感がまるで違う。

ただ、そんな中で目に入ったのが、KOIAIのTシャツだった。

しかも着ているのは若者だけじゃない。
むしろ年齢層は高め。

“次の世代”を追いかけている人たちが、ちゃんといる。

そして、この日のライブは完全撮影NG。

スマホを掲げる光もない。
開演前から、どこか昔のライブハウスみたいな空気が流れていた。


テクニックではなく“グルーブ”で支配した前半戦

オープニングは「Trapped In Toyland」。

1曲目から、演者も客も完全に出来上がっていた。
続く「Take Cover」で、会場の温度はさらに上がる。

そりゃノる。
『HEY MAN』を象徴する、あの重量級グルーブだ。

さらに「Jane Doe」「Where Do I Fit In?」へ。

この辺りの選曲が面白い。
普通ならもっと早い段階で、
“Mr.Bigの代表曲ラッシュ”に行ってもおかしくない。

でもこれは、Eric Martin のバンドだった。

リズム&ブルース色を前面に押し出し、グルーブで客を揺らしていく。
なのに客はめちゃくちゃ乗っている。

そして改めて感じる。

Mr. Big のグルーブ感って、やっぱり Billy Sheehan が異常だったんだな、と。

ストラップを肩から外して暴れ回るパフォーマンス。
走りまくるベースライン。

チョッパーしても音が細くならない。
むしろ“飛んでくる”。

でも、その姿を思い出しながら思った。

「あれ……誰かと似てない?」

今回のバック陣――嬢メタル勢から、確かにあの魂が見えていた。

わかざえもん(Ba.)

“人間エリック・マーティン”が見えた夜

この日のライブで印象的だったのは、“スマホ越しじゃない”ことだった。

完全撮影NG。

だから客は、演者を見るしかない。
音を浴びるしかない。

ライトの光。
アンプの圧。
生身の人間の熱。

それだけが空間を支配していた。

今の時代、むしろ珍しい。

そして、Eric Martin は本当に丁寧にメンバー紹介をしていた。

嬢メタルの3人だけじゃない。
コーラス陣も前に呼び込み、笑顔で掛け合う。

英語なので細かい内容までは分からなかった。
でも、その中で確かに聞こえた名前があった。

Pat Torpey 。

その瞬間、胸が熱くなった。

暴れ回る3人を支え続けたドラミング。
派手さより、“土台”として機能するプレイ。

……これも誰かに似ている。

Pat Torpey はパーキンソン病を患っても、メンバーではあり続けた。

完璧じゃなくてもいい。
できる形でステージに立ち続けた。

コーラスで。
パーカッションで。
存在感で。

あのバンドは、“音楽の上手さ”だけで繋がっていたわけじゃない。

それを、エリックは今も大切にしているんだと思った。

佐藤奏(Dr.)

これは懐古じゃない。“夢の続き”だった

ライブ後半は、一気に Mr. Big モードへ。

Addicted To That Rush
Daddy, Brother, Lover, Little Boy
Green-Tinted Sixties Mind
Just Take My Heart
To Be With You

もう、名曲の暴力。

そして改めて思い知らされる。

若き日の Paul Gilbert は、やっぱり異常だった。

美しいだけじゃない。
テクニックが完全に“攻撃”として機能している。

Racer X 時代から続く超絶技巧。
でも、その根底にはロックンロールの熱がある。

そしてまた思う。

「……これ、誰かと似てない?」

今回のギタリストから、確かにその残像が見えていた。

本編ラストは「Colorado Bulldog」。

会場は完全燃焼だった。

でも面白かったのがアンコール待ち。

なんと、客の3分の2くらいが座った。

最初は「いや、座るなよ!」って思った。
でも、すぐ気付く。

ファンも歳を重ねてきたんだ🤣

それでも誰も帰らない。
みんな手を叩き続ける。

その光景が、なんだか妙に愛おしかった。

ラストは「I Love You Japan」。

あの曲を最後に持ってきたこと。
それ自体が、Eric Martin のメッセージだった気がする。

Li-sa-X(Gt.)

3人の嬢メタルに宿った、Mr.Bigの亡霊

この日のエリックは、とにかく歌っていた。

ブルージーな低音。
高音で少し震える声。
シャウトで潰れかける声。

でも、その全部が良かった。

むしろ今の声だからこそ、Mr. Big の曲に“人生”が乗っていた。

そして何より印象的だったのが、
嬢メタル勢への接し方だった。

遠慮しない。
気を遣いすぎない。
“若手扱い”もしない。

完全に同じステージのミュージシャンとして扱っていた。

その結果、この夜は不思議な感覚になっていた。

ベースには Billy Sheehan が見える。
ドラムには Pat Torpey が見える。
ギターには Paul Gilbert が見える。

もちろん本人じゃない。

でも確かに、“魂”はそこにいた。

エリックが3人に乗り移らせたのか。
それとも3人が、自分から迎えに行ったのか。

それは分からない。

ただひとつ確かなのは、
あの夜、僕は“Mr.Bigの夢の続きを見た”ということだ。


あの夜、未来は確かに鳴っていた

今回のライブを通して、強く感じたことがある。

それは、“世代の橋渡し”が始まっているということ。

今回の嬢メタル勢3人は、単なるサポートではなかった。
完全に“仮想Mr.Big”の大役を果たしていた。

彼女たちのルーツには、確実に
Iron Maiden
Judas Priest
Helloween
そして Mr. Big がいる。

もちろん、「嬢メタル」という言葉を嫌う人もいる。

でも、日本から世界へ出ていくメタルバンドは、実際に増えている。

LOVEBITES
BAND-MAID

彼女たちは、海外市場で確実に戦っている。

しかも今、世界全体を見ても、
Metallica や
Guns N' Roses のような“怪物級バンド”は、なかなか現れていない。
Bon Jovi のように、時代そのものを作る商業的スターも不在だ。

今の日本のメタルシーンにはその可能性がある。

これは「男性か女性か」の話じゃない。

“世界に通用する日本の音楽ジャンル”として、今まさに育っている文化の話だ。

あの夜、ステージには確かに未来があった。

そしてもしかすると――
ここから、本当に次の“モンスター”が生まれるのかもしれない。

その新しい未来が、確かに鳴っていた夜だった。

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