イノベーションと副業
政府や民間による支援強化、社会課題の多様化、若者の起業意欲の高まりなどからスタートアップが着実に増加しています。経産省の下記資料では、スタートアップとは、新しい起業であって、新しい技術やビジネスモデル(イノベーションを有し)、急成長を目指す企業とあるようにイノベーションの担い手としての期待が社会から大きいです。
https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/kaisetsushiryou_2025.pdf
一方で現早稲田大学の清水洋教授の著「野生化するイノベーション」に日本企業が得意とする累積的イノベーションについて興味深い記載がありました。
累積的イノベーションとは?
本の中身に入る前に累積的イノベーションとは、既存の技術や知識を基盤として、新しい技術やアイデアが段階的に発展するといった、過去の成果に積み重なる形で進化するイノベーションです。例えば、スマホの登場自体を破壊的イノベーションとすると、その後に追加されていった高性能カメラ、指紋認証、音声アシスタント(Siriなど)の進化プロセスが累積的イノベーションにあたるかなと思います。
流動性が累積的イノベーションを低下させる
この本では、労働市場で人の流動性が高まると累積的イノベーションの水準が低下すると言っています。
その理由は、研究開発に多額の投資をする大企業からそれに関わっていた人材がスピンアウトなどによりサブマーケット(核の技術の周辺市場)へと移動する⇒移動した彼らは深い技術よりも短期的な成果を優先する(本の中では「手近な果実をつかむ」と呼んでいます)⇒人材流出で長期的な研究や技術の蓄積と継続的改良によって成り立つはずだった技術進化が低次元で着地する(機会損失みたいな感じですかね)=累積的イノベーションの水準が低下するというものです。
「手近な果実」ばかりをもいでいると、太い幹を持つイノベーションが育たなくなり、社会全体で見ると先細りしてしまう恐れがあるとのことです。
さらにこの本では、経済全体に与えるインパクトが大きい技術(ジェネラル・パーパス・テクノロジー)として電気、内燃機関、屋内配管の発明が社会全体の生産性向上に極めて重要な役割を担っていたとしており、これら汎用性の高い技術の発明が人材の流動性の高いアメリカでは1970年以降生み出されていないとしたノースウェスタン大学のロバート・ゴードンの指摘を引用しています。
副業解禁が鍵?
個人的には累積的イノベーションの鈍化に有効だと思う対策の一つが、副業です。副業の効能として、副業を通してやりたいこと、得意なことに取組み満足感を得られる、大企業で試せないことを副業先で試し、そこで得た知見と本業で得た知見との掛け算で新たな知を生むことができる、キャリアにポートフォリオを持つ事が可能など、副業は優秀な社員の離職防止にもつながります。大企業に残る期間が長くなり累積的イノベーションの鈍化を防ぎ、社会全体の発展につながる、といった流れです。
遠回りしましたが、まとめると、大企業は副業を解禁しましょう!というお話でした。
