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あの夏

父の仕事の都合で、私はたくさん転校をした。

特に小学校1年生のときは、3つの小学校に通った。

入学した小学校。
その次に、たった2ヶ月だけ通った小学校。
そして、家が完成してから移った3つ目の小学校。

2つ目の小学校には、会社の家が建つまでの間、独身寮の大広間から通っていた。
たった2ヶ月とわかっていたから、子ども心に「ここに馴染まない方がいい」と思っていた。

でも、毎日の帰り道には、私の左右に並んで歩く男の子と女の子がいた。
なぜか、いつも2人は口げんかばかりしていた。

「だったら送ってくれなくてもいいのに……」と少しだけ思っていたけれど、
それでも2人は、いつも私を挟んで歩いてくれた。

ある日、それぞれに聞いてみた。
「お互いのこと、嫌いなの?」と。

すると、2人とも同じ答えを返してきた。
「ほんとは、仲良くしたいんだ。」

別れの日が近づいたある日、私は2人に伝えた。

「今まで仲良くしてくれてありがとう。
毎日一緒に帰ってくれてありがとう。
私はね、みんなと仲良くしたくてもいなくなるの。
だから、2人には仲良くしててほしいんだ。」

そう言って、2人の手をとって、手をつないでもらった。

照れながらもうれしそうな2人の顔。
私は今でも、あの夏の光景を覚えている。

私がいなくなったあとも、2人は仲良くしていてくれただろうか。

大人になった私はときどき思う。
――私は、少し変わった子どもだったのかもしれない。

この時の話に続きはないけれど・・・

その翌年、小学2年生の時の出来事は
さらに43年経って
再会に繋がるのでした……。

#ノーターズ夏の朗読会  
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